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Z〜第2話〜

実験屋◆ukZVKLHcCE氏

ちょっとした昔話だ。まぁ、面白くはないがな。

『Z〜第2話〜』

俺の生まれは大陸南西部の小さな山村だった。オズマとベルタの争いも
ここまでは来る事が無く平和に暮らしていた。

あの時までは・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−
「お母さんを返せ!!」
「黙れクソガキ!!」
まだ子供だった俺は目の前の男になす術無く殴り倒された。
「へへ、お前のお母さんは王国軍の名の下に頂いて行くぜ。」
身動きとれずに倒れ伏す俺を男は見下す。

ベルタの軍が通りかかった俺の村で横暴を始めた。更には慰安婦として村の女性を
何人も連れ去り出した。その中には俺の母も・・・・

「お母さん!!」
強引に馬車に乗せられ連れて行かれる母。
「ゼット!!大丈夫・・・お母さん必ず帰ってくるから!!」
この時の母の顔を俺はいまだに忘れてはいない。


「おか・・・あ・・さん」
生まれてすぐに病で父を失い、女でひとつで俺を育ててくれた母親。

この時、俺は全てを失った・・・6歳のときだ。

その後、俺は村の村長に引き取られた。年老いて先の長くない村長は
俺がまた一人になっても生きていける様にと魔法を教えてくれた。
才能があったようで俺は様々な魔法を習得し、またオリジナルの魔法まで開発した。
もちろん必死になって覚えたさ、”復讐”のために。

12歳になった秋、村長が亡くなり、それを機に俺は村から飛び出した。
大陸中至る所を回って母を奪った王国軍を探す、これが最初の目的だ。
戦場付近の村や町を訪ね母の行方を追った。
その途中、王国軍兵士をみつけては手当たり次第にケンカを売り
それをねじ伏せた。おかげで12歳ながら普通の大人では手も足も出ない強さを身に付けた。


ある日、慰安婦に女性をさらっていった軍がいると耳にした俺は
その町まで向かった。
その途中・・・

「やめろーーー!!」
「先生を連れて行くな!!」

子供達の悲鳴が聞こえた。この声にかつての自分を思い出し
怒りに駆られた俺はその現場に走り出した。

「ガキ共が!!邪魔するんじゃねー!!」
辿り付いた先は孤児院。10人近い王国の兵士が孤児院から先生をさらおうとしている
現場を発見した。
「オラッ!!」
抵抗する男性や子供達に手をあげ、女性を連れ去ろうとする王国軍。
その中に・・・奴はいた。

「へへ、お前等の先生は王国軍の名の下に頂いて行くぜ。」

母を奪ったあの兵士だ。あれから6年、ついに探していた憎き敵を見つけた。


「ぎゃっ!!」
俺が放った真空の渦がその兵士の両腕を切り落とした。
「俺の手が・・・誰だ!?」
俺は兵士達の前に姿を現した。
「お前か!!お前がやったのか!?」
殺気が込められた兵士の怒号に臆する事無く笑みを返す。
「威張ってるワリに脆い身体してんじゃん。」
「このガキィ!!やっちまえ!!」
兵士達が俺に襲い掛かる。
「・・・消えろ!!」
俺を中心に消滅魔方の陣を展開する。
「わぁぁ!!」
「助け・・・」
「ぎゃーー・・・」
自分の身体が粒子になって消えていくのを目にして断末魔の叫びを上げる兵士達。

その叫びが気持ちよかった

「そ・・そんな・・・」
一人残った兵士・・・俺の母をさらった兵士を蹴り倒し電撃を流す。
「がぁぁぁ・・」
最低限の身体機能以外を完全に破壊した。


兵士の顎を踏みつけ問い詰める。
「6年前、南西部の村で俺の母をさらったな?」
「・・・・!!  オ・・オマエ!!」
俺が誰なのか思い出したようだ。
「ゲハッ!!」
かつて俺がされたように兵士を思い切り殴る。
「母はどうした?」
本題に入る。
「・・・・・・」
「俺の前では黙秘権は存在しない。」
手持ちの短刀で切り落とされた手の断面を抉った。
「ギャッ!!」
「二度は言わない・・・母はどうした?」

「・・・・半年で廃人になった・・・だから殺した。」

「・・・・・・・・」
覚悟はしていた。しかし、こうして当事者から突きつけられる現実は

ビシィッ!!!

俺の心を壊した。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
両腕を天にかざし巨大な火球を発生させる。
「死ね!!死んで母さんに謝って来い!!」
火球を兵士に押し付ける。
「ギャーーーーーーーーー・・・・・・」
悶え苦しみながら焼かれていく兵士。辺りに肉の焦げる臭いが充満した。

骨まで燃え尽きた残骸をしばらく見つめる。
「・・・邪魔したな。」
孤児院の連中に一言告げ立ち去ろうとした。
「待って。」
その声に振り返ればさらわれようとしていた孤児達の先生が俺に近づいてきた。
「助けていただいて・・・本当にありがとう。」
彼女の声に警戒を解いた子供達も近づいてくる。
「先生助けてくれてありがとう。」
「かっこよかったよ!!」
「魔法使えるの!?」
「お兄ちゃん強いんだね。」
こいつらは何考えてるんだ。
「お前ら俺が怖くないのか?」
目の前で殺生をした俺が怖くない筈が無い。
「全然。」
「悪い奴らやっつけてくれたんだもん。」
母を奪われて以来、人の暖かさを忘れていた俺にとって 
彼らの声は    堪らなく嬉しかった。

この暖かさに我慢出来ず俺は久しぶりに泣き崩れた。


孤児院の連中に歓迎された俺は一ヶ月近くそこに滞在した。
暮らさないかと持ちかけられたが孤児という肩書きがつくのは嫌だったし
一人で気ままに旅する楽しさも覚えてしまった為断った。

それから5年ほど経ち徐々に俺の名は王国のブラックリストに名を連ねる事になる。
『尊き人命を奪う悪魔の子』という悪名が流れたため王国の息が掛かっいる町には
近づきにくくなった。

「ぶっ飛べ!!」
衝撃波で王国の兵士を薙ぎ払う。街中で親子にイチャモンをつけ暴力を振るっていた
王国の兵士見つけ返り討ちにしたのだ。
助けた親子と話をしているうちに騒ぎが大きくなったので逃げ出した。
人や建物の隙間を抜け路地裏に入ったその時。
「君。」
路地裏で俺が来るのを知っていたかのように男が立っていた。
「・・・やる気?」
手に魔力を集中させ戦闘態勢に入る。
「スカウトだ。」
「はっ?」
「オズマリアに入る気は無いかな?」
「私の名はテクスだ。君の様な強い人材を欲している。」

これがオズマリアに入るキッカケとなったテクス議員との出会いだった。


テクス議員の自宅に案内された俺は議員のまるで貴族に行うような待遇に
驚きながらも敵意の無い彼の話に聞き入った。
王国の廃絶に抵抗する為に創設された『独立開放組織オズマリア』。
しかし、王国自慢の『白騎士団』に対抗できる猛者が不足し
優秀な人材を集めているのだという。
「君なら白騎士団をも超えた存在になれるだろう。」
正直、一人でベルタ王国を相手にするのは無理だと思っていた。だが、共和国という
後ろ盾があれば・・・答えはすぐに出た。
「入ります。いや、是非入れてください。」
「決まりだな。」
議員が手を差し出し俺はその手を握った。

魔法を使えると言うことで俺は最初から高位のメンバーとして迎えられた。
大抵の者は子飼いの部下や軍を持ち正面から戦うのに対し
俺はあらかじめ敷いておいた陣や罠を発動させ大人数を倒す戦法を得意としていたため
借り受ける人員以外の戦力は持たなかった。また、王国に対し鬼神の様に戦う様が
アウトローながら関心を受けオズマリア幹部の位にまで昇り詰めた。


そんなある日テクス議員が、
「副官が必要ではないかな?」
と言い4人の人員を連れてきた。
「お・・お前ら!!」
俺は呆気にとられた。
「お久しぶりです。私はドラン以後お見知りおきを。」
「フランです。ヨロシクお願いします。」
「ウルフと申します、お力になります。」
「ドモっす。キノイでーす!!」
彼らは孤児院で出会った孤児たちだった。
「ぜひお前の部下に、と志願してきた者達だ。実力は保障しよう。」
「議員・・・」
彼の心遣いが嬉しかった。しかし、同じくらい「ナゼこんなにも俺によくするのか」と
疑問に思い聞いてみた。
 


「孤児院での立ち回り、を聞いてね。」
「はぁ・・・」
「あの施設は私の友人が建てた物だ。私もたまに出向く。そしてお前の事を聞いた。」
ドラン達と議員にそんなつながりがあったとは・・・
「しばらくして耳にするようになった『悪魔の子』。それとお前が同一人物だと
 思って部下に探させていた。そしてあの日、お前を見つけた。」
「あの出会いは必然だった・・・と?」
「そういう事だ。お前は王国に対してどこまでも非情になれる。だが非情なだけの
 戦闘機械ならオズマリアにはいらない。孤児達に見せた笑顔、町で親子を救った
 正義感、向けるべき感情をお前はわきまえていた。だからこそスカウトした。」

正直、ここまで使い物になるとは思ってなかった。と付け加えられ俺も苦笑するしかなかった。

「あの施設の恩人であると同時にココまでやってきた褒美だ。」
と、孤児院の創始者でテクス議員の友人ルーファス氏の姓を貰い受けた。
『オズマリアのコマンダー:ゼット・ルーファス』はこうして誕生した。

母の喪失から全てを失った俺はこうして新たな居場所を手に入れた。
しかし、未だに俺の心は音をたてて崩れ続けている。

何が足りないのか・・・・・こればかりは誰も教えてはくれない。                                
    
                                    第二話 〜完〜


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