ゴミ箱ゴミ箱


文章になりきらなかったネタ。邪←蛮←卑(←邪※シスコン)。元ネタは原作。





失ったこと






暗い回廊に、蛮の声は良く響いた。
「なぁ・・・卑弥呼・・・」
暗い、暗い、蛮の声。
「何?」
蛮がこういう声を出す時はいつも、決まって兄貴の話題が出てくる。
「あれ・・・」
「あれ?」
「大事な兄貴を失った気持ち、って・・・本気、だろ?」
ほら、やっぱり。
「そんなの敵を惑わすためのでっちあげ、口から出任せに決まってるでしょ?」
蛮は黙り込む。
確かに以前のあたしなら本気で問い質してたと思う。
でも―――――
「別に、他にあたしがアンタに突っ掛かっていく理由が見つからなかっただけよ。今は―――――
そう、今は。
「今はそんなに気にしちゃいないわ」
だって
「理由、あるんでしょ?」
兄貴がそう言ったから。
「あたしには言えないこと。ならきっと、あたしはそれを聞くべきじゃない」
そう・・・なんでしょ?
「だから、聞かない。理由が分からないのに責め続けるのは、酷よ」
蛮は黙り込む。
あたしの顔は、見ない。
「・・・あたしだって、ただ泣きじゃくるだけの子どもじゃないわ」
そう言って蛮の顔を見れば、瞳にたたえる深い紫。
悲しみの色。
きっとあたしより蛮の方がよっぽど傷ついて・・・泣いてる。
泣き続ける、可哀想な子ども。
「行くわよ」
今は泣かないで。
今だけは。
泣かないで―――――





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