機体を着陸させ、荒野に降り立った途端、彼――――シン・アスカは殴るように掴みかかってきた。

「あんた、どういうつもりだよ!『君の家族を殺した』!?それがホントだったら・・・あんた、覚悟は出来てるんだろうな!!?」


憎しみに満ちた、怒りの表情。
これと同じ顔を、僕は知ってる。


僕も、こんな表情をしていたのだろうか・・・?


「聞いてんのかよっ!!」
「・・・うん。本当だよ。あの時オーブで戦っていたのは、僕とアスランだ」
「アス・・・ラン・・・っ?」


彼の表情が変わったのを見て、失言だ、と思った。
彼はザフト。アスランは彼の仲間。
ここでアスランの名前を不用意に出しちゃいけなかったんだ。


「でも・・・君の家族を殺した責任は僕にある。そう思ってくれていい」


この場にいないアスランに責任を押し付けるほど、僕は落ちぶれていない。


「何で・・・」
「え?」
「何でそんなことが言えるんだ?あんたホントはオレの家族を殺したかどうかなんて分かっちゃいないんじゃないのか?」


・・・・・・どうして、分かるのだろう。


「うん・・・でも、あの場で僕が戦っていたことは確かだから」


それは確かだ。事実がどうであろうと、可能性は拭いきれない。


「だから何で!別に本当にあんたが俺の家族を殺したかどうかも分からないのに、何で名乗り出たりなんかするんだよ!」


感情に任せて一気に捲くし立てる。
その言葉は、僕にもそのまま疑問としてぶつかりこんできた。


何で・・・・・・?


1つの問いが頭の中を駆け巡る。
そして導き出した答えは―――――


「贖罪・・・かな」
「贖罪?」


そう、それは彼とフレイへの贖罪。


「護るって、誓ったんだ。けど結局、護れなかった。あの子も、その家族も。だから、贖罪。今度は、生きてるうちにちゃんと、あやまりたかっ・・・」


それ以上は、言葉にならなかった。


「ごめん・・・・・・っ」


ここで泣いちゃいけないと思うのに、その思いを裏切るかのように涙が溢れ出てくる。
止められなかった。
あんなに泣いたのに。泣いて、謝ったのに。
僕はまだ自分を許せないでいる。
だから、謝りたかった。
誰かに許して欲しかった。
許しを乞うちゃいけないと思うのに・・・


ポンッ


不意に、背中を優しくなでてくれる温かい腕に気づく。


「泣くなよな・・・」


泣いている子どもをあやすように、優しく労わる。


「・・・知らなかったんだ。俺の家族を殺した奴が、殺したこと今でも悔いているかもしれないってことを・・・」
「シン・・・」
「べ、別に許したわけじゃねーからな!っつーか許せるようなことじゃねーし、そんなに簡単に変わらねぇ。でも・・・・・・」


言葉を一旦区切って、続ける。


「少しは、救われた気がする」
「・・・救われた・・・?」
「俺の家族のために泣いてくれる奴がいるってこと、分かったから。ちょっと、何つーか、嬉しかった」


シンの哀しい瞳が、少しだけ綻ぶ。
その表情はまだ強張っているけれども。
キラの行動は、少なくともシンの心を揺り動かすことはできた。


「ほら、行けよ。あんた地球軍か何かなんじゃねーの?ザフトの赤服と一緒にいたらまずいだろ」
「シン・・・」
「えーと、キラ、だっけ?」
「・・・・・・また、会えるかな」


シンはそれには答えずに背を向けた。
手だけはこちらに振り返して。


また、会えたら―――――


次はまた、戦場で。














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最近また今更キラフレがブームでして。
なんかふとシンキラっぽいのが思いついたのでそんな感じで。
時流に乗った作品は、どうやら私には書けないみたいです(笑)



2005/4/28


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