『誤魔化せないってことかも。いっくらキレイに花が咲いても、人はまた吹き飛ばす――――』 最初に出会ったのは、夕暮れのオーブ。彼はあの場所で、何かを憎まずにはいられないような哀しい瞳を見せた。 戦場で あれと同じ瞳を、僕は前にも見たことがある・・・ 『いやぁぁぁっっ!!』 『嘘つきっ!!僕たちも行くから大丈夫だって言ったじゃない!!』 『何であいつらをやっつけてくれなかったのよ!!』 『パパを返して!返してよぉ・・・っ!!』 赤い髪の哀しい少女は、愛する父親を殺したコーディネイターを憎まずにはいられなかった。 そしてその恨みを晴らすために、僕を利用した。 いや、僕も彼女を利用していたからそれはお互い様だ。僕らの利害は一致していた。 彼女は僕を愛する。 僕は彼女を護る。 そして、護りきれずに、彼女は死んだ。 僕の、せいだ・・・ 2度目に出会ったのは戦場で。 彼は僕と同じ、オーブ育ちのコーディネイターだった。 『アスハのせいで・・・俺の家族はアスハに殺されたんだっ!!』 カガリは、彼を知っていた。そして、カガリから話を聞けば聞くほど、僕の中で彼女と彼が重なる。 「じゃあ、彼の家族を殺したのは、僕だ・・・・・・」 だってあの時僕はオーブにいた。戦って、いた。 彼女の父も、彼の家族も、僕は護れなかった。 僕が・・・殺した。 「違う!キラのせいじゃない!!」 「本当に・・・?」 「・・・わ、私もお父様を責められても何も言えなかった。だって私にはお父様のせいだなんて思えないっ・・・・・・でも、だからって誰かに責任を押し付けるのもイヤだっ!」 そうやってカガリは、僕のせいではないと言う。 「戦争が悪いんだ、何もかも。戦争が・・・」 戦争が悪い。 だから、自分たちは悪くない―――― けれど、その戦争で、このオーブで引き金を引いたのは僕だ。 僕や、アスランだ。 「戦争が悪いと言ってしまえばそうだけど、だからって僕に何の責任もないなんて、そんなはずないでしょう?」 カガリは僕に責任を押し付けない。 押し付けてしまえば、それはそのまま父を責める結果になるから。 だから、認めることができない。 僕やアスハ代表の責任を。 認めてしまったら、彼の言う通りになってしまうから。 カガリは、アスハ家が、代表が悪く言われるのがツライのだ。 それは、父への親愛の情。ただ、それだけ。 「・・・うん。僕も、代表が間違ったことをしたとは思わない。そう思えるほど、僕は彼のしてきたことを見ていないから」 「キラ・・・」 「でも、僕は僕自身がこの戦争で何をしてきたのかを誰よりもよく知ってる。知ってて、その上で僕には責任があると思う。だからやっぱり、僕のせいなんだよ」 カガリは納得の行かない顔で僕を見た。 「キラは、悪くない・・・悪くないだろ・・・っ」 そうやって味方になってくれる人が居るだけで、僕は充分幸せなんだと思う。 だからこそ僕は、僕の責任をちゃんと自覚していなければならない。 「ありがとう、カガリ・・・」 味方が居る限り、僕は大丈夫だから。 僕のせいで彼が家族を失ったというのなら、僕はせめて彼にしてあげられることを何でもしよう。 それが僕なりの責任の取り方。 「シン・アスカ・・・?」 「そうだけど、あんた誰?」 「僕はキラ。キラ・ヤマト。君と話がしたいんだ。・・・そこに降りて、直接話せないかな?」 3度目の出会いも、また戦場だった。 「君の家族を殺したのは――――僕だ」 僕は僕にできる償いをしていこう。 どれだけかかっても。 哀しい瞳をした、彼のために。 |