6.見ているだけで良いと思っていたのに


いつからこんなに欲深くなってしまったのだろう。
最初はそんなことなかった。
見ているだけで良いと思っていたのに。
いつからこんなにも貴方を求めてしまっていたのだろうか。
貴方の笑顔を見るだけで心躍らせていた僕は一体どこに消えてしまったのだろう。
今ではもう僕は貴方無しでは生きられない。
貴方を欲しいと思う気持ちがこんなにも膨れ上がって、もうどうすることもできない。
日に日に我侭になって、抑えつけられないほどの衝動が僕に襲い掛かってくる。
触れてしまえたら。奪ってしまえたら。
そう思う気持ちとは裏腹に、こんなにも貴方を恋い慕う気持ちは必死で僕を引き止める。
取り返しのつかないことをさせないために。
貴方を傷つけることのないように。






7.あの人の代わりにはなれない


分かっていた。分かってはいた。
貴方が望むのは僕ではないのだと。
僕が傍にいても何にもならないのだと。
いくら僕が似ているとしても、僕ではあの人の代わりにはなれない。
だって卑怯じゃないか。
兄弟の無償の愛に勝てるほど、僕は貴方の傍にいない。
体だけが近くにいても、遠い。
貴方の中に僕の存在がない。
僕では貴方の弟にはなれない。
そんなことは分かっていた。
最初から、分かっていた。






8.貴方の幸せ願うだけ


僕にできる唯一のことがあるとすれば、それは貴方の幸せを願うこと。ただそれだけ。
例え僕の望みが叶わなくとも、貴方が笑えるのならばそれで良い。
そのためならば、僕は死ぬことだってできる。
貴方が幸せであるように。貴方の幸せ願うだけ。
貴方が、弟に会えるように。
僕の命はあと僅かしか残っていないから、懸けるには少し足りないかもしれないのだけれど、それでもこの僅かな命を懸けて願う。
貴方が幸せであることを。
貴方の幸せを、手に入れることを。






9.ただ、貴方が僕の為に泣けば良いと思った


これが僕の望みだ。
貴方を幸せにすること。
けれどそれは貴方の弟の存在を認めることなんかじゃなくて、僕の命を懸けることで貴方に認められること。
僕の存在を貴方の中に刻むこと。
いつだって僕を通して弟を見ていた貴方に、僕自身を見てもらうこと。
奪えないことなんて初めから分かっていたから。
せめて貴方の中に僕の存在を刻み付けておきたい。
そうして、ただ、貴方が僕の為に泣けば良いと思った。
そうすれば忘れないでしょう?
ふとした瞬間に、きっと思い出してくれるから。
そうしたら、僕はそれだけで救われる。






10.あと何度声を嗄らせば 僕の声は貴方に届く?


ただ願わくば。
生きているうちに貴方に僕を見てほしかった。
この声が貴方に届くように、僕は何度も叫んでいたのに。
ただ声が嗄れるほど叫んでも、貴方の中にいない僕の声は貴方には届かない。
この想いは、誰にも気づかれないまま死んでいく。
ただ願わくば。
貴方に僕を見てほしかった。
貴方に認めてもらいたかった。
僕は僕なのだと、弟ではないのだと、その小さな違いが僕をどれだけ幸福にするか、貴方は知らないのだろう。
きっと今も。
ただ貴方に認めてもらいたかった。
僕の存在を。僕という存在を。
貴方は結局気付かなかったけれど、僕はいつだってそうやって叫んでいたんだ。
あと何度声を嗄らせば 僕の声は貴方に届く?
どれほど叫んでも伝わらない。
この想いは僕と共に死んでいく。
この声は貴方に伝わらないまま。
僕と共に死んでいく。














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お題9は、正確には「ただ、君が僕の為に泣けば良いと思った」です。都合上変更。


こういった、お題に沿った散文というのはよくGBをネタにして書いたりしています。UPはしておりませんが;(そのうちね、そのうち。)
今回はハイエド。暗い・・・ですね・・・(おぉぉ;;)



2005/11/2


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