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大規模マンションづくりとは新たなコミュニティーをつくること |
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東京フロンティアシティは約1,300戸。つまり数千人が住む場所を用意しているわけですから、これはもう建築を超えて“街づくり”です。言い方を変えれば、ひとつのコミュニティーを生み出そうとしているということ。でも、人と人との関わりが希薄な現代社会では、隣近所にどんな人がいるのかわからないまま数千人の生活が始まっていく。恐いことですよね。どこかですれ違うことはあってもなかなか交流は生まれず、一抹の不安を抱きながら暮らし続けることにもなりかねません。
そこで僕は、大規模マンションの構想に当たって常に提案している「コミュニティーサポート」を東京フロンティアシティにも導入することを考えました。入居者が気持ちよく生活をスタートできるためのコミュニティーづくり、つまり入居者同士が早く顔見知りになるためのきっかけづくりです。
これにはいろんな方法があり、たとえば「ガーデニングを習いたい人」と「ガーデニングを教えたい人」を見つけ、互いをつないであげるマッチング・システム。大勢の入居者がいるから、料理・ヨガ・陶芸など、さまざまなパターンのマッチングが可能です。しかも大規模マンションは共用施設をいっぱい持っている。つまり共用施設を使ってイベントをやったり、カルチャースクールを開いたり、サークル活動をしたりと、いろんなことができます。 |
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目指したのは楽しみながらコミュニティーが形成される仕組みづくり
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東京フロンティアシティの場合は、なんと言っても銀座まで30分という都心距離にあるため、通勤時間が短かくて済み、おのずと自由時間がたくさんつくれます。また江戸時代からの伝統や文化を培ってきた一角であるという歴史的背景ももっています。しかも周辺に大公園があり、川のそば特有の広いスペースも用意されている。さらには海にも山にもすぐに行ける位置。つまり南千住は「都心距離」「伝統文化」「すぐそばに大自然」という多面性をもっています。そうした背景のもとに導き出したのが「遊び」というテーマでした。
狙いは「遊び」を通して楽しみながらコミュニティーが形成できること。我々はただ入居者がアクションを起こしやすいよう導入部分をつくってあげればいい・・・ということで生まれたのが「東京タイムデザイン」というコンセプトです。自由な時間を自分自身でデザインすること。生き方のデザインと言ってもいい。
こんなこともしたい、あんなこともしたいと心の中では思っているのに、きっかけがなかっただけという人は多いはず。ほんのちょっと、ひとつハードルを飛び越えればできること。今回はそういう環境をみんなでつくってみようというところからスタートしました。通常コミュニティーサポーターという呼び方をしていますが、この役割を今回は「遊びの達人」たちに担ってもらいます。遊び方、遊び場所、遊びの極意などを伝授してくれる頼もしい人たちです。達人が教えるからといって別に難しいことを意識するのではなく、単純に遊びが大好きという気持ちで気軽に参加してもらえばいい、そうこうするうち自然にコミュニティーが育まれるという考え方。その拠点が東京フロンティアシティです。
難しく考えないで、気軽に「東京タイムデザイン」を楽しんでもらえばいい。無理に参加する必要はまったくない。こんな楽しいことをやっていますからちょっとのぞいてみてください、関心のある方はやってみてくださいということ。コミュニティー形成うんぬんと言っても、僕の感覚値では、参加する人は全体の20%くらいだと思っています。絶対イヤ、大嫌いがやはり20%くらいいて、どうでもいいという人が60%くらい。そして楽しそうだなと横目で見ているサイレントマジョリティーもいる。そういういろんな人がいる中で、いろんな活動をしていることが安心感につながるんです。コミュニティーで一番重要なのは、そこ。踊る阿呆に見る阿呆じゃないけど、見ている人が安心して見ていられる、そういうことが大事です。 |
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やがて自ら垣根を越えて交流していく、そうなれば大成功 |
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「遊びの達人」は居住者の中にもいるかもしれない。でもその存在が明らかになるまでには時間がかかる。だから最初はとりあえずいろんな仕掛けを考えてやっていく。そのうち居住者の中から達人が現れれば、外部の達人とスライドしていけばいい。最終的には自分たちで発想して、自分たちでコントロールできるようになる、そういうふうに展開していけば、より理想的なコミュニティー、気持ちのいい街ができるはず。今までのマンションでは、どんな達人がいるのかなんて永遠にわからなかった。そうではないだろうというところから今回のプロジェクトはスタートしています。
もっと言えば、だれが先生で、だれが生徒というのも自由でいい。自転車は私が教えるけど釣りはあなたが師匠になってね、という具合に互いに教え合うとか。そのボーダレスの中を自分がいかに楽しく泳いでいくかが、まさに「東京タイムデザイン」だと僕は思っています。
今は世代間のコミュニケーションも成立していないでしょ。たとえば、子育てにいっぱいいっぱいになってガス抜きができない若い母親がたくさんいます。だから経験豊富なお年寄りから助言してもらえるとか、そういう世代間交流ができるといい。働き盛りの人が外に出ていれば、昼間残っている多くは年寄りと子どもたち。そこにコミュニケーションがあるのは昔は当たり前だったんだけど、今はすっかり分離していることにも問題がある。ならば昔のよかったところをもっと積極的に取り戻せばいい。
人間って、いろんな世代のいろんなタイプの人がいて、そういう人たちがスクランブルすることが都市生活。だからこそ楽しいはずなんです。お年寄りや子どもたち、若い夫婦、いろんな世代がうまくコミュニケーションできれば、こんなにいいことはありません。
僕もかつては箱をつくるだけで中身についてはあまり考えていなかった時代がありました。それが今では、中身をきちっと考えたそのうえで箱はどんなものがいいかという順番になっています。箱があって中身、中身があって箱というようにフィードバックしながら、結果的にひとつの街をちゃんとつくっていこうよと。どうやったら気持ちのいい街になるか。かっこいい箱をつくっても、それだけじゃダメ。気持ちのいい街というのは、隣人に素敵な人がいるというのがいいわけですから。
都心距離、伝統文化、大自然、そして大規模マンション内で紡ぐ新しいコミュニティー。東京フロンティアシティはこれらがすべて揃った21世紀型の新しい居住形態ではないかと思います。「東京タイムデザイン」という仕掛けに注目し、この街には楽しいことがいっぱい待っている、そう気づいてもらえたらいいですね。 |
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