□2008年8月□

2008.08.19

 

恐怖

 

それは新宿のコマ劇前で友人と待ち合わせをしている時のことでした。

 

「あの〜、すみません!」

 

声を掛けてきたのは結構軽そうな感じの見知らぬ男でした。

ああ、これは今巷で大人気のカツアゲというやつだな、

お金ないですって言ってもじゃあジャンプしてみろよとか言われるんだろうな、

それでポッケに入れてあった小銭がチャリって鳴っちゃって、

あるじゃねえかって言われて殴られるんだろうな、

だったら最初から素直にお金を差し出した方がいいな、

そう思った俺はこういう時のためにと準備してあった、

小額のお金を入れてある予備用の財布に手を掛けました。

これが二浪の知恵というやつです。

 

「ホストに興味ありませんか?」

 

どうやらカツアゲではなかったようです。

しかしこの男、セミの裏側のような顔をしていることで有名な俺を、

そんな華やかな仕事に勧誘するとは何を考えているのでしょう。

 

「いえ、顔面が不自由だから無理です」

 

すると男はこう言葉を続けました。

 

「充分カッコイイから勧誘したんですよ!」

 

以前、女の子にプリクラを撮ろうと誘った際に、

全力で嫌がられた俺がカッコイイはずなどありません。

見え透いた嘘を言うだなんて、

この人のノルマはどれだけ厳しいのでしょうか。

 

「いやでも空気を読む能力も不自由なんで無理です」

 

空気が読めないなんてホストとしては致命的です!

さすがにこれ以上は何も言ってくるはずがない。

しかしそれは甘かったのです。

 

「むしろそういう人大歓迎ですよ!」

 

 

ええっ!!

 

なんと手ごわい奴でしょう!

 

「しかもホストになれば、いろんな女の子とヤリ放題ですよ!

魅力的じゃないですか?!」

 

なかなか引き下がってくれません。

これはどうすればちょっと面白く上手く断れるかを考えなくてはなりません。

そこで俺は閃きました。

 

「いや、魅力感じないですね、

 

 

俺、実はゲイなんで」

 

 

「えっ・・・・・・」

 

 

男、絶句です!

さすがにこれ以上何も言って来るまい。

そう思った俺に、3秒ほどの沈黙の後、男はこう言ったのです。

 

 

「・・・・・・僕もです」

 

 

ダッシュで逃げました。

膝が震えていました。

 

 

 

8月1日

 

苦渋の選択

 

先日のことです。

突然、俺の携帯が鳴り出しました。

液晶を見てみると、そこに表示されたのは

予備校で知り合った女の子の名前でした。

ちなみにこの女の子、ただの女の子ではありません。

 

女子高生です!

 

そう、いわゆるJKってやつです!

そんな普段あまり関わりのない人種から電話がかかってきて、

嬉しくないはずがありません。

どんな用なのだろうと逸る心を抑え、電話に出ました。

 

「はい、俺ですけど」

 

「お久しぶりです、最近どーですかー?」

 

そんな感じで5分ほど世間話をした後、

JKの口からこんな言葉が飛び出しました。

 

「今度の土曜日って先輩、暇ですか?」

 

俺らくらいの若者が、夏のこの時期の土曜日に異性を誘う理由、

それはおそらく花火大会のお誘いでしょう。

そんなことはいくら俺がモテないといえども見当はつきます。

 

「受験生だから暇ではないけど、まあ一応予定は空いてるよ。

 

それが何か?」

 

 

「だったら花火大会行きましょうよ!」

 

やはり思った通りです!

しかしここで喜んではいけません。

少し優位に立つためにも、

二浪の余裕というものを見せなければなりません。

 

「うーん、息抜きもたまには必要だし、

 

まあ別に構わないかな」

 

 

「やった、約束ですよ!」

 

そんな感じで待ち合わせなどについても決めたところ、

最後にJKは驚くべきことを言ってきました。

 

 

「浴衣と制服、どっちがいいですか?」

 

 

WHAT!?

 

 

この子は何を言っているのでしょう!

いくら予備校内でどうやら変態らしいという噂が流れているとはいえ、

俺を制服フェチと決め付けるようなこの発言は耳を疑います。

そう思った俺は、このJKにこう言ってやりました。

 

 

「どうせだから制服着てきて!」

 

 

・・・・・・・・・。

 

 

いやだって制服の女の子とデートできる機会ってもう無さそうだし!!

ちなみにJKは、冗談で言ったのにマジで?!みたいな反応をしていました。

 

 

 

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