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◇◆ Go! Go! Goegoe! ◇◆
 ゴ、ゴ、ゴエモン 大爆笑〜♪
 クリックしたら顔なじみぃ〜
 笑ってちょ〜だい今日もまた
 誰に〜も遠慮はいりませ……ヌ〜ン!(ミラクル風)

「なんだかノリノリですね、石川くん」
 弾けるビートで、華麗なステップを踏む俺を止めるワトソンの声。
 ジーちゃん、バーちゃん、お孫さんまで行けなかったことに腹が立ち
「にゃんだにょバドォズォン、うぃいととろどぇ、どみゃりゃなりょ!」
 文句を言ったが効果なし。
「石川くん、口! くち、くち! しかも、ツバ!」
 逆に俺の口を指差し怒鳴りながら、ポケットからハンカチを取り出すワトソン。
 あ、千歳飴を食ってたんだ俺……(たまに食べるとうまいよね!)

「どんまい!」
 千歳飴を口から取り出して、親指をビシっと突き立て笑いかけた。
 けれど、皺だらけに歪めた顔をハンカチで擦りながら、ワトソンがまた怒る。
「それは、僕のセリフでしょ!」
 ……えっと、そう?
 でも、俺よりも頭の良いワトソンが、そう言うんだからそうしよう。(ビバ適当)

 こんな俺は、ハッピーハロウィン生まれのさそり座の男。
 お菓子をくれないと、噂話を流すわよ? がモットーであり、ポリシーだ。
 これくらいの小さい話を、こ〜んなに大きくして騒ぎ立てるのが俺の仕事。(もはや生き甲斐)
 そしてこいつは、海の日生まれの若大将。
 誕生日が夏休みだけに、誰からも誕生日だということを、忘れ去られる可哀想な男でもある。
 だから俺だけでも、こいつに優しくしてやろうと心に決めている。(はず)

「で、なんかよう?」
 やっぱり千歳飴を、マエストロのごとく振りかざせば
「別に用事はありませんよ?」
 未だハンカチで、眼鏡を拭き続けるワトソンが興味なさげに答えた。
「さてはお前、虎視眈々と俺の座を狙ってるな?」
「座りたくもないですね」
 そ、即答かよ……

 まぁ、俺クラスの座を狙おうとしても、それは土台無理な話だ。
 だからそこのところを、ハッキリさせておこうとワトソンに言った。
「次元はどう考えてもIKARIYAだろ?」
「は?」
「お前は、KOJI!」
「えぇ?」
 目を泳がせながら、思考回路をフル回転させるワトソンが、ようやく何かを悟ったように切り出した。
「あ、ドリフですか? でも、僕はコージって感じじゃないでしょ?」
 お前は、どう見てもKOJIだろ? てか、気付くの遅過ぎ。
 でも、俺よりも頭の良いワトソンが、そう言うんだからそうしよう。(ビバ面倒)

 けれど、何やら納得のいっていないワトソンが
「そういう石川くんは、自分を誰だと思うんですか?」
 ハンカチをポケットにしまいながら、そう俺に問うから
「俺? 俺クラスになると、やっぱCHAは外せねーな。で、ルパンはKEN!」
 ジャパニーズピープルならば、誰もが頷くであろう見解を示せば、半口を開けていたワトソンがつぶやいた。
「な、なんかドリフがカッコイイ……」
 当たり前だ。ドリフをなめんなよ! って言おうとした矢先――
 誰にも真似のできない俺の優れた嗅覚が、特定の物質の匂いを嗅ぎ当てた。

「断言する。調理実習が、今まさに終わる!」

 朝の1時間目から、調理実習に赴いた我がクラスの女子軍団。
 こういうときにこそ、家庭科室の前で可愛らしく待っているのが男ってもんだ。
 誘わなくても、ルパンなら確実に来る。
 あの手この手を駆使して、文子からブツを頂戴するだろう。
 だが俺は違う。なぜなら俺は美食家だからだ。
 好きな女のブツが欲しいんじゃない。一番上手くできたブツが欲しいんだ。
 つまりそれは、終了間際の家庭科室を覗かなければ始まらない。
 そう、査定調査をするために……
「ということでワトソン、俺には使命がある。今度は止めるなよ?」
 握り締め続けていた千歳飴をワトソンに託し、振り向くことなく教室を後にした。
 そんな俺の背中を見送りながら、つぶやく男――

「確実に、彼はブーだ……」

「何? なんの話?」
「いや、ドリフのキャラを、皆さんに当てはめてみ」
「お前は、コージ!」
「ル、ルパンくん、人の話は最後まで聴きま」
「やっぱ、お前はワクさん!」
「ま、まぁ、それなら僕も納得でき」
「で、俺はアオシマね!」
「ルパンくん、それはもうドリフじゃないで」
「なに? スミレさんがいいの?」
「いや、だから……」

 家庭科室へ向けて、ホップステップジャンプを繰り広げている俺には、 そんな会話が、なされていたなど知る由もない――

「やっぱ、久恵のブツが最高だな……」
 家庭科室の小窓に顔を押し付け、中の様子を窺い続けながらつぶやいた。
 ところがそこに突如文子が現れた。(チミッコは死角)
「ゴエモン見て! 久恵と同じ班だったから、今日は上手にできた!」
 自分の腹に入ることは、決してないであろうそれを振り回し、得意げに言っている。
「文子ちゃんは、おりこうさんだなぁ。ちゃんとお手伝いができたんだね」
 親戚の叔父さん風に優しく答えてやっているのに、なぜか怒りだす文子は
「お前、いつか覚えてろ?」
 俺の小指よりも短い中指を立て、鼻筋に皺を入れて吐き捨てた。
 指切りげんまんしたいのかしら?
 けれどそこに、やっぱりルパンが現れて
「それ、めっちゃくちゃマズそうね……」
 青汁を飲み干した後のような顔をしながら、文子のブツを指差し言い放つ。
「なんだと? だったら食ってみろ!」
 考えなく、怒りだけで切り返した文子の言葉を聞いた途端、ルパンの瞳が妖しく光る。

 ほうらやっぱり、奪われた。(予言通りね)

 ところがそんな騒ぎに興じているうちに、肝心な久恵(のブツ)を見失う。
 慌ててまた小窓に顔を押し付ければ、後ろから響く久恵の声。
「やだゴエモン、鼻紋をつけないでよ!」
 鼻紋ってあなた、俺は牛ですか?
 ちょっと怖い顔で俺を睨みつけた後、なぜだか急に噴出す久恵は
「そんな顔しなくても、ちゃんと作ってあるよ。はい、これ」
 そうやって、焼きたてホヤホヤのマドレーヌを差し出した。
「おお! お〜っ! おっお〜!」
 マドレーヌを天高く持ち上げて、クルクルと回転する俺に
「黙れ」
 冷酷非道そのものの顔で、容赦なくそう吐き捨てる女……

 俺の査定が確かならば、最低ランクに位置する物体を作り上げた女。
 呪いが込められていない分、こいつの方がまだ魔女よりマシなんだろうけれど、 それでもやっぱりアレは食いたくない。
 触らぬ悪魔になんとやらだ。
 両手を挙げて身を細め、由香を見下ろしながらやり過ごす。
 けれど、何か一言声をかけてみようと思い立ち、息を吸い込めば
「一言でも声を発してみろ、お前の明日はないと思え」
 俺の方を決して見ることなく、口を閉じたまま由香が言った。
 こ、この声は、どこから聞こえてくるの?(スーパーナチュラル)

 呆然と佇む俺の耳を、久恵がジャンプしながら引っ張り
「あげるって言われても、由香のは食べちゃ駄目よ?」
 含み笑いを漏らしながら、そう耳元で囁いた。
 そんな、旨そうなネタの匂いは逃せない。
「なんで?」
 マドレーヌの匂いを、フンフン嗅ぎながら久恵に問えば
「実は、今回の実習はF組と一緒だったんだけど……」
「マ、マジでぇ〜っ?」
「まだ何も言ってないっ!」
 結局最後は、手持ちの荷物で久恵に殴られた――

「ずぁいほぉ〜!」(※最高!)
「ふぁ〜ふぃあわふぇ!」(※あぁ〜幸せ!)
 ルパンと肩を抱き合い、マドレーヌを頬張りながら廊下を歩く。
 幾度もの戦いを共にくぐり抜けてきた、戦友との立ち食いほど素晴らしいものはない。
 コーラスラインでも、コサックダンスでもできそうなほど高らかに足を挙げ、 意気揚々で教室に戻れば、机の上の物体を見下ろしながら鎮座する男が二人……

 うな垂れる次元の前に置かれたブツは、確実に呪い入り。(金輪奈落)
 けれどワトソン前に置かれたブツは、美味そうに輝いている。(食いてーな)
 そんなブツを目の前にして、溜息をつくワトソン。(愚の骨頂)
 同意を求めてルパンの顔を見れば、目がハート。(幸せ絶頂)
 仕方がない。ここはひとつ、無視をしよう。(頑固一徹)

 ルパンの腕を突いて正気に戻らせ、顎でそっとやつらの方を差す。
 事の次第を本能で嗅ぎ取り、幸せ気分に水を差されたくないルパンも後ずさる。
 けれど、あと一歩で廊下というときに、背後から叫ぶ声……
「ちょっと待てお前らっ!」
 だるまさんが転んだ状態で固まる俺とルパンに、電光石火で駆け寄ってきた次元は
「無視して逃げるとは、いい度胸じゃねーか?」
 妙な口のひん曲がり具合で、下目使いに囁いた。

「お前の場合は、自業自得って言うんだよ」
「そーだ! 文子と手を繋いだ罰だ!」
「それは関係ねーだろ! てかゴエモン、お前なら食える!」
「ふざけんな! 俺を殺す気か!」
「そーだ! 文子と手を繋いだ罰だ!」
「しつけーよ! コーラを奢ってやっただろ!」
 そんな喧々囂々と吼え続けるトライアングルゾーンに、割って入る瀕死の声。

「た、た、助けてください……」

 三角の中心で、不幸を叫ぶ?
 けれどこの悲痛加減は、確実に悪魔関連の話に決まってる。
 仕方がない。ここはひとつ、無視をしよう。(一心不乱)
「ルパンお前、いつの間に次元からコーラ貰ったんだよ!」
「こいつは、俺の文子と手を繋いだんだぞ!」
「だから、コーラやったじゃねーか!」
「た、助けてください!」

 そして今日もまた、ルパン一味の線路は続くよどこまでも――
 ゆけ! 飛べ! ゴエゴエモン!(飛べないけどぉ)
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photo by ©ミントBlue