強く、強く握り締めた手は
血の気が引いて白く―――――
強張って動かない指を、優しい手が一つ一つ解いてくれた。
脈打つ感触と共に赤く染まる手のひら。
止まっていた血が流れ出す。
アァそうか、赤はアイツのイロだ・・・・・・






赤い夢




背筋の凍るような感覚に目を覚ました銀時は、不安な心のままにガバッと身を起こすとすぐさま辺りを確かめた。
ドクンドクンと嫌な音を響かせる心臓は、見慣れたはずの部屋に違和感すら覚えさせる。
今自分はドコに居るのか。
今はイツなのか。
隣にいるのはダレなのか―――――
確かめなければいけないはずなのに何故かそれが怖くて、いつもならば見間違えるはずもない黒髪に恐る恐る触れた。
「ん・・・・・・起きたのかァ銀時ィ・・・」
突然掛けられた声にビクリと体を跳ねさせると、声の主は体を起こしながら訝しげに銀時を見た。
目線が合う。
アァ大丈夫、このカオは、このコエは、アイツじゃない―――――
銀時は知らず詰めていた息を吐き、彼の肩に額を寄せた。
伝わってくる温もりに安心感を覚える。
良かった、アレは全部夢だったのだ。
「・・・どうした?」
「んー・・・・・・」
例え夢でも。
夢で見た全てを彼に話す気にはなれなくて、代わりに銀時は彼の名を唇に乗せた。
「土方ァ・・・・・・」
情けなく弱った自分の声に自分でも驚く。
銀時は苦笑しながら、彼の―――――土方の肩を両腕で抱いた。
もっと確かな温もりが欲しくて腕に力を込める。
顔を上げない銀時に些か不安を覚えながらも、土方は銀時の腰を抱き寄せ、耳元に口付けを落とした。
「ん・・・・・・」
ピクリと反応を示す銀時に、逸る気持ちを抑えながら土方が尋ねる。
「何か、あったのか?」
銀時は少しの間を置いて、思い切ったように顔を上げるといつもの表情でおどけたように言った。
「アレェ多串くん心配なんかしてくれちゃってるの?やっさしーぃ」
そうやって軽く微笑む銀時の頭を掴み、投げるように布団の上へと倒す。
ちょうどうつ伏せのような体勢になって、また銀時の顔が見えなくなった。
「ムリして笑うくれーなら大人しく寝てろ」
土方の言葉を聞いて再度苦笑する銀時。
「お前って意外と鋭いのな」
「テメェのことだからだろ」
すぐさま返された言葉に、不安の渦巻いていた心が何故だか少し浄化される。
嬉しいような泣きたいような気持ちになって、銀時は布団に顔を押し付けた。
2人の間にしばし無言の時が流れる。
やがて意を決したように銀時が口を開いた。
「夢ェ・・・見たんだよ」
「夢?」
「何てーの?昔の夢、みたいな・・・」
銀時の過去に何があったのか土方はおぼろげにしか知らない。
それでも、銀時が過去のことで今でも傷付いていることは充分に理解っていた。
話しにくいことならばムリに話す必要はないと諌めようとしたとき、それを遮るように銀時が口を開いた。
「お前、知ってるかもしんねぇけどよ。俺ァ昔いろいろとやんちゃしてたわけだよ」
「あぁ・・・大体想像はつくが・・・」
「そんでもって仲間の死ぬとことかよぉ・・・もう見たくねぇってくらい見て、柄にもなく落ち込んじゃったりしてさぁ・・・」
ポツリポツリと話す銀時の言葉は重く、土方はただ聞いているしかなかった。














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