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Z〜第8話〜 (1)

実験屋◆ukZVKLHcCE氏

ゼットが去ってからエリスは拘束・監禁されている為部屋から出ることも出来ずに
ただ時が流れるのを待つだけだった。

『Z〜第8話〜』

「トントンってね・・・口で言ってるし。」
不意にドアがノックされた。
「入るよ〜。」
そこに現れたのは・・・
「あなたは確か・・」
「キノイと言います。ヨロシクね!!」
四天王最年少のキノイだった。
「何か・・・・ご用で・・・?」
ここに連れて来られてから会う人間といえばゼットと食事を持ってくる使用人だけだった為
ゼット直属の部下である四天王のメンバーにエリスは戸惑いを覚えた。
「まあね・・・どっこいしょ。」
そう言うとキノイは傍にあったイスに座り込んだ。

「コマンダーがさぁ〜・・・」
「!!」
ゼット関係の話と理解しエリスの身体がこわばった。
「何を言っても答えないし、近づくと攻撃してくるのさ。」
「攻撃・・・?」
「まぁ、衝撃波でぶっ飛ばしてくる位なんだけどね。」
キノイは「参った、参った。」と言わんばかりにかぶりを振った。


「・・・知り合いか何かなんデショ?」
「えっ!!」
キノイの一言にエリスは驚いた。ゼットはともかく他の人間に悟られるような
振る舞いはしていないからだ。
「ど、どうして・・・その事を?」
「特殊能力、って程じゃないんだけど人の顔色やオーラから何考えてるのか
 だいたい読み取れるんだよね、昔から。」
キノイは膝で頬杖をつきながら語った。
「コマンダーから罪悪感、良心の呵責、そんな感じが見えたのさ。
 九分九里原因はお宅にあると思ってね。聞きに来たのさ。」
口元は笑っているが真剣な眼差しでキノイはエリスを見つめた。
「どういう事か、説明してよ?」
依頼と言うよりは強制に近い口調で用件を述べる。
「実は・・・・」


「・・・なるほどね〜。」
エリスとゼットの過去を聞きキノイは口元を押えた。
「玩具とか言ってたワリに結構執着するし、いつものコマンダーらしくないんで
 どうしたものかと思ったけど、そんなことが・・・クソッ。」
真相を知る為とはいえ自分ではどうしようもない現状に歯噛みした。
「アンタはどうしたい?」
「えっ!?」
「俺達はアンタがここで逃げ出したとしても痛くも痒くもないから別に逃げても
 構わないけど・・・アンタ的には?」
「・・・私は・・・・」
エリスはしばらく俯いたままだったが意を決したように顔を上げた。


「ゼット様に会いたい。会ってちゃんと話がしたい。」
「・・・・フッ。」
エリスの真剣な視線を見てキノイは表情を緩めた。
「そっか・・・」
キノイはイスから立ち上がりエリスに背を向けた。
「でも、コマンダーの所有物であるアンタを勝手に部屋の外に出ちゃあ
 いけないんだな〜コレが。」
そう言いながら扉へと進んでいく。
「ただ、俺はドジだから扉にかける施錠呪文をかけなかったりするんだ。
 だからよく”2階の北側の部屋”にいるコマンダーに怒られる。」
そして出て行く際に小さく呟いた。

「・・・・コマンダー・・・・兄さんを助けてくれ。」

確かにそう言い残しキノイは去っていった。
「キノイ君・・・!!・・」
キノイの言わんとした事を理解し、エリスは扉のノブに手を伸ばす。

ギイィィ。

ドアが開いた。
「ありがとう・・・・。」
誰もいない廊下にそう言い残してエリスは走り出した。
「・・・2階の北側の部屋。」


「頑張ってね。」
陰に隠れながらキノイはエリスを応援した。
「いいのか?」
「!!・・ドラン!?」
いつの間にか自分の後ろに現れていたドランにキノイは驚いた。
「どうして・・・もしかして聞いてた?」
「盗み聞きは得意でね。」
勝ち誇ったようなドランの笑みにキノイは渋い表情を浮かべる。
「悪趣味だねぇ〜。」
「これでも副官だ。コマンダーの心身を癒す為に最善の策と思ったつもりだが。」
「副官か・・・もう少ししたらその役職、返還しなきゃいけないかもよ?」
「確かにな、・・・でも、それも良いかもな。」
「おっ!!大人だねぇ。」
「お前がガキなだけだ。」
「ウッセー!!・・ちなみに他の二人は?」
「フランも感づいてるようだぞ?」
「ウルフは?」
「あの熱血筋肉バカが気付くと思うか?」
「思いません。」
「その内気付くだろ・・・まぁ馬に蹴られたくないし、俺達はここまでだ。
 後は・・・彼女に託そう。」
「うん。」

「願わくば、我等の主に幸あらんことを・・・」



「ココが・・・」
エリスはゼットの部屋に辿りついた。

コンコン

ノックしてみても返事が無い。不安に思いながらもエリスは部屋の中へと入った。
「・・・ゼット様?」
部屋を見渡す。ゼットの姿は・・・・

「・・・・・!!  ゼット様!!」

入り口からは死角の窓の下の床ににゼットはもたれ掛かるように座っていた。
「ゼット様。」
エリスがゼットに近づく。

「・・・ククク・・・」

「ゼット様?」
「ヒヒヒ・・アハハハハ」
ゼットは濁りきった虚ろな目でどこを見るわけでもなく辺りを見回していた。
エリスに返事することも無く力の無い笑いを発しながら・・・。
「ゼット様・・・」
ココまで彼を追い込んだのは自分、エリスの心が痛んだ。
「今そちらに参ります。」
エリスはゼットの元へと足を進める。

「!!あぁああぁぁぁああ!!」
エリスが近づいた瞬間、ゼットは奇声を上げて衝撃波を放った。


「きゃあ!!」
衝撃波を正面から受けエリスは壁に叩きつけられた。
「クッ・・・うぅぅ・・・」
全身を襲う衝撃にエリスはうずくまる。
「あっ・・うあぁあぁ・・がぁあああぁああぁぁぁあ!!」
いきなりゼットは頭を抱えて叫びだした。もはや何も見えていないながらも
エリスを攻撃してしまった事を認識し苦しんでるように見える。
「ゼット様!!」
なんとか衝撃を耐え切ったエリスが再びゼットの元へ近づく。
「ぁぁあぁ・・・ああぁぁぐぅぅあああぁ!!!」
ゼットは辺り構わず衝撃波を放つ。
「くっ!!」
衝撃波を正面から受けながらもエリスはそれに耐え突き進む。
(ちょっと動かさないだけでこんなに鈍るなんて・・・)
白騎士としての訓練を積んでいるエリスも今日までの陵辱の日々に身体が衰え
ゼットの衝撃波を受け止めるだけで精一杯の体力しか残っていない。
「がぁあぁああぁ!!  あぁぁあぁあああ!!」

「ゼット様!!」

衝撃波を堪えきったエリスはゼットに抱きついた。
「あ・・あぁぁああ・・・あ・・・う・・ああ」
「ゼット様・・・ごめんなさい。」
エリスの瞳から涙が零れ落ちた。

「う・・ぁぁ・・ぅぅ・・エ・リス・・・?」


「ゼット様!?」
確かにゼットは自分の名を呼んだ。
「なん・・で・・・ココに・・?」
「キノイ君が鍵を開けてくれました。」
「・・・そう・・か・・・キノイが・・・」
話を返してくれるもののゼットの瞳はまだ虚ろいだままだ。
「ゼット様・・・御加減は?」
「・・・・」
エリスの呼びかけにゼットは答えない。必死に何かを考えているように見える。
「エリ・・・ス・・・すま・・・な・・・かった・・・俺は・・・俺・・は」
「謝るのは私の方です。あの時、助けてくれたアナタに恩を仇で返すようなことを・・・」
「も・う・・・いい・・んだ」
そう言うとゼットは指をパチンと鳴らした。
「あっ!!」
エリスの身体に刻まれていた拘束用の魔法陣が消える。
「これ・・・で・・・エリスは・・・自由だ・・・逃・・げても・だいじょうぶだ。」
「・・・イヤです。」
ゼットを抱く力に力が入る。
「なぜ・・・だ?・・・あぁ・・ぁ・・そうか・・」
ゼットは震える指で懐から短剣を取り出す。
「俺に・・・トドメ・・を・・さし・・てないもんな・・・やり返さない・・とな。
 一突きで・・も・・・何回も・・・かけて・・嬲り殺しても・・・いい・・ぞ。」

「イヤです!!」

エリスは大きな声で叫んだ。
「何でそんな事言うんですか!?私は・・ずっとアナタに会いたかった!!」
「エリス・・・」
「ゼット様が好き!!大好きです!!愛してます!!玩具でも、奴隷でも、家畜でも
 なんにでもなりますから!!お願いですお傍に置いて下さい!!」


「エリス・・・」
(エリスが玩具・・・)
「だ・・・め・・・だ・・・」
(奴隷だと、家畜だと・・・・)

「ダメだ!!」

スイッチが入ったかのようにゼットの瞳に輝きが戻る。
「ゼット様!?」
ゼットはエリスを抱きしめ返した。
「ダメだ。ダメだダメだダメだ!!」
「ゼット様・・・」
「絶対にそんなことはしない!!」
まだすこし朦朧とする頭を振りエリスと見つめあう。
「でもな、俺はエリスを思い出せなかった。お前のことを愛してたのに。」
「本当ですか!?」
「あぁ、そして俺はお前を犯した、乱暴した、屈服させようとした・・・
 これは誤って許されることじゃない。相手がお前ならなおの事だ。」
エリスはゼットから目を離せないでいた。
「これ以上俺の傍にいたらお前がもっと傷ついてしまう・・・そんなこと俺は耐えられない。」
ゼットはエリスの髪を優しく撫でて頬に触れる。
「やり逃げなのは分かってる・・・だからお前が裁いてくれ。」
床に落ちていた短剣を再び持ちエリスに手渡す。
「覚悟は出来てる・・・好きにしてくれ・・・俺は・・・もう・・・」
そのままゼットは項垂れた。その表情は覚悟と諦めが入り混じった複雑なものだった。



バキィッ!!

エリスは渡された短剣をへし折った。
「エリス?」
「ゼット様がなんて言おうと私はアナタから離れません!!」
「だが・・・俺は・・・」
「やっと会えたのに・・・もう離れたくない!!」
「俺といればお前が傷つく・・」
「傷つけてください!!」
「お前を泣かせる・・・」
「いいです!!泣かせて下さい!!」
エリスは一歩も引かなかった。
「愛してるって・・言ったじゃないですか・・・ヒック・・・・私だってぇ・・」
エリスの声に嗚咽が混じる。
「もう・・離れたくない・・・ずっと・・一緒に・・・うんっぅ!!」
言い切る前にゼット唇に自分の唇を塞がれる。
「ん、ん・・むぅ・・・ん」
口の中を丹念に絡めとられエリスはゼットの舌に翻弄される。
「ぷ・・はっ・・はぁ、はぁ・・・ゼット様。」
「口同士でキスってのは初めてだったな。」
やっと開放されてエリスは息を荒げる。
「また泣かせたな・・・ゴメン。」
ゼットは悲しげな顔を浮かべる。
「俺はこんな奴だぞ?」
「はい!!」
「外道だぞ?」
「はい!!」
「・・・ったく、後戻りなんか出来ないからな。」
そのまま二人の顔が近づいていく・・・。

「エリス・・・。」
「ゼット様・・。」

「「愛してる。」」


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