聞きなれた数人の男の泣き声。多数の女の喘ぎ声。職員会議で先生はみんな職員室に引っ込んでいるのをいいことに、堂々と教室を使っての強姦。まさか、助けようとは考えない。輪に加わろうとも考えない。おかしな学校。おかしな空気に呑まれたくない。だから、目くじら立てられないよう大人しく、交友も狭い範囲に収めて、行為の起こっていそうな部屋に近付かずに、いたのに。それでも聞こえてくる喚声嬌声も聞き流していたのに、試練。机のなかの期限が明日の白紙のプリント。取りに入れば心地の悪い雰囲気、視線は必至。性欲を持て余してなんかいないのに、共生を無意識に重んじる女の子たちに誘われ断ったら、もしかして問題が起こるかもしれない。扉の前で考えていたけど、やっぱりやめるべきだ。さっさと帰ろうと、ふっと踵をかえそうとすると、
「うわっ! び、びっくりした・・・。・・・・不和さん?」
「そうよ。第一回ミス金太郎饅まんじゅうの不和則子よ」
ミス金太郎まんじゅうの不和さん。長く波うつ髪がおかっぱに切られて、さらにミスとしての磨きがかかっている。次のミスも狙えるくらい美人でおかっぱが似合っている。
「あ、教室いま、女の子たちが使ってるから、入りにくいけど・・・」
なにに、なんて態々言わなくても伝わる。
「あらそうなの」
「うん。じゃあ、私は帰るね」
「え!? ちょっ、ちょっと待ちなさい!」
大きい声を出したら、事に夢中になってるであろう女子に気付かれてしまう! ・・・焦ったところでそれについては構わないことに気付く。他の生徒の声が聞こえたくらいでここの女子等が気に留めることはない。私はただ顔を見られなければいい。教室に入らないのは生生しい光景と臭い、それと顔を見られないため。印象が悪くなるだけで、おかしな団結の外に構えている人間としては立場が危うくなることもある。回避しなければ、いけない。それだけ。
「なにかな、不和さん」
「い、一緒に帰ってあげないこともないわ!」
「わたしと?」
「そう! あたしと帰れるなんてレアなんだからねっっ」
不和さんと親しい覚えはないのに、どうして誘われたのか。その日は一緒に帰ったのだけれど、校門を過ぎたところで道が分かれてしまい、一緒に帰ったといえるのか、考えてしまう下校となった。
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