かかあ天下
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テニスの王子様
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No.31
DB
救いの言葉
「大の男がベソ泣きしてんなよ」
「だって、だって、うぅぅぇぇぇぇぇええ」
名前
はため息を吐いた。
自分の胸に縋って泣くつんつん頭を優しく撫でてやる。余計に泣き声が高くなった。仕方ないので手を下ろす。今度は声こそ出さないものの、こちらまでつられて泣きそうになるような目で見つめてくる。
どないせーっちゅうねん。
思わず愚痴も零れようというもの。
憐憫の眼差しを寄越すくらいなら助けて欲しいものだ。
名前
は少し遠巻きに避難しているトランクスを睨みつけた。
死んだ。
見事なまでに死んだ。死んだことにすら気付かないうちに。悟飯達がブゥに吸収された。悟空とベジータが合体したのも見届けた。その合体お父さんたちが優勢だったのは確かだったのだが、気付けばブゥがやたらと縮み、気付けばあの世の入り口に立っていた。
「僕、まもっ、……~~~~~~~っ!」
ごめんなさい。ごめんなさい。死なせてしまって。死んでしまって。
何度も謝られた。
ぶっちゃけ
名前
には死んだ実感がない。それは向こうでちょっとしょんぼりしているトランクスたちもだろう。ピッコロだけは何を考えているのか分からない表情で黙り込んでいるが。
「つか、マジで死んでんだ」
こんなに暖かいのに。
名前
は悟飯を抱きしめたままの両手を見つめた。天に向かって立っている黒髪がちょっと邪魔だったが。
いい所まではいったのだ。後もう少し、あと一息で魔人ブゥを倒せるというところまで。
どっこい逆転一発どんでん返し。悟飯に敵わないと悟ったブゥはわざとトランクス達をフュージョンさせ、ピッコロとまとめて吸収した。お陰でブゥの能力はうなぎ登り、デンデに助けられながらもブゥを倒すことも出来ずにただ嬲られるだけ。
悟飯はぐすん、と鼻を啜った。
魔人ブゥに蹴り飛ばされた。その拍子に視界に入った
名前
の顔。蒼白とも呼べる白い肌の中で、唇の赤が妙に印象的だった。
だから死んだんだ。
がくりと身体から力が抜ける。
名前
が慌てて支えてくれるが、それすらも悟飯を救ってくれはしない。
戦ってる最中に、油断じゃないけど、気を逸らして。お陰で死亡フラグ乱立で最悪のシナリオへと一直線。ブゥのピンクの肉片らしきものに囲まれた時、悟飯の頭を占めたのは
名前
の安否。と、
名前
が死んだらまた会える、だなんて。
「僕、最悪です……」
願わなければいけなかったのは
名前
の無事。悟空の勝利。なのに、悟飯があの世の入り口で呆然としたのと時を置かずに
名前
の姿が現れて感じたのは喜び。
また
名前
の側にいられる、と。それだけを思った。そんな資格などありはしないのに。
ここがあの世なのだとピッコロに聞かされても
名前
の表情は変わらなかった。きっと実感が湧かないんだろう。悟飯もそうだった。
「んで、これからどうすりゃいいんだ?」
「そうだな……とりあえず閻魔の所にでも行くか」
名前
の質問にピッコロが答える。どうやら泣いてばかりの悟飯は無視することに決めたらしい。
「マジで存在するんですね、閻魔大王」
「昨日今日は大忙しだろう」
「魔人ブゥ?」
「ああ」
あれだけ死人が大量生産されればさぞかし閻魔大王も大童だろう。これから行けば分かることだが。
「地球どうなっちゃったんだろ……」
トランクスが呟く。
名前
は不安げな顔で見つめてくる子供を見返した。隣では悟天も似たような顔をしている。
八歳と七歳だ。両親は死んで、必死で強くなったと思ったらその敵はもっと強くて、それでも皆の頼みの綱は自分たち。それでやっと頼りになる兄貴分が来てくれたと思ったらみんなまとめて死んでしまって。
子供は苦手なのだけれど。
名前
は頭の片隅でそんなことを考えながら、すい、と右手を伸ばしてトランクスの頭を撫でた。見た目どおりサラサラの髪が
名前
の指に絡みつく。これは母親譲りだろう。ブルマの艶やかな髪を思い出す。朝のブローが大嫌いな
名前
としてはちょっと羨ましいなと思ったりもしたのだ。
優しく撫でられ、トランクスはぽろりと涙を零した。今まで我慢していたのだ。精神と時の部屋でも泣きべそをかく悟天を宥めすかしてブゥを倒す為の特訓をして。年上だから。しっかりしないと。そう思って。ずっと我慢した。のに。
名前
の手が簡単にトランクスの涙腺をぶち壊す。
「あ、う、うぅ、ぇ、
名前
姉ちゃぁぁぁああああん!!」
「ぅおおおい涙は兎も角涎と鼻水は付けんなぁぁぁあああ!!」
「ああ! トランクスこら
名前
さんは僕の」
「お前の何だってんだつーか泣いてたんじゃねーのかテメぇ!」
「泣いてたけどだってトランクスが僕
名前
さん独り占めしてたのに!!」
ガキが二人。
名前
は頭痛のする頭を抱えた。死人でも頭痛がするらしい。
名前
の胸に飛び込んできたトランクスは見事に悟飯を押しのけて、その目から溢れる涙を
名前
の服に押し付ける。そんなトランクスを慌てて悟飯が引き剥がそうとするが、
名前
にぴったり引っ付いたトランクスを引っ張れば
名前
もまた痛がるので声を荒げるだけ。
大人気ない。史上最強に大人気ない。
呆れる
名前
に終いには悟天まで飛びついてきてその場は大混乱。止める気無しのピッコロは遠い目で閻魔宮を眺めている。
結局
名前
は涙と涎と鼻水まみれになった。
そして。
「……この状況はどう判断すればいいんだ?」
「ドラゴンボールだろう」
気付けば元の荒野に放り出されていた。右腕にはトランクス、左腕には悟天、背中には悟飯がへばりついている。
名前
の質問に答えてくれたのはピッコロだ。
「い、きかえ、った?」
「らしいな。……しかしブゥの気は消えとらんぞ」
ピッコロがいぶかしげに呟く。
名前
は気など感じられないが、ピッコロが言うならそうなのだろう。気付けば今まで泣いていた三人も戦士の顔になっている。
名前
に引っ付いたままだが。
ドラゴンボールは後数ヶ月先にならないと使えないんじゃないか。そう思いながらも悟飯に抱き込まれるまま息を詰めるしかない。 何しろブゥは生きているのだ。何時また殺されるか分からない。
しかしすぐに聞こえた声で疑問は解ける。
脳裏に響くベジータの声に戸惑いながら、続いて聞こえた悟空の声に悟飯たちが手を頭上に上げた。
名前
も続けて手を上げるが、一瞬にしてその場に崩れ落ちる。
「
名前
さん!?」
「いや、ほら、あれだ、……体力ねーよ悪かったな」
一気に元気を吸い取られていた。
「あれか、元気玉っつーのはみんなの元気を吸い取って作る極悪玉か」
「え、いやその表現はどうかと思いますけど……本来の元気玉は少しずつ気を分けてもらうだけでも充分なんです。
だから、今回はここまでしないと勝てない強敵……ってこと、です」
言う悟飯は未だ手を掲げたままだ。
名前
は悟飯を見上げ、勢いを付けて立ち上がる。ついでに悟飯に抱きついた。
「へぁっ!?
名前
さん、なに、」
「支えてろ」
告げて、もう一度片手を掲げる。悟飯は慌てて
名前
の身体を右手で支えた。左手は空に向けたまま。
ぐんぐん力を吸い取られるのが分かる。少しずつ息も荒くなってきた。脂汗もじんわり噴出している。それでも
名前
は手を下ろさない。
出来ることがあるならやってやる。
名前
はぎり、と歯を食いしばった。悟飯の心配そうな視線を感じるが、敢えて無視してやる。というか構っている余裕がない。
先ほどベジータは地球の人間全員に語りかけていた。つまり、全員分のフルパワーがなければブゥを倒すことが出来ないということだ。
化け物だ。とんでもない化け物なのだ、ブゥという魔人は。
そして悟飯はそんな化け物相手にタイマンを張っていた。その間
名前
は何も出来ずに見ているだけ。それすら敵わず最後には殺されてしまったりもした。
もし今
名前
が全ての力を悟空の言う元気玉に注ぐことで、悟飯の負担が少しでも減るなら。安いもんだ。そう思った。支えさせている現実は兎も角、だ。そんなのブゥが消えた後でお菓子でも作ってやればフィフティフィフティ、帳消しだろう。
「
名前
さん」
「おい、見ろ」
悟飯が
名前
に手を下ろさせようと声を掛ける。が、その前にピッコロが空を示した。
「なに……?」
「元気玉だ。完成したな」
光の球が空へと飛んで行くのが見えた。
名前
はよろけながら手を下ろす。次々に大きな光が空に現れ、宇宙へと消えていく。今から悟空の元へ向かうのだろう。
「真昼の流れ星みてー」
荒い息の中、
名前
がぼんやりと感想を声にする。悟飯は両手を使って
名前
を支えながら「そうですね」と笑った。
後は、悟空に任せるだけだ。
結局最後まで悟空に頼ってしまった。これでは悟空がいなければ何も出来ないと言われても仕方ないかもしれない。
「おい、なにしょぼくれてんだ」
名前
が二割増で鋭くなった目付きで悟飯を小突く。実際は瞼を開けているのも厳しいだけだが。
「え、あー、いえ。また、お父さんに任せちゃったなぁと」
「あ? いいじゃねーか。親には甘えてやれよ」
そっちのが喜ぶだろう。言って、
名前
は目を閉じた。
「私はお前に助けられたよ」
今も。さっきも。銀行でも。物理的にも精神的にも。悟飯がいてくれることでどれだけ楽になったか知れない。それこそ悟空の存在以上に。
回らぬ舌でそう告げる。悟飯の息を呑む声が聞こえたが、
名前
の耳は捉え切れなかった。ただ、悟飯に抱きしめられたことだけは感じ取れた。
引き潮のように意識が薄れていく。目を閉じたら眠くなった。結構体力の限界だったらしい。
じわじわと侵蝕され、そして意識が闇に沈んだ頃。
「僕、
名前
さんが好きです」
名前
の寝息を確認し、悟飯の低い声が風に消えた。
#DB
#孫悟飯
2025.1.29
No.31
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「だって、だって、うぅぅぇぇぇぇぇええ」
名前はため息を吐いた。
自分の胸に縋って泣くつんつん頭を優しく撫でてやる。余計に泣き声が高くなった。仕方ないので手を下ろす。今度は声こそ出さないものの、こちらまでつられて泣きそうになるような目で見つめてくる。
どないせーっちゅうねん。
思わず愚痴も零れようというもの。
憐憫の眼差しを寄越すくらいなら助けて欲しいものだ。名前は少し遠巻きに避難しているトランクスを睨みつけた。
死んだ。
見事なまでに死んだ。死んだことにすら気付かないうちに。悟飯達がブゥに吸収された。悟空とベジータが合体したのも見届けた。その合体お父さんたちが優勢だったのは確かだったのだが、気付けばブゥがやたらと縮み、気付けばあの世の入り口に立っていた。
「僕、まもっ、……~~~~~~~っ!」
ごめんなさい。ごめんなさい。死なせてしまって。死んでしまって。
何度も謝られた。
ぶっちゃけ名前には死んだ実感がない。それは向こうでちょっとしょんぼりしているトランクスたちもだろう。ピッコロだけは何を考えているのか分からない表情で黙り込んでいるが。
「つか、マジで死んでんだ」
こんなに暖かいのに。名前は悟飯を抱きしめたままの両手を見つめた。天に向かって立っている黒髪がちょっと邪魔だったが。
いい所まではいったのだ。後もう少し、あと一息で魔人ブゥを倒せるというところまで。
どっこい逆転一発どんでん返し。悟飯に敵わないと悟ったブゥはわざとトランクス達をフュージョンさせ、ピッコロとまとめて吸収した。お陰でブゥの能力はうなぎ登り、デンデに助けられながらもブゥを倒すことも出来ずにただ嬲られるだけ。
悟飯はぐすん、と鼻を啜った。
魔人ブゥに蹴り飛ばされた。その拍子に視界に入った名前の顔。蒼白とも呼べる白い肌の中で、唇の赤が妙に印象的だった。
だから死んだんだ。
がくりと身体から力が抜ける。名前が慌てて支えてくれるが、それすらも悟飯を救ってくれはしない。
戦ってる最中に、油断じゃないけど、気を逸らして。お陰で死亡フラグ乱立で最悪のシナリオへと一直線。ブゥのピンクの肉片らしきものに囲まれた時、悟飯の頭を占めたのは名前の安否。と、名前が死んだらまた会える、だなんて。
「僕、最悪です……」
願わなければいけなかったのは名前の無事。悟空の勝利。なのに、悟飯があの世の入り口で呆然としたのと時を置かずに名前の姿が現れて感じたのは喜び。
また名前の側にいられる、と。それだけを思った。そんな資格などありはしないのに。
ここがあの世なのだとピッコロに聞かされても名前の表情は変わらなかった。きっと実感が湧かないんだろう。悟飯もそうだった。
「んで、これからどうすりゃいいんだ?」
「そうだな……とりあえず閻魔の所にでも行くか」
名前の質問にピッコロが答える。どうやら泣いてばかりの悟飯は無視することに決めたらしい。
「マジで存在するんですね、閻魔大王」
「昨日今日は大忙しだろう」
「魔人ブゥ?」
「ああ」
あれだけ死人が大量生産されればさぞかし閻魔大王も大童だろう。これから行けば分かることだが。
「地球どうなっちゃったんだろ……」
トランクスが呟く。名前は不安げな顔で見つめてくる子供を見返した。隣では悟天も似たような顔をしている。
八歳と七歳だ。両親は死んで、必死で強くなったと思ったらその敵はもっと強くて、それでも皆の頼みの綱は自分たち。それでやっと頼りになる兄貴分が来てくれたと思ったらみんなまとめて死んでしまって。
子供は苦手なのだけれど。名前は頭の片隅でそんなことを考えながら、すい、と右手を伸ばしてトランクスの頭を撫でた。見た目どおりサラサラの髪が名前の指に絡みつく。これは母親譲りだろう。ブルマの艶やかな髪を思い出す。朝のブローが大嫌いな名前としてはちょっと羨ましいなと思ったりもしたのだ。
優しく撫でられ、トランクスはぽろりと涙を零した。今まで我慢していたのだ。精神と時の部屋でも泣きべそをかく悟天を宥めすかしてブゥを倒す為の特訓をして。年上だから。しっかりしないと。そう思って。ずっと我慢した。のに。
名前の手が簡単にトランクスの涙腺をぶち壊す。
「あ、う、うぅ、ぇ、名前姉ちゃぁぁぁああああん!!」
「ぅおおおい涙は兎も角涎と鼻水は付けんなぁぁぁあああ!!」
「ああ! トランクスこら名前さんは僕の」
「お前の何だってんだつーか泣いてたんじゃねーのかテメぇ!」
「泣いてたけどだってトランクスが僕名前さん独り占めしてたのに!!」
ガキが二人。名前は頭痛のする頭を抱えた。死人でも頭痛がするらしい。
名前の胸に飛び込んできたトランクスは見事に悟飯を押しのけて、その目から溢れる涙を名前の服に押し付ける。そんなトランクスを慌てて悟飯が引き剥がそうとするが、名前にぴったり引っ付いたトランクスを引っ張れば名前もまた痛がるので声を荒げるだけ。
大人気ない。史上最強に大人気ない。
呆れる名前に終いには悟天まで飛びついてきてその場は大混乱。止める気無しのピッコロは遠い目で閻魔宮を眺めている。
結局名前は涙と涎と鼻水まみれになった。
そして。
「……この状況はどう判断すればいいんだ?」
「ドラゴンボールだろう」
気付けば元の荒野に放り出されていた。右腕にはトランクス、左腕には悟天、背中には悟飯がへばりついている。名前の質問に答えてくれたのはピッコロだ。
「い、きかえ、った?」
「らしいな。……しかしブゥの気は消えとらんぞ」
ピッコロがいぶかしげに呟く。
名前は気など感じられないが、ピッコロが言うならそうなのだろう。気付けば今まで泣いていた三人も戦士の顔になっている。名前に引っ付いたままだが。
ドラゴンボールは後数ヶ月先にならないと使えないんじゃないか。そう思いながらも悟飯に抱き込まれるまま息を詰めるしかない。 何しろブゥは生きているのだ。何時また殺されるか分からない。
しかしすぐに聞こえた声で疑問は解ける。
脳裏に響くベジータの声に戸惑いながら、続いて聞こえた悟空の声に悟飯たちが手を頭上に上げた。
名前も続けて手を上げるが、一瞬にしてその場に崩れ落ちる。
「名前さん!?」
「いや、ほら、あれだ、……体力ねーよ悪かったな」
一気に元気を吸い取られていた。
「あれか、元気玉っつーのはみんなの元気を吸い取って作る極悪玉か」
「え、いやその表現はどうかと思いますけど……本来の元気玉は少しずつ気を分けてもらうだけでも充分なんです。
だから、今回はここまでしないと勝てない強敵……ってこと、です」
言う悟飯は未だ手を掲げたままだ。
名前は悟飯を見上げ、勢いを付けて立ち上がる。ついでに悟飯に抱きついた。
「へぁっ!? 名前さん、なに、」
「支えてろ」
告げて、もう一度片手を掲げる。悟飯は慌てて名前の身体を右手で支えた。左手は空に向けたまま。
ぐんぐん力を吸い取られるのが分かる。少しずつ息も荒くなってきた。脂汗もじんわり噴出している。それでも名前は手を下ろさない。
出来ることがあるならやってやる。
名前はぎり、と歯を食いしばった。悟飯の心配そうな視線を感じるが、敢えて無視してやる。というか構っている余裕がない。
先ほどベジータは地球の人間全員に語りかけていた。つまり、全員分のフルパワーがなければブゥを倒すことが出来ないということだ。
化け物だ。とんでもない化け物なのだ、ブゥという魔人は。
そして悟飯はそんな化け物相手にタイマンを張っていた。その間名前は何も出来ずに見ているだけ。それすら敵わず最後には殺されてしまったりもした。
もし今名前が全ての力を悟空の言う元気玉に注ぐことで、悟飯の負担が少しでも減るなら。安いもんだ。そう思った。支えさせている現実は兎も角、だ。そんなのブゥが消えた後でお菓子でも作ってやればフィフティフィフティ、帳消しだろう。
「名前さん」
「おい、見ろ」
悟飯が名前に手を下ろさせようと声を掛ける。が、その前にピッコロが空を示した。
「なに……?」
「元気玉だ。完成したな」
光の球が空へと飛んで行くのが見えた。名前はよろけながら手を下ろす。次々に大きな光が空に現れ、宇宙へと消えていく。今から悟空の元へ向かうのだろう。
「真昼の流れ星みてー」
荒い息の中、名前がぼんやりと感想を声にする。悟飯は両手を使って名前を支えながら「そうですね」と笑った。
後は、悟空に任せるだけだ。
結局最後まで悟空に頼ってしまった。これでは悟空がいなければ何も出来ないと言われても仕方ないかもしれない。
「おい、なにしょぼくれてんだ」
名前が二割増で鋭くなった目付きで悟飯を小突く。実際は瞼を開けているのも厳しいだけだが。
「え、あー、いえ。また、お父さんに任せちゃったなぁと」
「あ? いいじゃねーか。親には甘えてやれよ」
そっちのが喜ぶだろう。言って、名前は目を閉じた。
「私はお前に助けられたよ」
今も。さっきも。銀行でも。物理的にも精神的にも。悟飯がいてくれることでどれだけ楽になったか知れない。それこそ悟空の存在以上に。
回らぬ舌でそう告げる。悟飯の息を呑む声が聞こえたが、名前の耳は捉え切れなかった。ただ、悟飯に抱きしめられたことだけは感じ取れた。
引き潮のように意識が薄れていく。目を閉じたら眠くなった。結構体力の限界だったらしい。
じわじわと侵蝕され、そして意識が闇に沈んだ頃。
「僕、名前さんが好きです」
名前の寝息を確認し、悟飯の低い声が風に消えた。
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