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二重奏/2

ひょこ ◆13unNQzqXw氏

入学式当日に結成され、昨日1日で仲良くなったガクラン同盟は、2日目昼休みにして危機を迎えております。

原因:カナデに対する嫉妬

まあそれだけじゃないんだが、とりあえず俺の前の席にカナデはいる、んでそこには…
「ねぇ、カナデ。今日のお昼はお弁当?」
女子がいるのですよ、奥さん。
休み時間も、女子がカナデと今話している…確か乃木葉子(のぎようこ)さん…の周りに集まって来て楽しげに話していたんですよ。
特に乃木さんの席は、俺の斜め前、つまりはカナデの隣の席。
授業中もなんだか仲良さげな、雰囲気を醸し出しているんですよ。
これはあれですか?彼氏彼女の関係ですか?乃木さんみたいな美人さんと。しかも、他の女の子まで集めるモテモテっぷりですか?
考えてたら、また悲しくなってきた…名前3文字同じでガクラン装備。なのにカナデには女子が集まり、俺には野郎が群がる。
その野郎共の何割かが体目当てで集める所が更に駄目押し、何度体育倉庫に連れ込まれたか。
「はあ…」
と大きいため息をつき、前を見るがカナデと乃木さんはいなかった。
「俺もメシにしよ…学食学食っと」



食券を買い、並んだ列がスムーズに進み唐揚げカレーを受け取り、さあ喰うぞって振り向くと。
席が空いてないよパパン…
必死でクラスメートの顔を思い出しながら、怖そうな先輩方のいない相席出来そうな場所を探す。
黒ダイヤ発見、つまりはカナデ。しかも前の席が空いている。
「よぅカナデ。この席いいか?」
ちっさい弁当を食べてたカナデは、俺の声に顔を上げる。
「あ、ソウくん。いいよ、ね?ハコちゃん」
隣の子に尋ねるカナデ、そこにはカナデの彼女らしきあの子がいた。
「ん、いいよ別に」
きつねうどんをすすりながら、軽く返してくる。
「えっと、渡辺奏馬です。」
座りながら挨拶をする。
「…乃木葉子です」
口の中のうどんを飲み込んで答えてくる。
それっきり話が止まってしまった場を取りなすように、カナデが俺と葉子さんを交互に見ながら紹介してくる。
「えっとね、こっちが幼なじみのハコちゃん、それで昨日仲良くなったソウくんだよ」
カナデの言葉に乃木さんはうんざりしたように話す。
「知ってるわよ、昨日散々聞かされたし、それにうちのクラスの人間なら覚えるわよ。ねぇ、かなでうま君?」
「ぐ…」
そう、ガクラン同盟危機のもう一つの原因がこれだ。


今日は全て最初の授業だった訳で、名前の読み方の難しい生徒は確認されたんだ。


1時限目 現国
「あ〜、35番渡辺…かなで」
「はいっ」
「珍しい名前だな」
「次ラスト〜、ってスゴいなお前ら、え〜っと渡辺〜そうまか〜?」
「はい」

2時限目 古文
何か爺さんがもしょもしょ言ってた。
故に省略
ここまでは良かったんだ、ここまでは。

3時限目 化学
「渡辺〜、これ何て読むんだ?」
「カナデです」
「か・な・でっと」
「最後〜、渡辺…かなでうまっと。ヨシッ授業始めるぞ〜」
「ちょっと待ったー!」
「なんだ?渡辺の…馬の方」
「んなカマドウマみたいな名前有るかー!」
「かなでに馬でカナデウマ、何の問題がある」
「有りすぎだー!」
「ソ、ソウくん押さえて」
「止めてくれるなカナデ、こいつだけは修正してやらなアカン!」
この頑固な教師の間違いを訂正するのに授業の半分は潰れた。
乃木さんの言っているのはこれな訳だ。
更に問題なのは次の授業だ。

4時限目 地理
「35番渡辺かなで、だな」
「はい」
「授業始めまーす!」
「待った!!」
「ひゃっ」
「わり、カナデ驚かしたか」
「ううん、大丈夫」
「そーだ、授業中に大声出すな……ん?お前誰だ?」
「36番渡辺だー!」
「36番36番…これミスプリントだろ」
「じゃあ、俺は誰だー!」
「だってかなでに馬ってんなカマドウマみたいな名前…クスッ☆」
「キサマもかー!つか☆付けんなー!」
これでカナデと並んで呼ばれるのが少しイヤになった。


「いやあ、カナデが男友達が出来たって言うからどんな奴かと思ってたけど、こうも面白いキャラだとは、そりゃカナデも男なのに友達になるわね」
「男なのに…?なにカナデ男友達いねえのか?」
乃木さんの台詞に違和感を感じ尋ねてみる。
「幼なじみって言ったでしょ?カナデったら昔から私の後ろに付いてきててね」
「恥ずかしいから、言わないでよ」
乃木さんの二の腕をツツくカナデ。
そのナチュラルなイチャイチャっぷりに少し嫉妬してしまう。
「それでトドメに私達が行ってた中学フェリ女附属だったのよ」
「フェリ女附属ってあのお嬢様学校の?」
「うん、今は別にお嬢様学校って訳じゃないけどね」
そっかぁ、カナデが妙に線が細いと思ったらお嬢様学校出身だからか。最近女子校が共学になるの多いらしいからな〜、カナデはカナデで俺とは逆ベクトルで苦労したんだろな。


「いやしかし、そしたら2人が付き合ってるのも当然か」
「付き合ってるって」
「…誰が?」
俺の言葉に2人が問い返してくる。
「えっと、カナデと乃木さんが…違うの?」
すると乃木さんは俺とカナデを見て、いきなり大きくのけぞって笑いだした。
うわ、ムネでけー。
「あはははっ、そりゃ勘違いもするわよね。うん、キミ面白いよソウマ君、うん気に入った」
「はぁ、そりゃどうも」
「うんうん、よしカナデ。明日ソウマ君と遊びに行くわよ」
突然の提案に食べる手を止める俺とカナデ。
「いいけど、ソウくんの用事も聞いてみないと」
「明日土曜日だし、用事も無いけどいいのか?」
「いーのいーの、行くつもりだった映画のチケット3枚あるし」
こうして俺はいつの間にか、カナデ達と遊びに行くことになった。
女の子と映画…なんて甘美な響きだ。
ガクラン同盟万歳。


これは一人の男の子が大事なことを見落としたことから動きだす物語。


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