自身の三倍ほどもある大きなベッドを独占したベジータは、 ジーンズだけを身にまとった姿で小さく満足げな笑いを漏らした。 顔を寄せれば太陽の匂いが鼻をくすぐる、清潔なふかふかとした布団に寝そべり、 手が届く範囲に必要なものと忠実な下僕を並べるのは、 幼いころから彼が慣れ親しんできた生活スタイルなのだ。
しかし否が応でも目に入るベジータの白い背中には いくつもの擦過傷とみみず腫れが走っており、 その痛々しさに見る者の眉を思わずしかめさせるほどだった。
「・・・カカロット、水。」
「・・・・・分かったよ。」
言葉少なに己の要求だけを述べるベジータに、 下僕、否カカロットは小さくいらえを返し、苦みばしった顔でその重い腰を上げた。 唸りをあげ、汗と精液でぐちゃぐちゃになってしまったスーツを洗う 洗濯機にちらりと一瞥を与え、小さく溜め息を吐く。 帰宅してからずっとこの調子なのだ。 それでも彼の命令を拒否できない状況に陥らせた 自分の犯してしまった罪に、カカロットは小さく舌を鳴らした。
「・・・ほら。」
「氷は?」
「ったく一回で言えよな、一回で。」
ただ尽きることの無いベジータの要求に いい加減嫌気がさしてきているのも、事実なのだ。 しかし興奮ではね上がりそうになった気のせいでバシャバシャと揺れる 水を目にして、無意識に感情の高ぶりを抑えていた自分に気づき、 カカロットは諦めの混じった苦笑をこぼした。






ドンと少し大きな音を立てて、氷を入れなおしたコップをサイドテーブルに乗せても そ知らぬ顔で読書を続けるベジータの姿に、さすがにピクリと眉が動く。 それでも必死で己を静めている下僕に、ベジータは新たな要求を突きつけたのだった。
「・・・カカロット。」
「まだ何かあんのかよ。」
「・・・・背中が痛い。」
「何でも言ってクダサイ。」
「水がこぼれた。」
「ああそう。」
「タオル。」
「・・・・・・分かったよ。」
どんな育て方しやがったんだと、名前すら知らぬベジータの両親に 悪態をつきながらもタオルを持ってきてやったカカロットの目に、 今更ながらさらけ出された彼の背中が飛び込んできた。 一度意識してしまえば、痛々しさしか感じられなかった赤黒いみみず腫れも、 快楽を引き出そうとベジータの身の上でうごめく淫猥な生物に見えてくる。
煌々(こうこう)と真白い光を放つ蛍光灯が照らすグロテスクな情景に、 カカロットは思わずごくりと唾を飲み込んでいた。 手にしたタオルをベッドに投げ捨て、自分の持ってきたコップを掴み、氷を口に含む。 そのままわずかに火照るベジータの背中に、歯で挟んだそれを滑らせた。
「・・ひぁっ!い、いきなり何するんだ!!」
「召使いが、ご主人様の下の世話もイタシマスってな。」
「・・・・ハッ、ぁ・・・げぼく、のくせに・・・たいど、んっ・・・・でかい、ぞっ。」
「そっちの方が好みだろ。」
すっかり液化してしまった氷を、くちゅくちゅと音を立てながらすする。 時折思い出したように甘く傷を噛むと、ベジータは背を反らしながら 痛みとも快感ともつかぬ感覚に堪えた。
「あぁっ・・・っく、ほん、とに・・・・ぁん、するの、か・・・?」
「・・・・いや、今日はもうしねぇよ。」
「・・・え?」
「傷、付けちまったからな。」
不思議そうな顔で振り返ったベジータの鼻の頭に そっとキスを落とし、微笑みを浮かべた。 眉間にしわを寄せ真意をはかろうとこちらを窺うベジータの身体を、 背中の傷に障らぬよう抱きしめ、逆立った髪を梳いてやる。
「マジだって。それに今日は、帰らねぇで一緒にいてやる。」
「・・・チチに、なんて言うんだ?」
「心配すんなよ。これでも言い訳は腐るほどあるんだ。」
「・・・・・・バカロット。」
軽い口づけを交し寄り添って眠る二人を、 中空にぽっかりと浮かんだ月だけが静かに眺めていた。






実は一度書いてみたかったんです、後日談v でもやっぱり難しいですねぇ。適度な長さが分かりません。
ちなみにタイトルは、You make me crazyの方が貴様が俺を狂わせる、 ...make me weary?の方はオレを疲れさせる気か?と、 無理矢理にでも解釈していただけましたら幸いです;;