届かぬ恋で10のお題
1.誰にも言えない
誰にも言えない気持ちがある。
自分にさえ言えない気持ち。
それを認めてしまえば全てが変わってしまう。今のままではいられなくなる。
だから僕はこの気持ちに蓋をする。
大好きな貴方に伝えられない想いを、胸に秘めたまま蓋をする。
これを言ってしまうことは誰の望みでもないから。
望まれない想いは報われないから。
それでも僕は、この気持ちを持ち続ける。
誰にも言えない気持ちを、誰にも言えないまま、ただ持ち続ける。
この気持ちだけは否定したくないから。
この気持ちは本物だから。
誰にも言えない想いを、僕だけが忘れないで胸に抱き続ける。
誰にも言えないから。
これは、僕だけの想い。
2.手が出せないからこそ
夢に見るほど愛しく思うのに、現実の僕はその手を空に迷わせる。
手を出してはいけないと、歯止めの掛かるこの想いを胸に秘めたまま僕はそれを貫く。
けれど、手が出せないからこそ、夢の中の貴方はひどく残酷に笑う。
笑って僕を受け入れる。
夢と現実。
その違いに僕は苛まれる。
手が出せないからこそ、夢の中で貴方は僕を惑わせていく。
僕が堕ちていくのを待っているかのように。
残酷な貴方は優しく微笑う。
3.それでも僕は
ある日貴方は言った。僕によく似た姿の弟がいると。
すごく似ているのだと言いながら僕の頬に触れる。
その手はとても愛おしげで、しかしそれが僕に差し伸べられることはなかった。
僕を通して、弟を見ている。
そんなことは分かりきっていることだ。
苦しくないわけじゃない。
悔しくないわけじゃない。
それでも僕は、貴方がそう望むのならば気付かない振りをしていようと思う。
貴方の目が、指が、偽りでも僕を捕らえるというのならば、それでも僕は嬉しいのだ。
だから気付かない振りをする。
もっと僕を見て。弟でもいいから。
偽りでもいいから。
4.触れたいけれど 触れられない
貴方が愛おしそうに僕に触れるたびに、僕もその手を握り返したくなる。
けれど、僕の腕と貴方の手は体温が違うから。
同じように触れていても、決して同じ熱を持たない。同じ意味を持たない。
だったら、貴方に触れたいと思ってもそれは叶わない。
触れたその先から、貴方はきっと僕ではない温もりを求めるのだから。
それでは僕は触れられない。
貴方に。
触れたいけれど 触れられない。
だって貴方がそれを望まないから。
触れたその先に貴方がいないから。
指先が触れていても何の意味も持たない。
そこに貴方はいないから。
貴方がそれを望まないから。
5.いっそ奪ってしまえたら
貴方の望みと僕の望みが交わらないのだとしたら、いっそ奪ってしまえればいい。
貴方の望みも僕の望みも、叶わないその先にある未来に無理矢理にでも繋げてしまえればいい。
貴方の望みを奪って、僕の望みに繋いでしまえればいい。
貴方が待ち望む弟と似ている僕が、貴方の弟に成り代わって貴方を手に入れることが出来るのならば、いっそそうしてしまった方がきっと2人とも楽になれる。
いっそ奪ってしまえたら。
弟から貴方を。貴方から弟を。
そうすればきっと僕らは幸せを手に入れる事だって出来る。
叶わない望みをいつまでも大事に抱えているくらいならば、いっそ。
僕と一緒に堕ちてしまえばいいんだ。
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