きみのゆうわくのめ


■-3

 朝の日差しでアユルスはまだ重い目を開けた。自室へテレポートし、ジダルドが去ってすぐに眠ったが寝不足なのは否めない。体にはまだかなりの感覚が残っており、思わず一つ息をつく。
 取り敢えず着替えようとしたところで体の微かなむず痒さに気付き、服を脱いでみると悪戯の赤い跡があちこちに散っていた。もしこれを家族に見られようものならば、詰め寄られた果てに父が犯人を斬り刻まんとするだろう。その恐ろしさに震え上がり、決して晒すまいと誰にともなく誓った。



「ルルム、おはよ」
 ジダルドが声をかけながら布を取ると、やはり仏頂面が見えた。アユルスの為にも果たして昨夜は眠ってくれていただろうかと気になるが、それを確認する方法は無い。
「ねー、ルルム」
 ジダルドは両手でルルムを持ち上げ、その瞳を真正面から見詰める。
「ルルムもアルの事好きだもんねえ」
「……あぇ」
 一呼吸置いての声が肯定のように聞こえ、ジダルドは続けて尋ねた。
「俺の事、ぶん殴りたい?」
「あえぇ」
 怒りの肯定なのか意味の無い偶然なのか、即座に反応される。
「アハハ、まあどっちでも、俺はしたい事するだけだよ」
 告げてジダルドはルルムを定位置である頭の上に乗せ、気分良く部屋を出た。



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