赤い提灯がゆらゆらと揺れている。
夜を待ちわびる幻想的な風景はどこか懐かしい光景で、辺りにただよう魚を焼く香ばしい香りは空腹を刺激する。
ほうき星の王様となったアスターは、あれからシュレディンガーに連れられるまま共に旅をしていた。
泡沫に無数にある世界は数えきれないほどで、日替わりで世界線を飛び越えてもまだ有り余るほど。
自分ひとりでは世界を越えられないが、シュレディンガーに導かれれば巡る星を宿命付けられたアスターが、共にいけない世界などなかった。
「ここは随分と活気のある世界だな」
「うん、王様が望めば民が存在できる世界もあるからね」
王様がひとりぼっちの世界も、王により未来が閉ざされる世界も見てきた。
そのどれもが選択した結果、辿り着いた答えである。
やがて役目を終えた世界はアスターの宿命により流星群のなかへと静かにまとめられ、世界を巡り新たな星の素となるのだ。
「…賑やかな世界もいいな」
ぽつりとこぼれた言葉に、シュレディンガーは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「そうだね、私も賑やかな方が好きだよ」
どこか思わせぶりな言葉に反応してしまったが、すっかり魚の匂いの虜にされている運命の黒猫は匂いがする方へとふらふらと歩き出しているではないか。
(…うん、やっぱり猫だな…)
苦笑しながらアスターは彼女の後を追う。
運命を観測しながら、導かれるまま、どの世界にいつ向かうかなんてわからない。
未来をもたらすのは、いつだって運命の黒猫なのだから。
「この世界にはいつまで滞在するつもりなんだい?」
「そうだね、アスターが飽きるまで!かな!」
不思議な運命の黒猫はアスターの手を握り、焼き魚への旅路へと急ぐ。
「ふふ、それではシュレディが飽きるまでにするとしよう!」
■あとがき■
形にしたくてたまらなかった二人のお話でした。
二人はどこでも行けて、どこでも一緒です。
ずっとずっと!