「アスランは?」
強い口調でキラが問う。
「どうするつもり?彼女のこと」
「どうするって・・・」
そんなこと言われても、それに答えられる俺ならきっとこんなことにはなっていないと思うんだが。






もしもミーアさんが生きていたら、おまけ




ミーアの病室を出ると、待ち構えていたかのようにキラに捕まえられた。
「キラ?どうした?」
キラはどこか怒っているように淡々と話を進めていった。
「アスランに、どうしても確かめたいことがあって」
「俺に?」
キラが俺の目を真っ直ぐに見て言う。
「アスランは、ラクスが好きなの?」
――――――一瞬、息が詰まった。
どうしてみんなそんな話題ばっかり持ち出そうとするんだ?
「そ・・・」
そんなことをなんでお前に言わなきゃならないんだ。
そう言おうとした唇は言葉を見失う。
キラがあまりにも真剣だったから。
「・・・そりゃ、婚約者だったんだぞ」
好きかと聞かれれば嫌いだと答えるはずはなく、それでも今も未練があるだなんてことは言えなかった。
「でも、ラクスは僕を選んだ」
ズキッ
わかっていることなのに、改めて言われると心が重い。
どうしてわざわざそんなことを言うんだ。
「ラクスは選んだ。でも君は?」
キラが責めるように語気を強める。
「カガリにも彼女にも中途半端な態度で、それでラクスにもってそんなの納得いかない」
そんなことはわかっている。だからって・・・
「お前にだけは言われたくないっ」
キラの目が見開く。少し、強く言い過ぎただろうか。
「アスランにだって言われたくないよっ!」
「何?!」
聞き捨てならない。まさかそう返されるとは思わなかった。
「どういう意味だ?!それは!」
「言葉のままだよ!!どっちつかずでフラフラしてるアスランにそんなこと言われたくなんかない!!」
言い切って、こちらを見据える。
こうやって睨まれることはあまりなかったので少し戸惑う。
怒って・・・いるのか?キラは。俺が、どっちつかずだから・・・?
「キラ・・・待て、落ち着け。どうしてお前がそんなに怒るんだよ?」
おかしい。何かがおかしい。
だってこれはこんな風に言われなけりゃならないことか?
「お前は、何に対して怒ってるんだ・・・?」
ミーアのことだけだったら、キラがこんなに感情的になる必要なんてない。
キラが怒っているのは・・・――――――
「・・・そうだよ。僕が怒ってるのは僕自身に対して、だよ」
目を伏せたキラが、俺の意を汲み取ったように同意を返す。
それは、キラはキラ自身を何か許せないでいるということだろうか。
「僕は、許せないんだ。昔の、傲慢だった僕が。みんな・・・何もかも傷つけて何も護れなかった僕が、許せない・・・」
初めて聞くようなキラの言葉。
「キラでも、後悔なんかするんだ・・・」
それは思わず出てしまった言葉だった。
どこかで俺は、キラは前しか見ていないのだと思い込んでいたのかもしれない。
「どういう意味?」
少し口を尖らせてムッとしたように言う。こういうキラは、よく知っているのに。
「いや、悪い・・・」
「言っとくけど、今のアスランが昔の僕に被って見えるから怒ってるんだからね?」
目を細めてむくれる。
キラが被って見えると言うんだから、きっとそうなんだろうな・・・一度後悔をしたキラだから、それを次に繋げようとするキラだから、俺の行動にイラついたのだろう。
やっぱりキラは前しか見ていない・・・――――――俺とは違って。
「そう、見えるのか・・・」
キラは頷くと俺の方は見ないで言った。
「・・・僕はラクスを選んだよ。そしてそれ以上にラクスに助けられてる。だから・・・」
そこまで言って言葉を区切る。
キラが、顔を上げた。
「僕は、ラクスを護る」
それはキラの決意だった。揺らがない決意。
昔の自分に誓った、堅い決意。
「アスランは?」
強い口調でキラが問う。
「どうするつもり?彼女のこと」
「どうするって・・・」
そんなこと言われても、それに答えられる俺ならきっとこんなことにはなっていないと思うんだが。
俺は――――――一体どうしたいんだろうか。
「俺は・・・」
ミーアを選ぶ?カガリを選ぶ?それとも、選ばない?
大体にして、俺に何かを選ぶ権利なんかあるのだろうか。
「何も選ばなかったら、お前は怒るのか?」
答えが出ない。けれど――――――
「俺は・・・彼女たちが幸せに暮らせるのなら、それが一番いい」
答えは出ないけれど、これだけははっきりしていた。
誰もが幸せになればいい。幸せになれるように・・・そのために俺は戦ってきたんだ。
「それじゃダメなのかな・・・」
俯き加減に尋ねると、キラは呆れたような困ったような顔で言った。
「はっきりしないんだね。・・・アスランらしいけど」
「・・・ああ、ダメだな、俺は。はっきりさせるよ。だから少し考えさせてくれ」
俺の優柔不断な申し出に、キラは「いいよ」とも「ダメだ」とも言わず無言で頷いた。
「ちゃんと決めて。アスランが、自分で」
それだけ言うと、踵を返して自室へと向かう。
取り残された俺は、言われたばかりだというのに考えることをやめて天井を仰いだ。
俺は、一体どうすればいいのだろう・・・――――――


答えは、まだ見えない。














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いつでも根底にアスラク・キラフレ☆
アスランは何も決められないんじゃないかと思います。そんなイメージ。



2007/4/3


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