波間に攫われ
■-2
再び口付け、舌を伸ばし絡まり合う。吸い付き啜り上げる音が互いの耳を刺激した。
「んぅ、ん……はぁ……っ」
積極的なさまにアユルスの抱く大きな欲が見える。難しく気にしたとしても、この欲を求めずにはいられなかった。
口付けをその侭に、ジダルドはアユルスの寝間着の申し訳程度にあるボタンを下から外し、腰へ手を滑り込ませる。指先で輪郭をなぞるように撫で回すと、僅かにアユルスの体が跳ねた後にその腰が揺らいだ。求めに応じて指を下着へかけて下げると、既に張り詰めていたアユルスの体が外に出てくる。
「んふ……、ジル……」
漸く口を離したアユルスの声音には熱が篭もっていた。アユルスは寝間着の合わせから同じように仰ぎ出ているジダルドの体を片手で取り、そっと扱く。
アユルスから与えられる感覚に溺れながら、ジダルドは手をアユルスの下方へ潜らせ、窄みへと指を差し入れた。
「あ、あっ……は、ふぁ……」
徐々に差し入れる指を増やしながら、奥部を揉むように押し続ける。
「はっ……あ、あぁっ、う、ぁあ……」
奥部に手応えが生まれ始めた頃にはアユルスから甘い声が上がり、頃合いを見てジダルドは指を引き抜いた。するとアユルスがジダルドへ跨がり、形作っている体の上に腰を浮かせる。下着は下ろしたものの、片足に引っかかっている侭だった。
「着た侭でいいの?」
上のボタンで辛うじて留まっているアユルスの寝間着を指しての問いに、アユルスは耐えるような表情を見せる。
「ちょっと、もう……いいかな……」
構っている余裕が無いとの意味合いにジダルドが理性を揺らされた時には、アユルスの窄みへ先端が埋まってきていた。そうして見る見る内に内部へと招かれ、全てが入りきってしまうと急に締め付けられる。
その侭アユルスが腰を使い、望む侭に動き始めた。
「ふ、あっ、はぁ、はっ……んん、あぁっ」
切なげな瞳が言わんとする事を察して、ジダルドはアユルスの胸元へ両手を伸ばす。親指で両方の先端を転がしてやると、堪らないのかアユルスが天を仰いだ。
「ひゃっ……ああぁっ、はぁっあ、あんぅっ」
「此処、好きだもんね……」
「ん、んっ、あぁ……、もっと……」
求めに尖りを摘まみ、引っ張ってみるとアユルスの体が大仰に跳ねる。
「あぁっ!」
反応にジダルドは満足げな笑みを浮かべ片手を離すと、今まで放置され僅かな痙攣を起こしているアユルスの体に触れた。先端から滲み出ていた透明な粘液を根元までまとわり付かせるように手を動かすと、アユルスが悲鳴染みた甲高い声を上げる。
「あぁあ……っ、んふ、ああぁ、ひぁっ……だ、めっ、んんっ……はぁあっ」
時折弱々しく喉が鳴るのも、形振り構わず感覚へ溺れているのだと示すものだった。律動は段々と間隔が短くなり、ジダルドも高ぶりを抑えきれなくなる。アユルスの動きに合わせて出来る限り腰を突き上げてやると、やがてアユルスの腰が痙攣を起こし始めた。
「はぁっ、あぁっんんっ、うぅあっジルっあぁああっ」
ふとアユルスがジダルドを見詰める。涙に潤んだ赤い瞳がこれまでの感覚を雄弁に語り、これからを願うように揺らいでいるさまから目が離せず、ジダルドは笑いを零した。この無自覚な蠱惑に何度も誘われ溺れ、その度に新鮮な悦びを感じてきたが、別段不思議とも思わないでいるのは単純に幸福であるからなのだろう。
「もうイきそう?」
「うあ、ううっん、もう、だめっ、だっ……」
「いいよ……、この侭、俺もイかせて」
「ん、んんっ、ぁあ、ふあぁっあんっあぁああっ……!」
頷いてアユルスが深く腰を下ろし、内部も一段と窮屈に締め付けた。促されるようにジダルドが欲を放つと共に、アユルスもまた痙攣しながら白濁を撒き散らす。その間に数回軽く突き上げてみると、アユルスの白濁が押し出されるように溢れた。
「んはぁ、んうぅ、はぁっ……」
やがて絶頂も収まり多少落ち着いたアユルスが、体もその侭に自らの寝間着のボタンへ手をかける。
「やっぱり、脱ぐ……」
着衣の侭で乱れた姿も欲をそそられたが、続きを明言されたと同義の発言に、ジダルドは今一度理性を大きく揺さ振られた。
柔らかな寝台に沈むアユルスの両足を抱え、腰の下へ枕を挟む。その僅かな作業へこれからを期待するように、アユルスはジダルドへ熱に揺れる眼差しを向けた。足を開かせるにもアユルスは無抵抗であり、そうして晒された窄みからは粘液の残りが少量溢れてくる。
ジダルドはアユルスへ覆い被さり、唇が触れる程に顔を寄せて囁いた。
「そんな風にされたら、堪んないよ」
アユルスは目を細めるとジダルドの背に腕を回し、小さく笑う。
「だって……」
言葉の続きを呑み込むようにジダルドは口付けた。すぐにアユルスから舌を伸ばされ、その柔らかい裏側をまとわり付くように舐め上げると、アユルスからくぐもった声が漏れる。
「んう……んん、んむ……はふ、んくっ……」
唾液が垂れるのにも構わず、絡まり混ざり合った。熱い口内を存分に蹂躙してから口を離すと唾液が糸を引き、互いの口元に線を描く。その頃には互いに体が再度反応しきっており、如何に夢中だったかを思い知らされた。
ジダルドはアユルスの首筋に軽い口付けを落とすと、舌先で下方へとなぞる。途中で鎖骨へ幾度か吸い付き、アユルスが震えた熱い息をついたところで胸元へ辿り着いた。また何度か口付けてからジダルドは尖りを口に含み、舌全体で舐め上げる。
「んは、あんん……ふあ、ああぁ……」
もう片方を指先で優しく転がし、時折吸い上げると共に引っ張るとアユルスの体が跳ねた。
「あはぁっ……は、はふ……あぁっ、んうぅ……」
シーツを掴むアユルスの手がもどかしげに力を入れる。耐え難い感覚にアユルスの腰が揺らぎ始めた頃、ジダルドは胸を解放するとアユルスの足を抱え、窄みへと体を寄せた。全て収まると圧迫感にアユルスが不安定な呼吸を繰り返し、慣れに呼吸が多少収まるまでジダルドは待とうとしたが、不意にアユルスから伸ばされた腕へ収まるように覆い被さる。
「ジル……」
ジダルドの背へ腕を回しながら呟かれた呼び声には淋しさが込められていた。今だけはかなう求めに応えたいと、ごく自然に思う。
ジダルドがゆっくりと動き始めると、背を抱くアユルスの手に乱暴な力が篭もった。
「あぁっ、は、はあ、ん、うぁっあ」
枯れそうな声を上げて悦ぶアユルスは、ジダルドの背を掻くまいと努めているのかやがて拳を作る。その配慮にジダルドはアユルスの優しさを感じ、小さく笑った。
奥深くを抉る度に内部が締まり、ジダルドの欲を促してくる。アユルスにただ受け身でいられても良いのだが、こうして素直な努力を受けると甘えたくなり、求めてしまうのを止められなかった。
「あっあぁ、ジルっ、んはぁ、ふぁっああっ」
律動を速める中でアユルスが喉を反らす。ジダルドがその無防備な喉へ跡を残さない程度に軽く吸い付くと、アユルスの体が一際跳ねた。続けて舌で舐め上げると、喘ぐ振動がジダルドの舌を伝わる。
「んうぅあっ、はぅう、んふ、も、うっ……!」
汗ばんだ体で限界を訴えるアユルスに、ジダルドはアユルスの肩口へ顔をうずめて囁いた。
「ふふ、此処だけなのに、堪んないんだ?」
「んんぅっ、ジル、が、するからっ……」
苦情にしては大いに受け入れられており、つまるところを考えてジダルドは尋ねる。
「それ、俺以外じゃ駄目って事?」
意地の悪い問いだとの自覚はあるが、問わずに置いておけない。
「ジル、じゃ、ないと……いやだ……っ」
素直さのもたらした答えはジダルドへこの上無い喜びを呼び、心の底からの言葉を零させた。
「……ほんと、かわいい」
深く突き上げた箇所でジダルドは欲の丈を放ち、アユルスも反応するかのように腰を痙攣させながら粘液を互いの体に撒き散らす。
「あぁああっ……!」
最後まで出しきってからジダルドは体を抜き、汚れも気にせずアユルスへ覆い被さった侭で疲労感と満足感に浸った。
「はぁー……」
ジダルドの満たされた溜め息にアユルスが小さく笑い、頭を撫でてくる。その心地良さにジダルドは思わず眠ってしまいそうになるが、寸でのところで耐えた。
「ねえ、アル」
「うん」
「これからもずっと、俺アルの事大好きなんだろうなあ……」
ジダルドを慈しむような撫でる手を止めず、アユルスはそっと尋ねる。
「それって、俺が……例えば、ジルよりおじさんになっても?」
時の流れが階によって異なる事による老いの差はジダルドも注意している点だが、そうなる未来が無いとは言いきれなかった。
「うん……。アルがずっとアルらしくいてくれたら、それでもう大好き」
欠片の迷いも無く、それでいてアユルスの平穏を願う言葉にアユルスは喜びを覚える。だが常にある罪の意識からの問いかけに迷っていた。そして迷いを打ち明けても良いのだと悟る。
「……いいのかな、俺がこんなに幸せで」
言葉にジダルドは顔を上げ、アユルスの瞳を見据えて告げた。
「いいんだよ。前にも言ったけど、償いってやりたい事をやらない事じゃないんだからさ。そうやって忘れてないのも、ちゃんと償いになってると思うよ。……あとね」
言葉を一区切りしたジダルドは満足げな笑顔を向けて続ける。
「俺の気持ち、幸せだって言ってくれて、俺も幸せだよ」
アユルスは一瞬目を見開いたが、すぐに細めた。
「うん……。ありがとう、ジル……」
二人で幸福を噛み締める。喜びを隠さないアユルスの微笑みがこれからは近くにある事を、ジダルドは願わずにはいられなかった。
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