貴方と私の想い






「やだ!」
目に涙を浮かべて手塚の手を振り払うリョーマ。
そんなリョーマに、何が何だか分からないといった様子の手塚。
2人は今、不二の家の前で立往生している。
「何が嫌なんだ?お前が2人じゃ落ち着かないと言うから来たんじゃないか」
「だからって何でココなの?!アンタ、俺の言った意味全然分かってないじゃん!!」
早口で捲くし立てるように言う。
・・・それだけ嫌だということか。
だが手塚はそんなリョーマの思いも解からず、ひたすら疑問符を浮かべている。
「何故って・・・試験勉強なら成績の良い奴から教わった方が早いだろう?不二なら教えるのも上手・・・」
「部長のスカポンタン!!」
「・・・そんな言葉よく知ってるな」
「部長!!・・・俺のこと、バカにしてんスか?」
リョーマが下から涙目のまま睨みつける。
「そういうつもりはないが・・・」
言いながら目を逸らす手塚。
「・・・全っ然説得力ないんスけど」
更に睨みつける。
「いや・・・そういうつもりじゃなかったんだ。すまない」
リョーマにそれに気付く余裕はなかったのだが、このとき手塚の頬はうっすらと赤く染まっていた。
「じゃあなんでこっち見ないんスか?!」
リョーマの問いに手塚が溜息をつく。
「無自覚だから困るんだ・・・」
「なに・・・」
「こういうことだ」
突然降ってくる軽いキス。
「・・・・・・え?」
「お前の顔見てるとオレに毒なんだよ・・・」
言いにくそうにそう言って、また目を逸らす。
その様子に、リョーマは一瞬驚いたような表情を作り、それからどこかホッとしたように笑った。
「・・・なんだ、分かってんじゃん」
リョーマがポツリと呟く。
「・・・何だ?」
「何でも」
したたかな笑いを浮かべて手塚の手を取るリョーマ。
「帰りましょ、部長」
「?わざわざここまで来たのにか?」
手塚の言葉に、リョーマが不服そうな顔を見せる。
「・・・別に、いーけどね」
――――そーゆーとこもアンタの魅力だし。
「・・・・・・?」
手塚は状況に置いていかれたまま眉をしかめる。
リョーマが思っているようなことは、この男の想像の範疇を超えているのだ。
「ほら、帰るよ」
眉間の皺を取るように、ちょんとつつく。
「・・・・・・っ」
リョーマの触れた辺りに手を当て、惚ける手塚。
年下にいいように振り回されている自分に少し苦笑しながら、はっと我に還ったように聞き返す。
「・・・帰るのか?」
少し、不安げな顔。
それを見て、愛しそうな笑顔を見せるリョーマ。
「帰るよ」
そう言ってすたすたと歩いていく。
「そうか・・・」
期待の外れたような寂しげな声で答える手塚のそれを聞いて、手塚には見えないようにこっそりと満足気に笑う。
「まだまだだね」
そう、呟く。
「何か言ったか?」
「べっつに〜」
もう一度クスリと笑って、リョーマは手塚の方に振り返った。
「ほら、帰るんでしょ―――部長の家に、さ?」
小悪魔の微笑。
「・・・・・・」
―――――オレはとことんコイツに弱いな・・・・・・
そんなことを思いながら、顔を真っ赤にして「あぁ」と一言だけ返す。
「じゃあ、行きましょ?」
差し出されるリョーマの手。
多少躊躇しながらその手を握り返す手塚。
「♪」
途端に上機嫌になり、嬉々として歩き出すリョーマ。
さっきまで怒っていたのが嘘のようだ。
一方、公然で手を繋ぐことに多少の抵抗がある手塚は、どこかぎくしゃくしている。
――――とはいえ、それでも手は離さないのだけれども。
そんな些細なことさえ愛しいといった感じで、隣を歩く男に寄り添うリョーマ。
「コ、コラッ」
言葉では拒絶を見せるが、拒みきれない手塚。


そして・・・―――――
そんな2人を見つめる誰かの視線・・・・・・
その視線は、さっきまで2人が言い争っていた場所の真正面にある家の中から来ていた。
「・・・・・・良い度胸してるじゃない」
視線の主は不適な笑みを浮かべながら呟いた。
「このまま済むなんて思わないでよね・・・・・・越前?」
――――・・・どうやら2人が幸せになれるのは、まだまだ先のこととなるらしい。









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1年位前に哀沢君に押し付けたかもしれないもの。(少し書き直しましたが。)
キャラの口調が掴めなくて四苦八苦しながら書いてた記憶が;(ってかテニスは未だに愛が足りないのでよく分かりません;)
とりあえず“ヘタレ”手塚と“小悪魔”越前のお話。あと黒不二。
テニスは基本的にカプとかどーでもいいのですが、この構図は意外と好きです。だから実はこれにはこんな続きがあったりして・・・(笑)


どーでもいいですが、私にはリョーマ=帰国子女=日本語が完璧ではないという偏見があります。それきっと間違ってるよ・・・



2004/4/20


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