不機嫌そうな態度を見せていても、声を掛ければ素直に振り向く顔には、 さすがにこいつが初めて地球に来たころと比べれば、 あちこちに年月の経過が窺える。それでも口角に刻まれた皺にも、 少し削られた顎のラインにも、けして年相応とは言えない瑞々しさがあって、 最近俺のお気に入りに加わった柔らかな頬をつついていると、 眉間を寄せて露骨に不快感を表された。 普通の人間なら睨まれただけで逃げてしまうような、泣く子も黙る 厳しい表情も俺には可愛げにしか映らず、とうとう俺も焼きが回ったかと 苦笑をこぼす。けれど宇宙一我が儘な王子様はそれがお気に召さなかったのか、 ぎりぎりと眦を吊り上げて、今にも殺しそうな雰囲気を漂わせながら、 必死の形相で鋭い眼差しを送ってくる。いつもヘラヘラしっぱなしの俺も、 そんな顔したって可愛いだけだぜとは言わない。否、言えない。 情けないことに俺とこいつの戦闘力の差は、今更努力して 埋められるようなものではなくなってしまった。はっきり言って俺には、 こいつが本気を出さなくても殺せる程度の力しか無い。強さばかりを追い求めている こいつに俺がそれを差し出せるのかなんて、考えなくたって分かる。 だからという訳ではないけれど、孤独にさえ慣れてしまったこいつに、 誰かの腕に抱きしめられながら起きる朝の、心地いいくすぐったさとか、 二人で騒ぎながら食事を作る昼間の、大きな満腹感とか、 口づけを交しながら眠りにつく夜の、甘い焦燥感とか、とにかく今まで こいつには感じることができなかっただろう柔らかなものを、自分の持っている分だけ すべて、でも少しずつ、与えてやりたいと思う。 こんなこと本人に言ったことはないけれど、孤独と矜持に塗り固められた姿は、 見ていて余りに痛々しいから。そんなことを言ってしまえば、誇り高いこいつは きっと烈火のように怒るだろうから、お得意の薄っぺらい笑みを口元に貼りつかせて、 心にもないことを口にする。 「なぁ、そろそろ俺のこと、好きになれよ。」 「・・・馬鹿じゃないのか。」 「・・・・あぁ、そうだな。」 俺の言葉に驚いたように顔を上げたベジータの薄い唇に、密かな想いを込めて、 触れて、ついばんで、舐めて。穏やかで構わない、ゆっくりと燃え上がり その身を溶かしていく蝋燭のような想いを、いつかこいつが抱いてくれることを 願って、口づけを解いた俺は小さな、けれど正直な微笑を浮かべた。 |