かかあ天下
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No.7
刀剣乱舞
黒田っこは長谷部が好き
博多が長谷部の私室を訪れたのは、夜の九時。子供の体を持つ短刀たちが、彼等の保護者にさあもう寝なさいお化けがくるよ、と言われる刻限だ。
末席といえど神の名を戴く存在に対してお化けもないだろうが、人によく似て作られた彼等はその脅しに恐々とし、素直に布団に入るのだ。だからこんな時間に、厠に用があるわけでもないのに出歩くのは珍しい。
長谷部も既に寝巻に着替えていたが、何事かと室内に迎え入れる。と、
「長谷部ぇ、怖いテレビ見たら眠れんくなった……一緒に寝てぇ」
赤い眼鏡のその向こう、目元もほんのり赤くして、博多は長谷部の胸元に飛び込んだ。
「んなっ……だから見るのは止めておけと言っただろうが」
抱きしめてやりながら咎めれば、胸元から涙混じりにごめんなさいぃと声がする。こんな事なら力ずくでも止めてやればよかったか。長谷部は嘆息する。
本丸の食堂を兼ねる広間には、小さなスクリーンがある。常はくるりと丸められ、天井近くに吊り下げられているそれは、降ろせば作成会議のモニターにもなるし、あるいはテレビ番組を映す画面にもなる。
時間の流れと少し外れた場所にある本丸だが、審神者の生きる時間とリンクしている為、その日その時放送されているテレビ番組を見る事だって出来る。それは彼等刀剣男士……特に短刀達のお気に入りだった。
チャンネル権はその日の内番・本丸運営のお手伝いを頑張った者、誉を取った者が優先される。または多数決。それには短刀以外も含まれるが、短刀達がテレビの前に居座る時間とかちあう事は少ない。
だから、今日は特別だった。加州と大和守が誉を取り、たまたま心霊特集番組が見たいと言い出し、審神者が肝試しの参考になるなと頷いた。
食事の時間は過ぎていたから、見たく無ければ自室に篭っていれば良い。カーチェイスの映画は興味深そうに広間の隅で見ている大倶利伽羅も、ラブロマンスとなれば初めの数秒で出ていく。
しかし本丸に来て日が浅い博多は、怖いもの見たさと男の意地で、最後まで見てしまったらしい。長谷部は厨房で洗い物をしていた為、詳しい事はわからない。が、彼にとっては怯えるに値する映像だったということだ。
「博多、少し離れろ。布団が敷けん」
「……怒っとる?」
博多は兄弟刀である一期一振よりも、同郷の長谷部に親近感を感じている。だが、こうして甘える事をどう思われているのか。
真面目な長谷部に、自己管理が出来ていないと呆れられるのは、怖い。
「こんな事で怒るか」
そこまで狭量じゃないぞ。言い、長谷部は軽く博多の頭を撫でた。金色の頭が福岡銘菓を思い出させる。
「それより、そこの二人の分の布団も出してやるから手伝え」
「二人?」
博多が長谷部の胸から顔を上げて振り返ると、兄弟二人が覗き込んでいた。
「ずるいぞ博多! 俺も長谷部と寝るっ」
「あ、あの、厚兄さんが、僕も長谷部さんと寝ても良いよって」
「何で厚が許可権持っとぉとよ」
「俺だって黒田の馴染みだからな」
えへん。胸を張る。その隣では、五虎退が申し訳なさそうに身を縮めている。が、粟田口の大部屋に戻るつもりはなさそうだ。
「ほら、博多、敷布団だ」
「わぷっ。っとと、二つで足りると?」
博多が受け取り、よろめきながらも床(とこ)を作る。
「お前達なら3人でも入るだろう……寝相が悪くなければな」
全員が厚を見る。なんだよぅ、と唇を尖らせた厚に軽く笑い声を上げ、長谷部は掛け布団を敷いた。
さて、ここで問題が起きた。
「俺が最初に来たっちゃけん、長谷部の隣は俺に決まっとろうもん」
「抜け駆けだろ、俺だって隣がいい」
「あの、あの、ふぇ、喧嘩しないで……」
敷かれた布団は二組。長谷部は当然真ん中側として、どちらが長谷部と同じ布団に入るかで、博多と厚が譲らない。五虎退も、止めろとは言いながらも長谷部の浴衣の袖を握って離さない。どうしたものかと思いつつ、長谷部はさっさと布団に潜り込んだ。
「あっはせ……」
「博多、眼鏡は机に置け」
「あ、うん」
「で、お前はここだ。厚はそっちに、五虎退は厚の向こうだ。虎がいれば冷えんだろう」
「えー、博多ばっかりずるい」
「長谷部さぁん……」
長谷部の鶴の一声で長谷部の隣をゲットした博多はほくほくと布団に潜り込む。一方、納得いかないのが厚と五虎退だ。なんで、なんで、と視線に疑問を乗せる。
「お前達はあの番組、見てなかっただろう。あと、相棒達に構ってやれ」
長谷部の指差す先には、五匹の虎がきゅんと鳴いている。
尤もな答えに厚ははぁいと頷き、それでも出来るだけ布団の端っこ、長谷部の側に潜り込んだ。五虎退もそんな厚の隣に、虎と一緒に潜り込む。
「長谷部、長谷部」
博多が長谷部の肩にふわふわとした金髪を擦り付ける。長谷部は苦笑混じりでその頭を撫でてやる。どうも、この博多商人は甘え上手でいけない。
すると、博多を撫でているのとは逆の腕をくいっと引かれた。
「俺も」
僕も。厚と、その後ろから視線だけで訴えられた。
全く、五虎退はともかく、九州男児が何たる事か。思えども、期待に満ちた目で見つめられればそれを無下にも出来ず。
厚と五虎退を交互に撫でてやると、くふんと満足そうな笑い声が聞こえた。
「長谷部とおったらお化けも怖くないっちゃけ」
不思議なの。ぼんやりとした声で博多が呟く。もうすぐ眠りにおちる声だ。
五虎退からは既に寝息が聞こえている。
もごもごと、厚が口を動かしているが、言葉になる前に音が消えた。そして沈黙。
長谷部は布団を肩までかけ直しながら呟いた。
「俺は子持ちになったつもりはないんだがな」
呟きにいらえはなく。
遠くで梟がほうと鳴いた。
#刀剣乱舞
#黒田刀
2024.12.15
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末席といえど神の名を戴く存在に対してお化けもないだろうが、人によく似て作られた彼等はその脅しに恐々とし、素直に布団に入るのだ。だからこんな時間に、厠に用があるわけでもないのに出歩くのは珍しい。
長谷部も既に寝巻に着替えていたが、何事かと室内に迎え入れる。と、
「長谷部ぇ、怖いテレビ見たら眠れんくなった……一緒に寝てぇ」
赤い眼鏡のその向こう、目元もほんのり赤くして、博多は長谷部の胸元に飛び込んだ。
「んなっ……だから見るのは止めておけと言っただろうが」
抱きしめてやりながら咎めれば、胸元から涙混じりにごめんなさいぃと声がする。こんな事なら力ずくでも止めてやればよかったか。長谷部は嘆息する。
本丸の食堂を兼ねる広間には、小さなスクリーンがある。常はくるりと丸められ、天井近くに吊り下げられているそれは、降ろせば作成会議のモニターにもなるし、あるいはテレビ番組を映す画面にもなる。
時間の流れと少し外れた場所にある本丸だが、審神者の生きる時間とリンクしている為、その日その時放送されているテレビ番組を見る事だって出来る。それは彼等刀剣男士……特に短刀達のお気に入りだった。
チャンネル権はその日の内番・本丸運営のお手伝いを頑張った者、誉を取った者が優先される。または多数決。それには短刀以外も含まれるが、短刀達がテレビの前に居座る時間とかちあう事は少ない。
だから、今日は特別だった。加州と大和守が誉を取り、たまたま心霊特集番組が見たいと言い出し、審神者が肝試しの参考になるなと頷いた。
食事の時間は過ぎていたから、見たく無ければ自室に篭っていれば良い。カーチェイスの映画は興味深そうに広間の隅で見ている大倶利伽羅も、ラブロマンスとなれば初めの数秒で出ていく。
しかし本丸に来て日が浅い博多は、怖いもの見たさと男の意地で、最後まで見てしまったらしい。長谷部は厨房で洗い物をしていた為、詳しい事はわからない。が、彼にとっては怯えるに値する映像だったということだ。
「博多、少し離れろ。布団が敷けん」
「……怒っとる?」
博多は兄弟刀である一期一振よりも、同郷の長谷部に親近感を感じている。だが、こうして甘える事をどう思われているのか。
真面目な長谷部に、自己管理が出来ていないと呆れられるのは、怖い。
「こんな事で怒るか」
そこまで狭量じゃないぞ。言い、長谷部は軽く博多の頭を撫でた。金色の頭が福岡銘菓を思い出させる。
「それより、そこの二人の分の布団も出してやるから手伝え」
「二人?」
博多が長谷部の胸から顔を上げて振り返ると、兄弟二人が覗き込んでいた。
「ずるいぞ博多! 俺も長谷部と寝るっ」
「あ、あの、厚兄さんが、僕も長谷部さんと寝ても良いよって」
「何で厚が許可権持っとぉとよ」
「俺だって黒田の馴染みだからな」
えへん。胸を張る。その隣では、五虎退が申し訳なさそうに身を縮めている。が、粟田口の大部屋に戻るつもりはなさそうだ。
「ほら、博多、敷布団だ」
「わぷっ。っとと、二つで足りると?」
博多が受け取り、よろめきながらも床(とこ)を作る。
「お前達なら3人でも入るだろう……寝相が悪くなければな」
全員が厚を見る。なんだよぅ、と唇を尖らせた厚に軽く笑い声を上げ、長谷部は掛け布団を敷いた。
さて、ここで問題が起きた。
「俺が最初に来たっちゃけん、長谷部の隣は俺に決まっとろうもん」
「抜け駆けだろ、俺だって隣がいい」
「あの、あの、ふぇ、喧嘩しないで……」
敷かれた布団は二組。長谷部は当然真ん中側として、どちらが長谷部と同じ布団に入るかで、博多と厚が譲らない。五虎退も、止めろとは言いながらも長谷部の浴衣の袖を握って離さない。どうしたものかと思いつつ、長谷部はさっさと布団に潜り込んだ。
「あっはせ……」
「博多、眼鏡は机に置け」
「あ、うん」
「で、お前はここだ。厚はそっちに、五虎退は厚の向こうだ。虎がいれば冷えんだろう」
「えー、博多ばっかりずるい」
「長谷部さぁん……」
長谷部の鶴の一声で長谷部の隣をゲットした博多はほくほくと布団に潜り込む。一方、納得いかないのが厚と五虎退だ。なんで、なんで、と視線に疑問を乗せる。
「お前達はあの番組、見てなかっただろう。あと、相棒達に構ってやれ」
長谷部の指差す先には、五匹の虎がきゅんと鳴いている。
尤もな答えに厚ははぁいと頷き、それでも出来るだけ布団の端っこ、長谷部の側に潜り込んだ。五虎退もそんな厚の隣に、虎と一緒に潜り込む。
「長谷部、長谷部」
博多が長谷部の肩にふわふわとした金髪を擦り付ける。長谷部は苦笑混じりでその頭を撫でてやる。どうも、この博多商人は甘え上手でいけない。
すると、博多を撫でているのとは逆の腕をくいっと引かれた。
「俺も」
僕も。厚と、その後ろから視線だけで訴えられた。
全く、五虎退はともかく、九州男児が何たる事か。思えども、期待に満ちた目で見つめられればそれを無下にも出来ず。
厚と五虎退を交互に撫でてやると、くふんと満足そうな笑い声が聞こえた。
「長谷部とおったらお化けも怖くないっちゃけ」
不思議なの。ぼんやりとした声で博多が呟く。もうすぐ眠りにおちる声だ。
五虎退からは既に寝息が聞こえている。
もごもごと、厚が口を動かしているが、言葉になる前に音が消えた。そして沈黙。
長谷部は布団を肩までかけ直しながら呟いた。
「俺は子持ちになったつもりはないんだがな」
呟きにいらえはなく。
遠くで梟がほうと鳴いた。
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