「久しぶりだな」 「あぁ・・・まだ少ししか経っていないのに、カガリは女らしくなった」 「これでも一応オーブの姫だからな」 久しぶりに会ったカガリは、髪が少し伸びて・・・どことなく“母親”を思わせるような雰囲気を醸し出していた。 「元気だったか?その・・・ラクスも」 「あぁ。これ以上無いくらい忙しいけど、同じような立場のラクスが毅然に振舞っているのに俺ばかりが弱音を吐いているわけにもいかないだろ」 同じような立場の、と言い切るには歌姫としての知名度の分ラクスのほうが重いはずだが、ザフト内を2分にしていたそれぞれのトップの子ども、という意味では俺たちは似たような立場に置かれていた。 「全くだ」 軽く笑いながら言葉を返すカガリ。 プラントと地球、場所の違いこそあれど一国の主の子どもであるカガリも・・・そしておそらくキラも、こうやって会っていられるような暇など本当は無いのだと思う。 けれど、それを押してまで会う必要が、俺たちにはあった。 このままで良いはずが無いのだから。 何から言うべきか――――― 多分お互いそんなことを考えていたのだと思う。 突然訪れた沈黙は、先を急くように気まずさばかりを募らせていった。 このままじゃいけない。意を決して口を開く。 が、それはカガリのほうが一歩早かった。 「ごめんっ!!」 一瞬呆気に取られて、目の前で頭を下げたカガリをただ見つめてしまった。 が、すぐにそんな場合ではないと気付く。 「俺の方こそ・・・悪かった。だからカガリが謝る必要なんて・・・」 「いや、ある!」 顔を上げてきっぱりと言う。 「だってそうだろ?結局私たちはお互いを利用してただけなんだよ」 「カガリ・・・」 確かに、そうかもしれない。 カガリがそう言うということは、キラの想いはめでたく通じたということだろうし、俺だって、ラクスを手放すつもりなんて毛頭無い。 けれど・・・ 「先に利用したのは俺だ・・・」 カガリを守ると、そう約束したのは俺。 キラの気持ちを分かっていて煽ったのは、俺だ。 「後とか先とかなんて関係ないだろ?私はキラに、お前はラクスに振られた痛みを癒そうとした。それも一番嫌な形で。私はお前に流されてたかもしれないし、そこに付け込まれたのも事実だ。でもお前がそうしなかったら私はキラを好きだってことに一生気付かなかったかもしれない。結果オーライってやつだ」 そう言って、爽やかに笑う。 もっと俺のことを憎んでもいいはずなのに。 あぁ・・・そうか・・・ 今なら分かる。 どうしてカガリだったのか。カガリを選んだのか。 「カガリが相手じゃなかったら、やらなかっただろうな」 「私も、アスランが相手じゃなかったら許さなかったかもしれない」 なんて身勝手な言い分。 それでも自然と笑い合える、そんな関係。 キラじゃない。イザークじゃない。 カガリという存在。 どれだけ救われてきたか分からない。他に見合うものの無い、唯一つの存在。 「んー、やっとすっきりしたー」 身勝手な言い分を聞き入れてくれるのは、きっとそれが君だから。 「じゃあ帰るかー、キラが待ってるし♪」 「お、俺だってラクスが・・・」 「早く落とせよー?」 そう思う自分が居るのに、一方で嘘をつけない自分も居る。減らず口を叩けるのも、君だから。 「言われなくとも」 笑い合える関係になれて、本当に良かったと思う。 それでも全ては――――まだ、これから。 |
3部作完結編。・・・なんて言ってみたり。終わってねぇよ、話(あははん) アスラン、決意を新たにする、の回。です。 実は書いてて一番楽しかったのは冒頭のアスキラ会話だったり(笑) ともあれアスランとカガリはこういう関係がいいです。や、利用がどうのじゃなくて; アスランが馬鹿でも許してくれるカガリ。アスカガでなく。アスランとカガリ。 ところでラクスが名前しか出てませんよ、どうしたの碧翠さん(笑) ということで蛇足的なアスラクおまけはこちらから。 |