316.節操なし※
困ったことにサヤをいじめ抜いて泣かせるのはローにとってとてもいいストレス解消だった。
普段ローはサヤに勝てないし振り回されてばかりなので、やっと帳尻が取れたように感じる。
だが射精すると冷静になった。
(やりすぎた……)
サヤはイきすぎて感度を飛ばして目の焦点もあわずビクビクと全身を痙攣させている。
体中、白い肌にローのキスマークや歯型がたっぷりついて完全に食い散らかされたような感じだ。
さすがに申し訳なくなった。
頭を撫でて髪にキスすると、「もう嫌」と泣かれてしまった。
「もう意地悪しないで……っ」
「もうしない。ごめん。風呂入ろう」
抱き上げようとすると、触られるだけでも辛いのか嫌がられて、ローは大人しく手を引っ込めてベッドに座った。
そのままサヤの機嫌が治るように頭を撫で続けると、サヤは少し落ち着いてきたようだ。
「きらい……」
起き上がれないサヤにジト目で見られてローは謝るしかなかった。
「ごめんって」
でも正直、サヤもよがってたから同罪だと思う。
「気持ちよくなかったか?」
意地悪い聞き方をすると、「でも意地悪だったもん」と拗ねてサヤはローに背中を向けた。
腕を伸ばして、髪を撫でながら、ローは少し拗ねた気持ちで言った。
「サヤに別れるって言われてショックだったから、その仕返しした」
「う……」
その件ではサヤも悪いことをしたと思っているのか、ちょっと態度が軟化した。
反対を向いたサヤのこめかみにキスしてローは「気が済んだからもうしない」と約束した。
「本当? もう意地悪終わり?」
サヤはローのほうに寝返りを打って、期待した目でローを見あげた。
「終わり」
ローが約束すると、サヤは安堵した満面の笑みになった。ちょろい。
「じゃあ、一緒にお風呂入る」
当然のように抱っこを求める両腕が伸ばされたので、ローはサヤを抱き上げた。
「……ぅー」
小さくうめいてサヤはローの首に抱きついた。
「どうした?」
「ちょっと、お腹痛くなってきた……」
「まずいやつじゃねぇか、それ」
虐めて泣かすのはいいが、痛いのはダメだ。
慌ててローはサヤを連れてバスルームに向かった。
◇◆◇
「男の子って大変……」
中を洗ったものの、まだじんわり痛いようで、サヤは顔をしかめながら湯船のローに抱きついた。
「女の子に戻りたい……」
膝の上にサヤを乗せて抱き寄せながらローは頷いた。
「オーハを見つけねぇとな」
「見つけても戻してくれるかな?」
「拒否ったら殺す」
慌ててサヤはローに抱きついた。
「人食いトラさんになっちゃダメだよ!」
「サヤだって腹立つだろ」
困った顔でサヤは首を傾げた。
「あんまり……? キャプテンが置き去りにしたほうが悪いことだと思う」
「なんだよ、裏切り者」
ヒゲでぐりぐりすると、サヤはふくれた。
「キャプテンは男の子にも女の子にも意地悪だと思う!」
責められてローはしれっと返した。
「海賊なんで」
「私が女の子のときはいつも優しいのに……」
確かに女の子のサヤは溺愛している自覚がある。
「サヤが女の子に戻れば俺も丸くなるかもな」
サヤの目に「早く戻らなきゃ!」という目的意識が生まれた。サヤは性転換しても意外と順応していて、「戻りたいけど戻れなくてもそんなに困らないし」という感じだったので、何よりである。
すぐにオーハを探しに行こうとするサヤをローは引き止めた。
「ちゃんと温まってからな」
「もう温まったよ?」
「もうちょっと」
サヤと風呂に入るのは楽しい。二人とも能力者なので力が抜けてしまうが、それを差し引いても裸で密着していちゃつけるのは貴重な機会だった。
「たまには俺が洗ってやるから」
飛行島では子グマに世話してもらったので、ローはスポンジでサヤの体を磨き上げた。
嬉しそうにサヤはローに洗われている。
(あー、もう一回ヤりてぇな……)
可愛すぎてやばい。男の子になってもこんなに可愛いっておかしいと思う。
喘いでるときの可愛さがまた別格で、懸賞金をかけたくなるレベルだ。
我慢できずに泡だらけのサヤにキスして舌を入れた。ん、と小さく漏れる声が可愛くて興奮する。
(もう一回……いや、腹痛いって言ってたからダメか)
女の子に戻ったらまた死ぬほどしよう、とローは固く心に誓った。
そう考えるとちょっとお得感がある。男の子のサヤと女の子のサヤを両方抱けるのだ。
「もう行く? のぼせちゃった……」
サヤはローとは逆に熱いお湯が苦手だ。お湯を張ったのはローなので、ついいつもの癖で熱めの湯を入れてしまった。
風呂から上がって着替えると、外はすっかり日が暮れていた。とても楽しい数時間だった。
「腹減ったし、飯食いに行くか」
「なに食べる?」
わくわく顔で飛び出そうとしたサヤは、かくんと膝の力が抜けて転びそうになった。
片手で抱き支えて「まだ足に力入らないのか?」と聞くと、「キャプテンのせいだよ」と赤い顔で言われた。
「ふうん?」
刀を能力で背中に固定して、ローはサヤを抱き上げた。顔を近づけて至近距離でささやく。
「うまく歩けなくなるまで突かれて悦んでたの誰だっけ?」
赤い顔でサヤは不満そうにローの首にぎゅっと抱きついた。
「キャプテンだって、すごーく楽しそうにしてたくせに」
「もちろん。サヤの中はとろとろで、温かくて、すげー気持ちよかったし、腹いっぱいに俺のもん咥えてあんあん鳴いてるサヤは可愛いかったしな。楽しくないわけないだろ」
ローが全面的に肯定すると、サヤはますます赤くなってふくれた。
(あー、可愛くて困るな)
顔が見えないようにぎゅっと抱きついて、「私だって大好きだもん」とサヤはささやいた。
なんかもう全部ローは自分の負けでいい気がしてきた。
「早くオーハを見つけて女の子に戻らねぇとな」
「……女の子も抱きたいから?」
「そう。どっちが抱き心地いいか試したい」
開き直ってキスすると、「節操なし!」と再びローは怒られた。