Try a Bite!
■-2
苦心して服は脱げたが其処からが動けない。熱に浮かされたような頼り無い意識と苦しさを隠しも出来ず、座り込んだ侭でジダルドは全身を襲う異常に思考さえも呑まれる。不安げに表情を窺ってくるアユルスの姿も欲を掻き立てるものでしかなく、気付けばその体を引き寄せていた。膝の上にアユルスを乗せ、腕を伸ばすと後ろから窄みへ指を差し入れる。
「ひっ……ぅ、はぁ、あ……ふぅう……」
ジダルドの肩を掴んでくるアユルスの体が驚きに跳ねたが、やがて必死に呼吸を繰り返した。震えた息がジダルドの長い耳へかかり、淫らな状況を音と感触で教える。
「ねえ、アル」
囁きながらジダルドが差し入れる指を増やした。奥深くを刺激し、徐々に変化するその部分へ執拗に指を押し付けると、アユルスの体が震える。
「ん、はぁっあ、あぅうっ……」
徐々に艶めくアユルスの反応にジダルドが軽く笑った。
「昔、偉ーいヒト達の、間で……、生命力を、キスで吸い取るのが、流行ってた、みたいだね……」
言葉にアユルスは前に読んだ歴史書を思い出す。確かに古い時代には貴族の間で流行っていたとの記述が片隅にあったが、それだけで終わっていた。そしてその威力は単に触れて生命力を吸い取るものと同等であり、非常に危険なものだ。命懸けの遊戯へ読んだ当初は理解が追い付かなかったが、今ならば解ってしまう。
「は……ぁ、試、す……?」
アユルスの途切れ途切れの問いに、ジダルドは小さく笑った。
「ふふ、やめとく……。だって……」
ジダルドがゆっくりと指を引き抜き、アユルスの片足を抱える。そうして窄みへ宛がったジダルドの硬い体は微かに蠢動を繰り返し、強い疼きを主張していた。
「俺もう、壊れてんだもん」
言い終えるか否かに体を押し付け、徐々に埋めていく。
「は、ふうぅ、んん、はぁあ……」
震えた吐息でアユルスが出来る限り力を抜き、無抵抗に招き入れていくさまへジダルドが微かに笑った。やがて全てを受け入れたアユルスが深い息をつき、熱に揺れながら微笑む。
「ジル、の……、大きく、なってる……」
言葉と共にその内部で締め付けられ、堪らずジダルドは小さく呻いた。
「んん……っ、これ、一回じゃ、終わんない、かもねっ……」
ジダルドが腰を使い、断続的にアユルスの奥深くを突き上げ始める。途端にアユルスから色めいた声が上がり、ジダルドの肩を掴む手に不器用な力が加わった。
「あぁっあ、ひ……ぁあ、んふ……あぁっ」
律動の中でアユルスも腰を使うようになった頃、ジダルドの手が放っておかれたアユルスの仰ぐ体を包み込み扱く。指の動きや位置に変化を付け、刺激する箇所を自在に変えると、耐え難い感覚に反応を示して僅かな痙攣を起こした。
「ああぁっ、やっあ、ジルぅっ……んぅああっ」
内部の締め付けはアユルスの努力によるものだが、窄みの締め付けは感覚によるものだ。喘ぐように窄みが締まる感覚に、ジダルドはアユルスの悦びへ溺れるさまを知る。だがジダルドの背筋を駆け上がる小気味良い悪寒は来たる限界をも知らせた。
「アル、何処に欲しい?」
アユルスへ恥じらいを越えさせたい欲望から尋ねてしまうが、アユルスは相変わらず無抵抗に答える。
「ん、はぁ、なか、にぃっ……あっああっ……」
いつ何時も変わらない素直さに、ジダルドは救われてすらいるのだろう。
ジダルドが動きを速め、アユルスの体を大仰に揺さ振ると共に手の動きも速まった。アユルスが身を襲う歓喜に悲鳴染みた声を上げる。
「ふあぁあっ、あっあぁっだめっもうっ、ああぁあっうああぁっ……!」
一段と奥深くを突くとアユルスの身が痙攣した。硬い体からは勢い良く白濁を撒き散らし、ジダルドの顔から腹にかけてを汚していく。内部は蠢動を繰り返し、促されてジダルドも欲を注ぎ込むと、駆け巡る悦楽に身が震えた。
「はっ……はぁっ……」
まだ少量の白濁を出しながら、アユルスが潤んだ赤い瞳でジダルドを見詰める。内部のジダルドも同じく収まってきていた。
「ふふ……、アルのも元気だねえ」
告げるジダルドへアユルスは謝ろうとしたが、ジダルドが舌を伸ばして口の端に付いていた白濁を舐め取るさまを見て謝罪の言葉が崩れる。
「あ……」
ますます赤面するアユルスの耳元へジダルドが唇を寄せ、囁いた。
「元気なら、まだまだ、出来るよね……?」
内部で萎え始めていた筈のジダルドの体が大きさを増すのを感覚で知り、そうして触れられた内部の疼きも収まっておらず、アユルスは一つ頷く。
「アハハ……決まり」
ジダルドは一旦身を離すとアユルスを寝台へ押し倒し、胸元へ手を這わせ両方の尖りを指先で弄り始めた。
「ひゃっ……ああっ、ん、ぅうああ……っ」
身をよじるアユルスへジダルドが身を屈めて顔を寄せる。小さな笑いを零してからジダルドはアユルスへ深く口付け、熱くなった口内を楽しむように舌で舐め上げた。
「ふ、んむんん……はふ……んくっ……」
ジダルドの指からの刺激と口内を蹂躙される感覚に、アユルスの手が強くシーツを掴んでいる。体は両者再び硬く仰ぎ、時折アユルスがジダルドの体へ擦り付けているのは無意識なのかもしれない。動きに気付いたジダルドが腰を使い擦り付けると、やがてアユルスも無遠慮に腰を振り始め、その仕草がジダルドの欲を大いに燃やす。
口を離すと唾液が糸を引き、アユルスが唇から熱い吐息を漏らした。
「はぁあ……ジルぅ……」
アユルスの腰を使うさまが艶めかしく誘うように感じられ、ジダルドは諦めたように微笑む。焦らすのも良いのだろうが、それ以上にジダルド自身が耐えきれない。
「欲しいの、あげるから、待ってて」
ジダルドは手を離し身を起こすと、アユルスの両足を持って持ち上げ、枕をアユルスの腰の下に敷いた。ジダルドへ足を開いた姿勢を見せてもアユルスは抵抗せず、素直にされるが侭でいる。
アユルスの足を抱えると、先程の白濁に塗れた窄みがひくつくさまもよく見えた。其処へ再び体を宛がうと、先程とは異なりぬめりに任せて早々と全てが埋まる。
「んう、はっ……、もう、はいっ、ちゃった……」
アユルスの呟きには悦びが揺れ、ジダルドも更なる楽しさに笑った。
「ふふ、欲しかったんだもんね?」
告げてジダルドが動き始め、同時にアユルスの硬く熱を持つ体を片手で扱く。奥深くにあるしこりを再び刺激され、アユルスが汗ばんだ体をくねらせた。
「あんぅうっジルぅ、はふぁ、あっあ」
ジダルドは一切遠慮無しにアユルスの体を激しく突く。アユルスは嫌がりもせず、寧ろ大いに求め続けていた。
「はあ、あ……」
アユルスの両手がシーツから離れ、自らの胸元へと辿り着くと尖りを弄り始める。
「それ、大好き、だよね……」
「んんぁ……、だ、って、すごくっ……、きもちぃ……ぁああっ」
ジダルドの指摘に恥じらう余裕も無く、激しい感覚にアユルスの腰が再び痙攣を起こし始めた。律動の中で涙に濡れそぼつ赤い瞳が、熱に揺れながらもジダルドを捉えているさまはいっそ健気であり、艶めかしさと愛らしさの奇妙な共存を思わせる。
「ああぅ、ジル、もっ、きもち、いい……?」
尋ねるアユルスの内部は締め付けを怠っておらず、この場合においても素直で努力家である性質が見え隠れするが、それだけではない事もジダルドは喜びと共に知っていた。
「ふふ、すんごくいいよ……。次、何処に欲しい……?」
「んぅうう……、やっぱり、なか……」
「中出しされるの、好きなの……?」
意地が悪いと自身でも思うジダルドの問いへ、アユルスが熱い吐息の中で答える。
「なかに、だされ、たら……とろとろ、してて……、なん、か、ぞくぞく、する、から……」
感覚に欲情しているのか、それとも別の反応なのかは定かではないが、生々しい答えにジダルドの思考は一気に吹き飛んだ。
「あー……それならぁ……」
ジダルドの腰と手の動きが速まり、体のぶつかり合う音と水分の音が響く。
「あっあんっああぁああっ、ジ、ルっ、もっとっああぁあっ」
「たーっぷり、中出し、してあげる……っ!」
そうしてジダルドは一段と奥深くを強く突き上げ、欲の侭に白濁を放った。全身を支配するように強い感覚が駆け巡り、抑えきれずに小さく呻きが漏れる。
「あっああぁああっ……!」
同時にアユルスもジダルドの手の中で果て、痙攣を繰り返す腰と連動するように自らの体へと粘液を撒き散らした。
「はぁ……は……はぁあ……」
体を離し、アユルスの荒れた呼吸の収まりゆくさまが絶頂の終わりを伝えた。その中でアユルスがジダルドの瞳を捉え、互いに悦楽で揺り動かされていると知って微笑む。その一連に心動かされる感覚は、既にジダルドを虜にしていた。
「ジル……」
「ん……?」
「もう、大丈夫……?」
ジダルドへの不安を優先する事に驚きこそもう無かったが、アユルスの素直な優しさにジダルドもまた素直に応えたくなり、素直さは伝染すると改めて知る。
「もう平気だよ、ありがとね」
「良かった……」
安心し上体を起こすアユルスの体は粘液に塗れているが、宿泊していないアユルスが大衆浴場へ行く訳にもいかなかった。ジダルドは寝台の脇に置いていた自身の携行品から柔らかな布を取り出し、アユルスの体を拭ってやる。行為の後始末を丁寧にし始めたのも、思い返せばアユルスとの事からであり、其処にある感情が如何に異なっているかを知るきっかけでもあった。事実、アユルスとの事以降は他の誰も目に入らない程だ。
「はい、おしまい」
「ん……」
まだ内部が熱を持って疼くのか、アユルスの表情は蕩けた色を残している。それに見惚れているとジダルドが気付いたのは、アユルスから笑みを向けられてからだった。
「ジルは、どっちが良かった?」
「えーっ……、決めらんないよ、いっつも最高だし」
ジダルドの答えにアユルスは目を白黒とさせ、それから満足げに微笑む。
「それなら、いっか」
最も危険で蠱惑的な結論だった。
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