Index(X) / Menu(M) / / Next(N)

桃娘異聞・番外

9_180氏

 王宮敷地内にある、図書館。
 国中の随書、歴史書、逸話、医学書などなど……種類別に大規模に収集されており、国民に
公開されている。
 図書館の中にある、閲覧の条件が定められている蔵書が収められている一室にユーリーが向かう。
 王侯関係者、並び、その者達に許可を得たもの、王立学校卒業予定者及び卒業者のみが閲覧
できる場所である。
 彼女は王立学校軍学部卒業者であるために、証明としてのバッチで中に入ることができた。
 扉を開け、ぱらぱらといる者の姿を見かけては、視線を移し通り過ぎていく。
 ふと足を止め、身体の向きを左に変えると、目指す人間の側まで颯爽と歩く。
 彼は目立つ──後ろ姿のみで見分けがつく。
 
 それはユーリーが彼に特別な感情を持っているからだと言うことに気づいていないだけなのだが──。
 ポンポンと気安く肩を叩いてきた相手が誰と悟ると、レオナルトはあからさまに顔を歪めて
読んでいた本を閉じ、元の場所にしまう。
『出よう』と指の合図でユーリーを促し図書館を出る。

「明日が借金の返済日なんだ。どうなんだ? 『漆黒の狼』」
 声の調子に気を配りながらレオナルトに訊ねる。
「近く、論文を提出しないとならん……」
 論文の作成に忙しくて盗みなんかやってる暇なんか無い──という態度だ。
 足早に王宮内ある兵舎に入るレオナルトに必死に付いていくユーリー。
「君が忙しいのは分かった。だが、それは私との『恋人』の『条件』だ」
「……ていの良い下僕じゃないか」
 レオナルトはそうぽそりと呟くと、あてがわれている自分の部屋に入った。
 医師研修生は小さいながらも個室を与えられている。
 国がそれだけ育成に力を入れている証だ。
「私と同等の部屋を貰えるんだな」
「貴族様と同じ部屋の造りで恐縮ですね」
「……嫌みで言った訳じゃない」
 その問いに答えずレオナルトは鍵を掛けて置いた机の引き出しの、更に奥の板を外すと
隠して置いた首飾りをユーリーに投げ渡した。


「現物のままじゃない……! これじゃあ困るわ!」
 二人きりで安心しているのかユーリーは女言葉で話し始めた。
「前に、解体の仕方教えただろ」
「泥棒の手先に成り下がることなんかできない」
 ふんっと、突き返された首飾りをやれやれという風に受け取るとレオナルトは寝台の下か
ら工具を取り出し器用に解体し始めた。

「……大した手さばきね……」
 宝石を傷つけずに手早く解体する様子を関心して見つめているユーリーにレオナルトは
「泥棒の手先でいた頃に教わってね」
 無表情で答えた。
 先ほど拒否した時の自分の台詞に対しての嫌みだと感じユーリーは、黙って解体の様子を見る
ことにした。
 机の端に腰掛け、無言で首飾りを解体し続けるレオナルトを見る。
 この関係になって一ヶ月がたった。

 それ以来自分は彼に貢ぎ物と称させ、盗みを働かせている……。
 十日に一度の高利貸しの豪農の取り立てもおかげで滞りなく払えている。
 相手の高利貸しはどうやって金を工面しているのか不思議がっていたが
 母に慕情している者達が工面していると話したら、母への求婚も諦めてくれた。
 
 良い方向へ向かってくれた──。
 が、やはり、というか今度はレオナルトの態度が硬化してきた。
 恋人だ、などと名ばかりの脅迫。
 彼の都合を無視した貢ぎ物の催促で、前回の報告論文提出では危うく落としかけたのをユ
ーリーは知っていた……。
 医薬学科は厳しい。
 一度でも落とすと、もう一年従軍して研修医を務めなければならない。
 
 それがあったせいもあり、以前のように笑いかけることも普通に話すこともしなくなった。
 いつも自分から話しかけ、彼はいつも不機嫌な顔をする……。 


自分が今彼にしていることを考えれば、それは仕方ないことだ。
 細かい作業を懸命にしているレオナルトを上から見つめる。
 
 ──きっと加虐性欲者だわ、私……。
 こんな形でこの人を縛り付けていて、この状況を楽しいと思うなんて。
 彼の長い指に絡む小さな宝石をぼんやりと見つめる。
 そう言えば、この首飾りを彼はどうやって奪ったのだろう?
 話通り、女達が好む誘い文句をあの甘く通る声で囁き
 細い首にかかっていたその首飾りに舐めるように吸い付き、唇を這わせたのだろうか?
 日の当たらない淑女の身体をまさぐり
 気の済むまで快楽を与え朦朧とした意識の女から、この首飾りを抜き取ったのだろうか?
 
 一夜の甘い代償……。
 彼は今まで自分の生活の為にしていた。
 今は私の為……。
 唇の端が自然と上がる。

「何か可笑しいのか?」
 気づかぬうちに声が出たのだろう。
 憮然としたレオナルト表情をユーリーに向ける。
「──ううん、貴方は本当に色々とできるな、と……。
 別に医師の道を選んばなくても、その道で十分ではなくて?」
「……歳を取り、力が衰えればもうお終いだ。私は一生できる職を手に入れたい。
 それに、大手を振って話せる職ではないだろう?『それは』」
「一生できる職なら他にもある。どうして医師にしたのか知りたい」
 レオナルトは解体し終わった首飾りを丁寧に集め、絹の袋に入れるとユーリーに手渡しながら
「君のような相手に、二度と弱みを握られないためだ」
 と、無表情に言い放った。


工具を片づけながらもう、用はないだろうから出てってくれとユーリーに告げる。
「……あるんだ……同じ目にあったこと」

 ──以外と抜けてるのね、二回も同じことを繰り返すなんて──
 レオナルトに言った。


 一瞬だった
 何が自分に起きたのかユーリーは分からなかった。
 あまり弾力のない寝台の上に身体が飛ばされて、その固い弾みで身体がきしみ自分の状況
を理解した。
 レオナルトの行動は早かった。
 ユーリーが状況が分からず呆けている間に、手早く寝台の端に両手首を縛り付けていた。

「……何を……?」
 ずしりと腰にレオナルトの体重がかかる。
 無言で自分のズボンのボタンを外し、ずり落としているのに、ユーリーは背筋が凍り付いた。
「止めて……出ないと大声を出すわよ……」
 牽制のつもりが声が震える。
「出せよ──出せるんならな」
 その、今までと違う低い、怒りを抑えている声と、自分を見るレオナルトの瞳にたぎる怒濤の光が
ユーリーの喉を萎縮させた。
 レオナルトは枕掛けを外すとユーリーの口をそれで塞ぐ。
「だが、万が一、大声出されたら困るのでね」
「―!?」
 


戯れじゃない、彼は本気だ。
 それは女の感とも言える防衛反応からの危険信号だった。
 責を切ったように滅茶苦茶に暴れたが、逆に縛られた手首の紐をさらにきつくしただけだった。
 しばらくユーリーの腰に乗り、彼女の体力が無くなるまで黙って静観していたレオナルトは
頃合いを見てユーリーの顎を掴む。
「安心していい……。貞操を奪うつもりはない。
 せっかくの婚約が駄目になると、私に負担が来るものな……」
 レオナルトの空いている右手がユーリーの日の当たらない太股を撫で回し、彼の手の固い皮膚
の感触に身悶えした。
「これだけ私にだけ奉仕させるのは不公平だろ。仮にも『恋人』と言うのなら、恋人に『褒美』を
与えても良いんじゃないか?
 例え、間抜けなことを繰り返す怪盗にでもね……」
 相変わらず無表情だった。
 そして
 変わらず彼の瞳は怒りでたぎっていた。
 ユーリ―はようやく気づいた。
 彼の心の傷をえぐり、怒りに油を注いでしまったことに……。




 研修医として軍に従軍する一年間
 基礎体力訓練や身体を使った防御、攻撃等の講習も受ける。国を上げての戦に備えて―。
 シヴァフイート公国は北方に位置する国の中では最大で、一番南東にあり比較的過ごしやすい
土地ではある。
 が、やはり寒さで作物は育ちにくく一年の半分は冬に閉ざされる。
 本能としてやはり過ごしやすい土地に惹かれ、人は動く。
 戦力を国民総生産で一律統一させ、南へと侵略を進めてきた。
 


ユーリーもレオナルトも
 今、戦が始まれば戦場にかり出される。
 そうなる事態となってもすぐに対応できるように今の仕組みが出来上がっているのだ。
 幸い今の国王は盛んに侵略する気はなく、隣国の和平交渉を進め、国内の充実の方に力を入れて
いる為ここ何年かは平和であった。
 それでも、いつ再会する侵略のために軍に入った者達は身体を鍛えるのだ。

 レオナルトも体術を習って、鍛えられた軍人一人押さえる事は容易であった。

 彼はユーリーの腰から膝の方へ身体をずらし、彼女の足を押さえる。
 そして何の飾りもない白い肌着に手をかける。
「!!」
 腰を浮かせて逃れようとしたが返って脱がしやすい体勢を作っり、すんなりと脱げてしまい
髪の色と同じ白金の恥毛がさらけ出される。

 肌着はそのまま彼女の膝でめくれたまま止まっていた。
「上はさらしが面倒だからな」
 冷静なレオナルトの声が耳に飛び込んでくる。

 無表情なままで押し入るように人差し指を恥丘の奥へ差し込んだ。
 第一間接が曲がり、敏感な突起に当たる。
 ユーリーは、首を嫌々と振り拒絶をするがレオナルトは無視し指の間接の曲げ延ばしを繰り返した。
いくら皮を剥いていないとは言え、敏感な部分だ。
 レオナルトの指先が当たる度に、慣れていない強い刺激が下半身を疼かさせる。
 ゆっくりとした指の動きが徐々に早くなり、刺激に間隔が狭まり、絶え間なくくる疼きで身
体全体で捩る。
「感じているな、ほら」
 レオナルトはおもむろに指を抜くとユーリーに、露に濡れた人差し指を彼女の前に見せる。
「…!」
 恥ずかしさに勢いよく顔を背け、目をギュッと瞑った。


レオナルトは閉じて押さえ込んでいた太股を今度は膝立て、開き再び自分の体重をかける。
 まだ、日が射している午後、奥の恥毛がテラテラと露で湿り光る。
「……」
 レオナルトはしばし、その部分を見つめてから
 ユーリーのすぐ横でおざなりになっていた枕を彼女の腰に当てた。
「たったこれだけのことで敷き布を濡らして……結婚前の貞淑な貴族の女が呆れる」
 今まで無表情だったレオナルトがようやく笑みを見せた。

 ──意地の悪い笑みだ人を見下した、屈辱な笑み──
 ユーリーは泣くのを堪える為に口に入れられた枕掛の生地を噛んだ。
 彼がこんなことをするとは夢にも思っていなかったからだ。
 普段、王宮内の態度は偽りだったのか?
 漆黒の狼とあざ名された紳士的な怪盗は演技だったのか?

 失望と
 陵辱されていながら感じているとはっきり分かる自分の身体の淫乱な部分に混乱して
ただ、泣き声を聞かれなく無いというプライドだけが辛うじて彼女の脳裏を支配していた。

 恥じらうべきの彼女の奥は隠すことを許されずさらけ出され、レオナルトはすくうように、
溝を伝う露をなぞる。
 新たな感覚にユーリーの腰が跳ねた。
 往復を繰り返し、花弁の形を辿り、時々引っかかるように秘所に指先が入る。
「っ! ──!!」
 その度に彼女は首を横に振った。
 だからと言って、レオナルトの手が動きを止めることは無かった。
 くるり、と入り口を指の腹でなぞる。
「──!」
 ユーリーの腰が引いた。


「下手に動くな……。でないと、せっかくの操が無くなることになる」
 そう言うな否や、ぬるりと自分の膣内に異物が入ってきた。
 それが彼の指だと瞬時に分かったところで、彼女にはどうしようもなかった。

 先ほどまで首飾りを解体していた長い指が
 自分の体内に入り、分泌液を絡めながら淫靡な音を立て蠢いている。
 それは
 抜き差しすると間接の節があたり、熱をつくり、更に敏感な場所を探そうとするかのように
弧を描いて動くときは痺れる感覚が膣内を駆け巡る。
 泣くまいと必死だったユーリーは
 今は何も考えられず、レオナルトの指に素直に反応し、身体を朱に染め快感に震えていた。
「……下からよだれの洪水だな、ユーリー。
 この様子じゃあ、自分で自分を慰めていたのではないのか?」

 違う!
 違う!!
 私は、私はもう―
 口を塞がれ、言葉にできない否定の台詞が頭に浮かぶ。
 だが、溜まりつつある快感の泉がそれすらも消してしまった。

 底からじわじわと染みてくる泉のように、快楽が膣内を満たし腰に背筋に押し寄せてきた。
「―!!?」
 身体中が小刻みに震え、腰が上がり、今の状況も必死に泣くまいとしていた矜持も全て忘れ
快楽に果てた―。


 一瞬にして身体から吹き出た汗が纏わりつき、その不快感を拭いたいとぼんやりと思いながらも
ついさっき、自分に襲ってきた快感の余韻に浸る。

 まだ熱が残る下半身にまだるこさを感じ腰を動かした。
 「まだ足りないのか?」
 耳元で意地悪そうに呟くレオナルトに視線を移す。

「してやろうか?」そう言って、ユーリーの口を塞いでいた枕掛けの布を外す。
 久しぶりの口からの呼吸に胸が大きく揺れた。

「ただし──」
 レオナルトは自分のズボンのボタンに手をかけると、大きく誇張した自分の物をユーリーの目の
前にさらした。
 日差しの少ない北方の国でも、昼間は明るい。
 その赤黒く脈を打ったそれはユーリーの肉眼ではっきりと見て取れ、またいで自分の顔の前にさ
らけ出された意図が分かり青ざめた。

「自分だけ気持ちよく果てるのは不公平だろう? ──口に含めよ」
「……いっ、嫌……そんなことしたこと無い……」
「結婚した際に喜ばれるのではないか? その婚約者の小父にな……なかなかやり手だと」
 ニヤリとレオナルトが笑う。
 ユーリーの身体がかあっと熱くなった。

馬鹿にしてる
 完全に馬鹿にしている
 怒りで震える声でユーリーは言い放った。
「こんな事をして! ただで済むと思わないで!
 小父にも、上官にも、一緒にきた医師研修生にも暴露してやる!! 一生償わせてやる!!」
 しかしレオナルトは、そんな彼女の叫びを聞こえていないかのように表情を変え
ず飄々と話す。


「今、何人か医師研修生が宿舎に残っているな……。 非番の仕官もいるはず」
「……それが何よ……」
「女人禁制の宿舎に仕官服を着込んだ女が紛れ込んでいたら、普通の職の女じゃないと
通常は思うがな。
 男装遊戯の出張娼婦か、良いとこ規約やぶりの女仕官か……」
「……」
「過去にもあったな……娼婦か男のふりした仕官が紛れ込んで、宿舎の男共に性欲のは
け口にされたのが」
「―聞いたことなど無い!」
「君は貴族のおぼっちゃま扱いだからな──実際は女だが。宿舎だって別扱いだろう?
 畑が違えば種だって違う。こちらの宿舎は一般国民のやさぐれた男共の寝床だ。
 金で買えない、恋人のいない飢えた男達の中に女が放り込まれたらどうだ?」
「……そんなこと、許されるはずが……。
第一私は貴族階級の者、そんな相手にそのようなことをしたら……」
「上流であればあるほどげせんな奴に陵辱された事実は隠したがる……。──試してみるか? 
皆、喜んで君の身体にむさぼりつく」
 呆然とする彼女を見て、せせら笑うようにレオナルトは言い放つ。
 もう、ユーリーには抵抗する気も粋がる気も起きなかった……。

憎んでいる
 彼は完全に私を嫌っている……。
 自分の行動一つで、簡単に今宿舎にいる男達に私を引き渡す。
「酷い、酷い」
「酷いのはお互い様だろう?」
 うなされるように呟き泣き崩れるユーリーに、レオナルトはそう冷たく言い返した。


 違う
 私は貴方に──
 ユーリーは言いたくても言えない言葉を飲み込んだ。
「口を開けろ」
 低く威嚇するようなレオナルトの口調。
 涙でかすむ目の前の物を口に含む。
 初めての経験にどうしてよいか分からず、ただ奥にまで入り喉をつつく大きく誇張した彼の物を
賢明に受け入れるしかなかった。

 レオナルトは彼女が勝手が分からないのを知っていたし、両手首はまだ縛ったままであったから
自分から腰を上下に動かし快感を促す。
「歯を立てるなよ……」
 そう言うと、更に口を大きく開け自分の物を受け入れているユーリーを見て、陰のある
微笑みをした。

 唾が喉あたりに溜まり苦しい……。
 たまらず、ごくりと唾を飲み込む。
 その拍子に口が少し窄まり、レオナルトの物を吸う形となった。
「ユーリー……今の調子だ……」
 そう言われ、強迫観念に捕らわれているユーリーは、言われるがままに口を窄め脈打つそれを吸う。
 腰の動きが早くなり、口に出入りするそれも忙しく動く。
これから何が起こるのか
 男の形で過ごしてきたユーリーには身震いするほど理解していた。
 男が好んで望む行為──。
「──くっ……!」
 レオナルトが声を上げたと同時
 ユーリーが咥えていた彼の物が、大きく脈を打ったのが分かった。


 口の中に生温かい液体が流れ込む。
「──」
 その匂いが口内から鼻腔に伝わり、思わず瞳をギュッと瞑った。
 レオナルトはゆっくり彼女の口から、果てた後の自分の物を引き抜いた。
 量が多かったのか、とろりとユーリーの口の端から白い液体が流れる。

 彼は無言で彼女の口を片手で塞ぎ、もう片方の手で鼻を摘み、顔を上に向けさせろ。
「──んん!!」
 ユーリーは苦しそうに顔を歪め抵抗したが、たまらずその白い液体を飲み込んだ。
 粘りけのある液体であるせいか、一度で飲みきれず、つっかえながら2、3度に分け喉に通した。

「……」
 自分がされたことにユーリーは呆然とし、うつろな視線をレオナルトに向けていた。
 その様子を見てレオナルトは抵抗する意志は無くなったと悟り、ユーリーを縛り付けていた
紐を解く。
 腕が力なく寝台に落ちる……。

「どうする? オリガ」
 レオナルトが彼女の本当の名で呼びかけた。
 彼女は呆けながらも、彼の呼びかけにゆっくり首を傾けた。
 何を? そんな風に

 レオナルトはオリガの白金の髪を撫でながら、優しく問う。
「まだ、身体の疼きが収まっていないのだろう?」
 目を細め、まるで最愛の女を愛でるかのように優しい表情だった。

 ──私は……貴方にそんな風に見つめられたかった。

 しかし声にならず、まだ、白濁した液体が喉に纏わりついている感覚に戸惑いながら
レオナルトの問いに頷き、彼の肩に手を回した……。


Index(X) / Menu(M) / / Next(N)