*Cacarot x Vegeta


――0.5の奇跡――






どうしても殴りあいたい時もあれば、どうしてもセックスがしたい時もある。なんだか女々しくて 気に障るが、今はどうしてもキスがしたかった。いつもなら抱きあえばすぐ性行為にもつれ こもうとするカカロットも、分かっているのかこんな時だけは大人しく口づけを交わす。






理性ごと奪い取るうようにきつく舌を絡ませあい、普段は隠している思いを伝えるように 何度も軽く唇を重ねる。触れあう度にそこから穏やかな感情が生まれるようで、こいつとの キスはどうも嫌いじゃなかった。
ふわふわと水中を漂うような雰囲気は、初めて空を飛んだ時のことを思い出させる。俺の 中で一番古いその記憶は、やっと大人の仲間入りができたという幼い喜びに満ちていた。






ふと絶え間なく繰り返されていた口づけが途切れを見せた。それでも諦めの悪い子供の ように、唇を少しだけ離したままカカロットを見つめる。口元にかかるカカロットの息や、 ピントがぼけていても微笑んでいるのが分かる青い目が妙にくすぐったくて、かなり不本意 ではあるが、この体勢になると俺は少し素直になってしまうらしかった。いや、もっと不本意 なのは、それがバカロットなんぞにバレてしまっていることだ。
「・・・・・こういうことだけは鋭いんだな。」
・・・いつもは恐ろしいくらい鈍いくせに。
「・・・・ん?」
「気にするな、独り言だ。」
「なぁ・・・・・愛してる、ベジータ。」
「・・・・・あぁ。好き・・だ、バカロット。」
やはりなんとなく気恥ずかしくて、噛みつくように0.5cmの距離を埋めた。











*Broly x Vegeta


――0.5の憤怒――






これだけは自分の力じゃどうしようもない。そんなこと分かってったって、ムカつくものは ムカつくんだから仕方ないだろ?






俺の周りにいる人間は、俺がまだ子供だってことを差し置いても、皆かなり大きいと思う。 父上は勿論大きいし、ナッパなんか立ってたら柱みたいだし、あのヘナチョコラディッツまで デカい。・・・でもやっぱり何よりムカつくのはブロリーだ。なんかやたらデカいし、側近のくせに 偉そうだし、いっつも無表情で何考えてるのか分からないし。
とにかく俺は奴より大きく、強くなって、足元にひれ伏させて、思いっきり見下ろしてやる 予定だ。だからちょっと嫌いな牛乳だって、毎日0.5リットルずつ飲んでたりする。俺は王子 だから、どんなことにも努力を怠らないんだ。






「そんなに飲んでどうするんだ、腹でも壊したいのか?」
いつも通り、風呂上りにコップに牛乳を注いだところで聞こえてきた声に、反射的に顔を 上げる。やっぱりそこにいたのはブロリーだった。
「お前には関係ないだろっ。」
「俺はお前の側近だ。お前の体調管理も職務の内だろ?」
ああ、まただ。ブロリーが仕事の話をする度に、何でか心臓が痛くなる。最初は呪いでも かけられたのかと思ったけど――だってブロリーなら呪いくらいかけれそうだ――、俺は どれだけ経っても死ななかったし、心臓も死ぬくらい痛い訳じゃない。ただいつまでも ぎゅって締めつけられるみたいな感覚が残って、ちょっと集中できなくなるだけだから、 そんなに気にしないことにした。俺は王子だから、命を狙われてないのならどうなっても 平気なんだ。
でも心臓が痛くなる相手がブロリーだけなのは、なんとなくムカつく。だから最近の俺は、 ブロリーにはすごくキツく当たってた。何でもないことにやけにイラついたりしてた。
「あぁ、もううるさい!高い所から見下ろしやがって!小さいからってバカにしやがって!! いつかお前なんかよりデカくなるんだからな!!」
俺に急に叫ばれたブロリーは、それでもやっぱり無表情で、それが何でか悲しかった。 こんな不安定な自分なんか嫌いだ。ちょっとしたことですぐ怒って、勝手にすぐ悲しむ なんて、ただのバカじゃないか。
いきなり叫んだかと思ったら俯いてうじうじしだした俺をどう思ったのか、突然ブロリーが 跪いて俺の頭をゆっくり撫でた。子供扱いなのがすごく嫌だったけど、ちょっと気持ち よかったし、今更手を振り払う元気も無い。だから俺は初めて父上以外の奴に髪の毛を 触らせてやることにした。
「そんなことはない。」
「・・・・・・?」
いきなり言われても何のことか全然分からなくて、顔を上げてもやっぱり無表情なブロリーの 顔には何の手掛かりもなくて、結局俺は小さく首を傾げた。
「俺は小さなお前を馬鹿にはしていないし、お前は大きくなる必要もない。」
「なっ・・に言って、」
「お前はそれくらいの身長なのが一番可愛い。」
「――――っ!!」
すごく、ビックリ、した。ブロリーは俺がもっと小さかった時からずっとそばにいるけど、一回も、 表情が変わるのを見たことはなかったのに。なのに、ほんのちょっとだけだけど唇が 上がって、すごく分かりにくかったけど、確かにブロリーが笑ったんだ。ハッて気がついたら、 もうどこかに歩いていくブロリーの背中が見えた。
何でかものすごく恥ずかしくて、顔が熱くて、どうしようもなかったから、急いで布団を かぶって寝た。でも俺は初めて見たブロリーの笑顔に気をとられまくってて、何を言われた のか理解した時には、もう次の日の朝になっていた。






「もう牛乳は飲まないのか?あんなに毎日飲んでたのに。」
「う、うるさい!もう飽きたんだっ、絶対お前なんかの為じゃないからな!!」
「・・・・・?」
・・・やっぱりブロリーはアホでバカでムカつく奴だ!











*Raditz x Vegeta


――0.5の勇気――






今日こそやってやる。






俺は今まで生きてきた中で一番希望に燃えていた。今までずっと言えなかったけど、今日 こそバシッと決めてやる。別に今日は特別な日でも何でもない。ただ新しい彼女をつくった 同僚がちょっと・・・ほんのちょっと羨ましくなっただけだ。
正直に言って、勝算なんか全然 無い。あいつは元王子だし、俺は部下だし、あいつの方が強いし、頭もいいし、俺なんか パシリ扱いだし、ストレス解消グッズくらいにしか思われてないし。・・・自分で言ってて悲しく なってきた。
でも!そんな冗談抜きで寒い関係を、俺の一言で変えてやる。フラれたとしても、俺が 真剣に好きなんだってことをあいつに伝えられるだけで、俺は幸せだから。顔を叩いて 気合いを入れて、何となく慎重にスカウターをはめて、まずは地味にベジータを探す。






勿論呼び出すなんてことはしない。そんなことしたら確実に殺される。やっぱり思いを伝える 前に死ぬことだけは、何としても避けたい。俺だって結構必死って、あ!
「ベ、ベジータ!!」
「何の用だ。」
「ええっと、お前に聞いてほしいことがあるんだ・・けど。」
こいつが機嫌悪そうなのはいつものことなのに、今はそのせいですげぇ緊張してる。 ベジータが言うとおり俺は弱くて、頭悪くて、何の役にも立たないくせに身体だけはデカイ 男だけど、それでもベジータが好きなことだけはすっげぇマジなんだから、大丈夫だ。 頑張れ俺!!
「生憎俺は暇じゃないんでな。」
「頼む!すげぇ大事な話なんだ。ちょっとでいいからさ。」
「・・・じゃあ0.5秒。」
「え、短っ」
「じゃあな。」
「待てって。もうこんなこと言わないからさ、ほんと5秒でいいからさ、さっきの0.5秒10回分 くれ!」
自分でも意味分かんないこと言ってるなとは思ったけど、とにかく俺は必死だった。 今言わないと一生言えない気がする。
「・・・・つまらん話ならすぐさま貴様がこの世から消えると思え。」
「サンキュー!それなら絶対大丈夫だ!!」
話題のあり得なさなら絶対負けない自信がある。まさか俺がベジータに告白するなんて、 誰も予想してなかっただろうし。
「早く言えよ。5秒しかないぞ。」
「お、おう!えっと、す、好きです、付き合って下さい!!」
「・・・・ふーん。まぁ殺すのは勘弁してやる。」
「・・・・・・え?」
それだけ言って、ベジータはさっさとどこかへ歩いていった。一人残された俺は何が何だか 分からなくて、返事をもらうことも忘れてぼんやり廊下に突っ立っていた。






あの時のあいつの態度が照れからだったって分かったのは、殺されなかったことに自信を もった俺が、へなちょこ気味に攻めまくって奇跡的にベジータを手に入れた、ちょうど 半年後のことだった。











*Yamucha x Vegeta


――0.5の試練――






ちょっとデカめのTシャツにスパッツなんて、それだけで勃起ものの格好をした上に、脚を 組んで、机に頬杖をついたりなんかして、とにかくベジータはものすごい量のフェロモンを 撒き散らしながらそこにいた。






今考えてみれば、最初から何もかもおかしかったんだ。だってあのベジータが、だぜ?
最初の頃なんか話しかけたって俺を存在ごと無視して、ムカついたから大声で名前呼び まくっただけで顔面を殴ってくるは、ちょっと近づいただけでものすごい睨んでくるは、 むちゃくちゃ勇気出して告白しても黙れとしか言ってくれないは、すげぇ憎たらしい態度の 筈なのに可愛く見えるはで、とにかく救いようがないくらい酷いことばっかりしてきたあの ベジータが。
寝ようと思って俺の部屋のドアを開けたらそこにいて、すっげぇ色っぽいって 言うよりむしろエロい顔でニヤって笑いながら、「遅かったじゃないか」って言ったんだぜ!?
鼻血が出た。冗談とかじゃなくて、ベジータからモワモワ出まくってる得体の知れない何かに、 俺の鼻の毛細血管は堪えられなかったらしい。でもこれは俺が情けないからじゃない。 断じて違う。こんなベジータを見て鼻血も出ない男なんて男じゃない。






ふと床に溜まってく血が目に入ったから、慌ててティッシュを引っ掴んで応急手当をして、 何となく正座をして、まずは頬っぺたを引っ張ってみた。痛ぇ・・・夢じゃないんだ。
何で いきなりベジータがこんなことになったのかは全然分からないけど、今日なら話しかけても 殴られたり睨まれたりしなさそうだから、椅子に座ったベジータを見上げながら、恐る恐る 声を出してみた。・・・・あぁ、目の前の太腿が目と股間に痛ぇ。
「あ、あのさ・・・ちょっと聞いてもいいか?」
「何だ?」
・・・あ、股間押さえてティッシュをフガフガ言わせながら喋ってる俺って、ちょっと情けない 気がする。
「な、何か今日のお前変・・・だよなぁ?」
「こんな俺は嫌いか?」
・・・・・っ!!今なんかすげぇ来た、すげぇ衝撃が股間に来た!だってだって相変わらず ニヤって笑いながら、ベジータが流し目で俺を見てるんだぜ!?頑張れば俺は今ここで 死ねる。
もう何が何だか分からなくなった俺は声を出すこともできなくて、やたらとハァハァ言い ながら、頭が外れそうなくらいの勢いで、思いっきり首を振りまくった。嫌いな訳が無い。 むしろすげぇ好き。俺のメッセージは多分ベジータに伝わった筈だ。
「・・・・そうか。」
ほらその証拠に、ベジータがちょっと嬉しそうに呟いてるし!!こうやって普通に話してるだけ なのに、ベジータからモワモワ出まくってる得体の知れない何かはどんどん濃くなって、 今じゃもう俺の狭い部屋には納まりきれなくなってるみたいだ。そして俺は正直に言って、 辛い状況に追い込まれていた。
さっき突っ込んだティッシュは血で真っ赤になってるし、何より勃起しすぎて股間が痛い。 ベジータが脚を組み変える度にチラチラ見える内股が、何て言うかもうヤバイ。触れる ものなら触ってごらんなさい、とか言ってる気がする。俺だって触りたい。半端なく触りたい。 だけど、ダメなんだ。ベジータが好きなら、欲望に負けちゃ絶対ダメなんだ。
確かに ベジータでヌイたことはあるけど、ベジータの身体が目当てな訳じゃないし、ベジータの心も ほしいし、まだ告白の返事だって貰ってないし。俺の本気を分かってもらうんだ。どんだけ 勃起したって俺は我慢できるってところを見せないと。・・・これこそ愛の試練だよなぁ。






でも愛の試練は、俺が思ってるほど生易しいもんじゃなかった。急にベジータがちょっと だけこっちを向いて、エロい笑顔をむちゃくちゃ可愛い微笑みに変えて。今度は何だって ちょっと警戒した俺の耳に届いたのは。
「・・・・ヤムチャ。」
ちょっと掠れた声で呼ばれる俺の名前だった。ゴメン、ベジータ!例え0.5秒先に見える のが地獄だとしても、0.5秒後にボコボコにされたとしても、俺は自分に正直に生きるぜ!! 心の中でそう叫んだ俺は、赤く染まったティッシュを吹き飛ばしながら、愛して止まない ベジータへとダイブしていった。