「アイツに、言われたんだ」
「アイツ・・・?」
土方の疑問に銀時は答えない。
もしかしたら、聞こえてすらいなかったのかもしれない。
銀時の意識は、土方への語り掛けを通して過去へと遡っていた。
「こっちに来いよって・・・」
こっち、が何を指しているのかは土方には分からなかった。
けれど銀時がそこで言われた通りに行ってしまったいたら、今この場に居る銀時はありえなかったのだろうとは思った。
「こっちとかあっちとか知んねーけどよ。そん時俺はもう結構シンドくなってて。フラフラ〜って行っちまいそうになった」
「っ!」
驚く土方に、銀時が皮肉にも取れる笑みを浮かべた。
「行かなかったんだけどな。行くのが怖かった。でもよ・・・」
銀時がこぶしを握り締める。
「結局、俺も変わんねぇのかも知れねぇ、アイツと。この手を血に染めて必死んなってやっても、俺は・・・ただの人殺しだ」
見ていて痛々しいほどに力の込められた指に、そっと触れる。
言葉は見つからなかった。
この手の温もりで銀時の心に触れることしか、土方にはできなかった。
その想いが伝わったのか、ふっと銀時の手から力が抜ける。
「・・・・・・今更、落ち込んだって仕方ねーってのは分かってんだ。だから今俺は、せめて俺の目に映るヤツらだけでも護りてぇって思う」
充分護っているではないか、とそう思うのだが、銀時にはそれでは足りないらしい。
探している。自分の存在理由を。
きっと何度も繰り返したのだろう。
昔の夢を見て苦しんで、どうにかして前を見ようと顔を上げて。
「・・・俺ァ」
言うべきか言わぬべきか。
土方は迷ったが、何も口にしなければどの道何も変わりはしないのだと思いきった。
「てめーに護られるほど弱かねぇ」
弱くない、つもりだ。
だから護らなくたっていい。
銀時がようやく顔を上げて土方を見る。
土方は滅多に見せないような優しい顔で微笑った。
「そんなことしなくたって、俺はお前の傍に居てやるよ、銀時」
俺の傍に居ることがお前の存在理由だ。
そう言うと、驚きに固まった銀時の顎を引き寄せ軽く口付ける。
「ん・・・」
銀時もそれを受け入れ、そうすることで琴線が緩んだのか滅多に見せることのない涙を流した。
土方は軽く笑うと、その涙を指先で拭ってやった。
「なんだ?安心したか?」
「ばっ・・・・・・ばっか、お前これは違うだろ、あれだろ・・・」
言い訳に四苦八苦する銀時を見ながら、楽しそうに指についた水滴を舐め取る土方。
「なっ・・・」
「・・・・・・甘ェ」
「んなワケあるかー!」
顔を真っ赤にしながら否定する銀時の様子に、クックッと声を立てて笑う。
銀時も、自分が土方のペースに載せられていつの間にかいつもの調子に戻っていることに気付いた。
苦笑して、顔を背けながら口を開く。
「ありがとよ」
頬を染めて少し不機嫌そうに言うそれが照れ隠しだということはすぐに伝わった。
「たまには正直なオメェもそそるな」
土方はわざと意地悪く耳元で囁く。
「っ・・・ひーじーかーたァー」
銀時は更に赤く染まった顔で土方を睨みつけた。
・・・何と言うか、逆効果だったようだが。
「今日のオメェすっげぇ可愛くてまた襲いたくなる」
言葉と共に銀時を押し倒そうとする土方。
「ちょっ、何言ってっつーかナニしよーとしてんの!?馬鹿言ってんじゃないよ朝っぱらから!!」
「テメェがそんな顔俺に晒すのが悪ィ」
銀時の制止も虚しくコトを進めようとする土方。
「やめっ・・・ア、もう・・・人の話を聞けーーーっ!!」
早朝の江戸の町に銀時の声が響く。
だがその抗議の声が止むのは時間の問題だと誰もが悟った。














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高銀破局済み土銀・・・って感じ?高杉出て来ないけど。
一応初の銀魂なのに本命(=銀八※銀新のこと)でなく只今絶賛推奨中の高銀及び哀沢君からの影響で土銀ですよ参ったねこりゃ。
しかも書きながら土方と高杉の書き分けができない事実に気がついたことは内緒ですよこれ。やっべムズイ。


ちなみに推奨カプはゴロゴロありますが、攘夷幼馴染組みに関しては
高杉→松陽先生×銀時←桂(←坂本)で松陽先生の死後に慰めあう高銀
という構図が大好物です。(それで桂は銀時取られちゃったから高杉が嫌いなんだよーとか夢見がち。)



2006/7/22


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