かかあ天下
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No.19
DB
結婚は一生の問題なので慎重に考えましょう
我に返った時には既に遅く。
後悔先に立たずというのはこういうことを言うのだろう、と
名前
は遠い目をしてみた。その頬が赤く染まっているのはご愛嬌。
これで悟飯の家族仲間から自分に対する印象は確実に『変な人』だ。
どうでもいい人間だったらそう思われようが次の日には存在自体忘れてしまうのだが、悟飯の関係者となると話は別だ。何で? と問われれば友人だからと答えるであろうが、それでも一応進歩はしている。
だからここで気になるのは悟飯の母や父の反応だ。いつの間にか
名前
の手を再び握り締めている悟天はつまり嫌われてはいないということだろう。
それにだけはちょっと安心して、恐る恐る悟飯の顔を見る。
しかしそこにあったのはサングラスで目が見えないとはいえ、確実に照れ笑いをしているだろうヌケサク面。
一気に脱力した。悩むだけ阿呆くさい。
そもそも悟飯と友人だからと言ってその両親と友人付き合いするわけでない。気負った自分が馬鹿らしく、赤みの引いた頬を苦笑の形に彩る。
そんな姿を見て悟飯は内心『
名前
さん可愛いです!』と握りこぶしを作った。口にすれば自分が殴られるので言えないが。自分が痛いからというわけでなく(悟飯に身体的ダメージを与えられる地球人など限られている)、殴った
名前
が確実に手を傷めるので。
名前
の指の感触を思い出すたび、筋肉に覆われた巨乳をきゅんきゅん揺らす悟飯としてはそんなことは堪えられない。
「おいご、グレートサイヤマン、そろそろ会場行くか」
少々トリップ気味の悟飯にクリリンが声を掛ける。ここで悟空にでも呼びかけさせれば確実に悟飯の名を呼び、面倒なことをしそうだ。
それを察した気遣いの人に感謝しつつ悟飯は頷いた。
「あ、そうですね。じゃあ、
名前
さん……行ってきます」
さり気に
名前
と手を繋いだままの悟天を引き剥がしつつ言う。その姿にブルマがぷすぅ、と笑い混じりの息を洩らした。
「あー……、行ってらっしゃい。怪我あんまりしないように」
「はいっ」
行ってらっしゃい、行ってきます。
まるで新婚さんだ。
えへへ、と笑った悟飯は紅潮する頬を止められぬまま。呆れた視線を送るベジータもさっぱり分からん、といった表情をするピッコロにも気付かず、スキップ交じりに予選会場へと向かう。
その背を見送り、
名前
はさて自分も観客席へ、ときびすを返し。
複数の三日月型の目にぶちあたることとなった。
未だ笑い止まぬブルマを背後に従えて、
名前
は赤く染まった頬を隠すように早足で歩く。しかしその後ろにはブルマを初めとするチチ、牛魔王、ヤムチャなどの大会に出場しない面子が付いて来る。
何でやねん。
歩む足を速めながら
名前
は思った。
名前
が足を速めれば後ろの連中も同じ速さで付いて来る。
どうやら
名前
と一緒に観戦するつもりらしい。
しかし後ろの彼女たちは指定席を手に入れているようなのだ。
名前
は立ち見。どう考えても途中で別れるべきなのだが。
「何で付いて来るんです」
「いいじゃない、一緒に見ましょうよ。悟飯君の彼女、興味あるし」
「彼女じゃありません。あと私の席こっちなんで」
「立ち見でしょ?」
ぴろ、とブルマがその細い指に挟んでいるのは
名前
のチケット。ただし入場券。
武道会を座って見るにはこれにもう一枚、観客席のチケットが必要だ。しかし
名前
の小遣いは殆ど本に使ってしまっていて、席代がなかったのだ。
親にも言っていないので代金を借りるわけにもいかず、結局立ち見で妥協した。だから勿論ブルマたちにも言っているわけもなく。
女の勘と言うやつだろうか。百戦錬磨を漂わせるブルマにそれを嗅ぎ取られたのだろうと推測する。
にゃろう、と
名前
は心の中で呟いて、ブルマの指からチケットを奪い返す。あっさり戻ってきたチケットをポケットにねじ込んで、
名前
は興味津々に見つめてくる連中を見つめ返した。
「皆さんは観客席で見られるようなので、私はここで失礼します」
「だから私たちと一緒に見れば座れるでしょ。結構かかるわよ、決勝まで。それに私たちと一緒のほうが向こうからも見つけやすいでしょうし」
「席ありませんから」
「それならマーロンちゃん抱えててちょうだい。お母さんも出場するから
名前
ちゃんが見てくれてた方が助かるわ」
ね、そうしなさい。
悟空に負けず劣らず強引な美人科学者は、
名前
の腕を引っつかむと機嫌よく自分たちの席を探し始める。
こうなったらブルマを止められる人間はいない。
チチは笑って
名前
の背中をぐいぐい押す。ようやくまとまったらしい話し合いに他の仲間も一安心。話し合いと言うか一方的な提案のような気がしなくもないが。
背中を押す力の強さに
名前
は漸く諦めて、後で絶対グレサイぼこる、と心に固く決意した。
名前
が肝っ玉母さん二人に絡まれている頃。
「そうかぁ、悟飯もいよいよ彼女持ちか。くそー、お前等親子はよぉ……」
「
名前
さんは僕のか、か、か、彼女じゃないですよぅ」
恋人いない歴約三〇年のクリリンに絡まれていた。
もっとも今は美人のかみさんと可愛い娘に恵まれているわけなのだが。
つんつくつん、と肘でつつかれ、困った顔で首を振る。もしそうだったならいいのだけれど、と思いつつ。
「……友達です」
今の所。
尻すぼみな声に人の心の機微に敏いクリリンは目尻を和ませる。なんて微笑ましい。
自分が悟飯と同じ年のころはどうだったけ? と思いつつ、そういや戦いと修行に明け暮れて、しかも悟空に先越されたんだった……とちょっと凹む。凹むがしかし、親友の息子、そして長いこと共に戦った仲間として悟飯のことは大切に思っている。
だから出来ればあのちょっと目付きの悪い少女に、悟飯を好きになってもらえればいいと願う。余計なお世話かもしれないが。
「ボクちょっと友だちさがしてきます」
言って駆け出す悟飯を見送り、後ろを歩く悟空の腕をちょいちょいつつく。
「どうだよ親父として。ちょっときつそうな感じだけど可愛い子だったじゃないか」
「? 何がだ?」
「何がって……息子の彼女くらいちゃんとチェックしとけよ」
質問の意図すら分かっていないだろう親友の姿にクリリンはため息を吐いた。流石にもう男女の区別はつくだろうが、ここまで色事に全く興味が向かないというのも多少問題があるように感じる。
「彼女……じゃあ悟飯さっきのやつとケッコンすんのか?」
「お前どーしてそう一足飛びなわけ?」
お知り合いから結婚までの過程をまるっと全てすっ飛ばした発言にクリリンがずっこける。間抜けな会話が勝手に耳に入ってきたベジータもこけかけた。一八号は聞いていないふりでその秀麗な顔を微かに引き攣らせ、無反応なのはピッコロのみ。
「けどよ、悟飯はさっきのオンナノコが好きなんだろ?」
「……お前それ悟飯には言ってやるなよ」
「何でだ?」
「デリカシーってやつの問題だ」
「オラ難しいことよく分かんねぇぞ」
ええいこの駄目親父め。
今や一児の父となったクリリンは親友をじっとり睨みつける。オレはこんな父親にならないぞ、と決意して。
息子のみを持つ父親と娘のみを持つ父親じゃ結構違ったりするものだが、新米パパとしてはそんなことは分からない。もっとも相手が悟空では息子も娘も関係なかったりするのだろうが。
「けどあいつが悟飯の嫁ならオラも嬉しいぞ」
「へ!?」
息子の嫁、という似合わない単語を衒いもなく告げて悟空は笑う。お陰でクリリンは変な声を出してしまった。
「さっきぶつかった時、すげぇいい匂いがしたんだ」
お前それ絶対悟飯に言うなよ。
クリリンは全身の力が抜けていくのを感じた。この男、とんでもない。
他意はないのだろう。それは分かる。
それがどんな匂いだったのかをクリリンは知らない。知ろうとも思わない。ただ純粋に、いい香りがした、と。悟空のことだからどうせ『美味そうな飯の匂い』とかそんなことだろう。
だが。
常識的な感覚を持つ人間がどう思うか。 悟飯としても悟空がそういう人間だということはよくよく知っているだろう。何せ父親だ。この感覚と生まれた時から付き合っている。
しかし、だ。
悟飯は現在恋をしているのだ。しかも桃色片想い。甘酸っぱい青春の日々。
あー羨ましい、などとクリリンが思うことはないが、恋は盲目という単語があることも知っている。
親子同士での殺し合いが珍しくはないサイヤ人であっても、親友がそんなとんでもない事態に陥るのは心優しきクリリンとしてはご免だ。しかもそれが父親の間抜けな発言によるものだなんて。
「お、もうすぐ予選始まるみてーだぞ」
「……そうだな」
気楽に話しかける悟空は自分がどんな発言をしたのかも気付いていない。
深く考えていたらこの男の友人なんぞやっていられないのだ。
そうこうしているうちにパンチマシーンがベジータによって壊されて、本選が始まるまでトランクスと悟天の活躍でも見物してやろうと歩き出す。
未だ長蛇の列が続く中、悟空たちは先ほど友人を探しに行った悟飯を見つけた。その後ろに並んでいるのは勿論ビーデル。
片手を挙げると気付いた悟飯が笑いかけてきた。
軽く挨拶を交わし、クリリンがちょっと肩を落として呟く。
「どーして悟空も悟飯も何もしてねーのに可愛い子が寄ってくんのかなぁ」
「可愛いって、チチか?」
「いや、チチさんもだけど、ブルマさんも初めて会った時は美人と思ったぜ」
今はどっちかっつーと怖いけど。
声には出さずに呟く。壁に耳あり障子に目あり。どころかこれだけ人目があるのだ、迂闊なことを言ってブルマに抓りあげられたくはない。
さらに言えば、悟空の兄はともかく父の側にも美人がいたことを幸いにもクリリンは知らない。
「じゃ、俺たち先にトランクス達の試合見てくるから」
「はい。
……まだかな、予選再開」
悟空たちを見送って、悟飯は未だ準備に時間のかかりそうな予選を慮る。
ベジータがやらかしたなら仕方ないか、と彼の気性を思い出しつつ、彼らは何者だと詰め寄るビーデルに苦笑した。
本当はちょっと残念に思ったのは内緒だ。
自分の実力なら父たちと同じく軽く予選通過するのは分かっている。だから、空いた時間で少しでも長く
名前
と一緒にいたかったのだけれど、この調子では悟天とトランクスの戦いに間に合うかどうかさえも。
「悟天君たちの試合に間に合うといいわね」
「え、あ、あぁ、そうですね」
考えていたことを半ばまで当てられて、悟飯は慌てて頷いた。どうも自分の周囲の女の子は敏くて困る。
ビーデルは
名前
が来ていることを知らないらしい。映画なども一人で見に行くと言っていた彼女だから、聞かれなければ今日何処へ行くだなんて言わないであろうし。
聞かれなければ、どころか聞かれても誤魔化して本当のことを親にさえ言っていないとは悟飯も知らない。
遠くで少年の部開催のアナウンスが流れるのを聞きながら、きっと今頃ブルマに絡まれているであろう
名前
を思った。
ブルマの好きなタイプといえば美形と、もう一つ。
つつくと面白そうな人物だ。
名前
が素直に突付かれる性格でないのは知っているが、だからこそ余計にブルマに面白がられるのだろうとも予想がつく。
実際それは正解で、今現在も膝の上にクリリンと一八号の愛娘を乗せて最強母ちゃんズに左右から絡まれているのだがそこまで悟飯が推察出来るはずもなく。
すぐそこ同じ空の下、
名前
が拳を握り締めていることなど想像もつかなかったりなんたり。
乙女たちと乙女系男子高生、それとちょびっと宇宙規模の密やかなる悪事の種も巻き込み。
天下一武道会、地味に開催。
#DB
#孫悟飯
2025.1.29
No.19
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後悔先に立たずというのはこういうことを言うのだろう、と名前は遠い目をしてみた。その頬が赤く染まっているのはご愛嬌。
これで悟飯の家族仲間から自分に対する印象は確実に『変な人』だ。
どうでもいい人間だったらそう思われようが次の日には存在自体忘れてしまうのだが、悟飯の関係者となると話は別だ。何で? と問われれば友人だからと答えるであろうが、それでも一応進歩はしている。
だからここで気になるのは悟飯の母や父の反応だ。いつの間にか名前の手を再び握り締めている悟天はつまり嫌われてはいないということだろう。
それにだけはちょっと安心して、恐る恐る悟飯の顔を見る。
しかしそこにあったのはサングラスで目が見えないとはいえ、確実に照れ笑いをしているだろうヌケサク面。
一気に脱力した。悩むだけ阿呆くさい。
そもそも悟飯と友人だからと言ってその両親と友人付き合いするわけでない。気負った自分が馬鹿らしく、赤みの引いた頬を苦笑の形に彩る。
そんな姿を見て悟飯は内心『名前さん可愛いです!』と握りこぶしを作った。口にすれば自分が殴られるので言えないが。自分が痛いからというわけでなく(悟飯に身体的ダメージを与えられる地球人など限られている)、殴った名前が確実に手を傷めるので。
名前の指の感触を思い出すたび、筋肉に覆われた巨乳をきゅんきゅん揺らす悟飯としてはそんなことは堪えられない。
「おいご、グレートサイヤマン、そろそろ会場行くか」
少々トリップ気味の悟飯にクリリンが声を掛ける。ここで悟空にでも呼びかけさせれば確実に悟飯の名を呼び、面倒なことをしそうだ。
それを察した気遣いの人に感謝しつつ悟飯は頷いた。
「あ、そうですね。じゃあ、名前さん……行ってきます」
さり気に名前と手を繋いだままの悟天を引き剥がしつつ言う。その姿にブルマがぷすぅ、と笑い混じりの息を洩らした。
「あー……、行ってらっしゃい。怪我あんまりしないように」
「はいっ」
行ってらっしゃい、行ってきます。
まるで新婚さんだ。
えへへ、と笑った悟飯は紅潮する頬を止められぬまま。呆れた視線を送るベジータもさっぱり分からん、といった表情をするピッコロにも気付かず、スキップ交じりに予選会場へと向かう。
その背を見送り、名前はさて自分も観客席へ、ときびすを返し。
複数の三日月型の目にぶちあたることとなった。
未だ笑い止まぬブルマを背後に従えて、名前は赤く染まった頬を隠すように早足で歩く。しかしその後ろにはブルマを初めとするチチ、牛魔王、ヤムチャなどの大会に出場しない面子が付いて来る。
何でやねん。
歩む足を速めながら名前は思った。名前が足を速めれば後ろの連中も同じ速さで付いて来る。
どうやら名前と一緒に観戦するつもりらしい。
しかし後ろの彼女たちは指定席を手に入れているようなのだ。名前は立ち見。どう考えても途中で別れるべきなのだが。
「何で付いて来るんです」
「いいじゃない、一緒に見ましょうよ。悟飯君の彼女、興味あるし」
「彼女じゃありません。あと私の席こっちなんで」
「立ち見でしょ?」
ぴろ、とブルマがその細い指に挟んでいるのは名前のチケット。ただし入場券。
武道会を座って見るにはこれにもう一枚、観客席のチケットが必要だ。しかし名前の小遣いは殆ど本に使ってしまっていて、席代がなかったのだ。
親にも言っていないので代金を借りるわけにもいかず、結局立ち見で妥協した。だから勿論ブルマたちにも言っているわけもなく。
女の勘と言うやつだろうか。百戦錬磨を漂わせるブルマにそれを嗅ぎ取られたのだろうと推測する。
にゃろう、と名前は心の中で呟いて、ブルマの指からチケットを奪い返す。あっさり戻ってきたチケットをポケットにねじ込んで、名前は興味津々に見つめてくる連中を見つめ返した。
「皆さんは観客席で見られるようなので、私はここで失礼します」
「だから私たちと一緒に見れば座れるでしょ。結構かかるわよ、決勝まで。それに私たちと一緒のほうが向こうからも見つけやすいでしょうし」
「席ありませんから」
「それならマーロンちゃん抱えててちょうだい。お母さんも出場するから名前ちゃんが見てくれてた方が助かるわ」
ね、そうしなさい。
悟空に負けず劣らず強引な美人科学者は、名前の腕を引っつかむと機嫌よく自分たちの席を探し始める。
こうなったらブルマを止められる人間はいない。
チチは笑って名前の背中をぐいぐい押す。ようやくまとまったらしい話し合いに他の仲間も一安心。話し合いと言うか一方的な提案のような気がしなくもないが。
背中を押す力の強さに名前は漸く諦めて、後で絶対グレサイぼこる、と心に固く決意した。
名前が肝っ玉母さん二人に絡まれている頃。
「そうかぁ、悟飯もいよいよ彼女持ちか。くそー、お前等親子はよぉ……」
「名前さんは僕のか、か、か、彼女じゃないですよぅ」
恋人いない歴約三〇年のクリリンに絡まれていた。
もっとも今は美人のかみさんと可愛い娘に恵まれているわけなのだが。
つんつくつん、と肘でつつかれ、困った顔で首を振る。もしそうだったならいいのだけれど、と思いつつ。
「……友達です」
今の所。
尻すぼみな声に人の心の機微に敏いクリリンは目尻を和ませる。なんて微笑ましい。
自分が悟飯と同じ年のころはどうだったけ? と思いつつ、そういや戦いと修行に明け暮れて、しかも悟空に先越されたんだった……とちょっと凹む。凹むがしかし、親友の息子、そして長いこと共に戦った仲間として悟飯のことは大切に思っている。
だから出来ればあのちょっと目付きの悪い少女に、悟飯を好きになってもらえればいいと願う。余計なお世話かもしれないが。
「ボクちょっと友だちさがしてきます」
言って駆け出す悟飯を見送り、後ろを歩く悟空の腕をちょいちょいつつく。
「どうだよ親父として。ちょっときつそうな感じだけど可愛い子だったじゃないか」
「? 何がだ?」
「何がって……息子の彼女くらいちゃんとチェックしとけよ」
質問の意図すら分かっていないだろう親友の姿にクリリンはため息を吐いた。流石にもう男女の区別はつくだろうが、ここまで色事に全く興味が向かないというのも多少問題があるように感じる。
「彼女……じゃあ悟飯さっきのやつとケッコンすんのか?」
「お前どーしてそう一足飛びなわけ?」
お知り合いから結婚までの過程をまるっと全てすっ飛ばした発言にクリリンがずっこける。間抜けな会話が勝手に耳に入ってきたベジータもこけかけた。一八号は聞いていないふりでその秀麗な顔を微かに引き攣らせ、無反応なのはピッコロのみ。
「けどよ、悟飯はさっきのオンナノコが好きなんだろ?」
「……お前それ悟飯には言ってやるなよ」
「何でだ?」
「デリカシーってやつの問題だ」
「オラ難しいことよく分かんねぇぞ」
ええいこの駄目親父め。
今や一児の父となったクリリンは親友をじっとり睨みつける。オレはこんな父親にならないぞ、と決意して。
息子のみを持つ父親と娘のみを持つ父親じゃ結構違ったりするものだが、新米パパとしてはそんなことは分からない。もっとも相手が悟空では息子も娘も関係なかったりするのだろうが。
「けどあいつが悟飯の嫁ならオラも嬉しいぞ」
「へ!?」
息子の嫁、という似合わない単語を衒いもなく告げて悟空は笑う。お陰でクリリンは変な声を出してしまった。
「さっきぶつかった時、すげぇいい匂いがしたんだ」
お前それ絶対悟飯に言うなよ。
クリリンは全身の力が抜けていくのを感じた。この男、とんでもない。
他意はないのだろう。それは分かる。
それがどんな匂いだったのかをクリリンは知らない。知ろうとも思わない。ただ純粋に、いい香りがした、と。悟空のことだからどうせ『美味そうな飯の匂い』とかそんなことだろう。
だが。
常識的な感覚を持つ人間がどう思うか。 悟飯としても悟空がそういう人間だということはよくよく知っているだろう。何せ父親だ。この感覚と生まれた時から付き合っている。
しかし、だ。
悟飯は現在恋をしているのだ。しかも桃色片想い。甘酸っぱい青春の日々。
あー羨ましい、などとクリリンが思うことはないが、恋は盲目という単語があることも知っている。
親子同士での殺し合いが珍しくはないサイヤ人であっても、親友がそんなとんでもない事態に陥るのは心優しきクリリンとしてはご免だ。しかもそれが父親の間抜けな発言によるものだなんて。
「お、もうすぐ予選始まるみてーだぞ」
「……そうだな」
気楽に話しかける悟空は自分がどんな発言をしたのかも気付いていない。
深く考えていたらこの男の友人なんぞやっていられないのだ。
そうこうしているうちにパンチマシーンがベジータによって壊されて、本選が始まるまでトランクスと悟天の活躍でも見物してやろうと歩き出す。
未だ長蛇の列が続く中、悟空たちは先ほど友人を探しに行った悟飯を見つけた。その後ろに並んでいるのは勿論ビーデル。
片手を挙げると気付いた悟飯が笑いかけてきた。
軽く挨拶を交わし、クリリンがちょっと肩を落として呟く。
「どーして悟空も悟飯も何もしてねーのに可愛い子が寄ってくんのかなぁ」
「可愛いって、チチか?」
「いや、チチさんもだけど、ブルマさんも初めて会った時は美人と思ったぜ」
今はどっちかっつーと怖いけど。
声には出さずに呟く。壁に耳あり障子に目あり。どころかこれだけ人目があるのだ、迂闊なことを言ってブルマに抓りあげられたくはない。
さらに言えば、悟空の兄はともかく父の側にも美人がいたことを幸いにもクリリンは知らない。
「じゃ、俺たち先にトランクス達の試合見てくるから」
「はい。
……まだかな、予選再開」
悟空たちを見送って、悟飯は未だ準備に時間のかかりそうな予選を慮る。
ベジータがやらかしたなら仕方ないか、と彼の気性を思い出しつつ、彼らは何者だと詰め寄るビーデルに苦笑した。
本当はちょっと残念に思ったのは内緒だ。
自分の実力なら父たちと同じく軽く予選通過するのは分かっている。だから、空いた時間で少しでも長く名前と一緒にいたかったのだけれど、この調子では悟天とトランクスの戦いに間に合うかどうかさえも。
「悟天君たちの試合に間に合うといいわね」
「え、あ、あぁ、そうですね」
考えていたことを半ばまで当てられて、悟飯は慌てて頷いた。どうも自分の周囲の女の子は敏くて困る。
ビーデルは名前が来ていることを知らないらしい。映画なども一人で見に行くと言っていた彼女だから、聞かれなければ今日何処へ行くだなんて言わないであろうし。
聞かれなければ、どころか聞かれても誤魔化して本当のことを親にさえ言っていないとは悟飯も知らない。
遠くで少年の部開催のアナウンスが流れるのを聞きながら、きっと今頃ブルマに絡まれているであろう名前を思った。
ブルマの好きなタイプといえば美形と、もう一つ。
つつくと面白そうな人物だ。
名前が素直に突付かれる性格でないのは知っているが、だからこそ余計にブルマに面白がられるのだろうとも予想がつく。
実際それは正解で、今現在も膝の上にクリリンと一八号の愛娘を乗せて最強母ちゃんズに左右から絡まれているのだがそこまで悟飯が推察出来るはずもなく。
すぐそこ同じ空の下、名前が拳を握り締めていることなど想像もつかなかったりなんたり。
乙女たちと乙女系男子高生、それとちょびっと宇宙規模の密やかなる悪事の種も巻き込み。
天下一武道会、地味に開催。
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