ユベルといっしょ☆寝起き編
十代は目を覚ました瞬間固まった。
隣でヨハンが寝息を立てている。それ自体はいつもと変わりはない。ただ、やたらとフリフリヒラヒラしたピンク色の服を身に着けているだけで。一般的にネグリジェと言われている物だ。
何故こんな状況になっているのか。寝る前は普通にパジャマだった。それは覚えている。自分の服を見ると昨日のままだ。となると原因は一つしかない。そこに思い至った所で、原因が目を覚ました。
ユベルは気だるげに頭を振って、いつものように十代に微笑みかけた。
「おはよう、十代」
「おはよう。…どうしたんだ、その格好」
「似合うかな」
照れたように笑うユベルに怒る気にはなれず、十代は冷静に感想を述べるだけにした。
「似合ってるけど…寒くないか、それ」
「心配してくれるんだ」
「そりゃな」
言いながらタンスから適当に服を引っ張り出して投げ渡す。
「これでも着てろ」
「ありがとう」
ユベルは服を手に取り口元へ持っていって、嬉しそうに微笑んだ。
「愛してるよ、十代」
「飯作っとくから、ちゃんと顔洗ってから来いよ」
例によってユベルの言葉をスルーして十代は部屋を出た。
ユベルが身支度をしてリビングに着くと、十代はコーヒーをカップに注いでいる最中だった。
テーブルにはトーストしたパンとバター。サラダにスクランブルエッグと手間はかかっていないが、朝食らしいメニューが並んでいる。
二つあるカップにミルクと砂糖を入れてかき混ぜ、片方をユベルの方へ押しやった。
「ありがと…面白い味だね」
面白いものなのかと感心しつつ、十代もコーヒーを口に含んで、途端、顔をしかめた。砂糖と塩を間違えて入れてしまったようだ。正直まずい。
「ユベル、無理して飲まなくていいから」
「どうして?せっかく十代が淹れてくれたのに」
「いいから。体壊すぞ」
きつめの口調にユベルはおとなしく従って、パンを口に入れた。
「美味しい」
「焼いただけだけど、コーヒーの後だと美味いな」
「十代が作ったからだよ」
「はいはい」
なんとなくほのぼのとした雰囲気で朝食が終わった所で、ユベルが満足そうに笑って言った。
「じゃあ、僕は帰るよ。またね、十代」
崩れ落ちる体が食卓に激突しそうなるのを十代が慌てて支える。しばらくしてヨハンが目を開き、周りの風景から大体の状況を理解すると手を頭に当てた。
「アイツ…またか」
とりあえず、今までの傾向から変な格好をしていないかと自分の服を見て、普通のシャツとズボン姿に驚いた。
「珍しくまともな格好だけど、アイツ何かあったのか?」
むしろ心配そうな様子のヨハンに十代は曖昧に笑った。
「…ああ、別に心配ないから」
「ふうん…」
まあ、十代が言うなら大丈夫だろうと、ヨハンはコーヒーを口に運んで、吹き出した。激しく咳き込んで涙目になりつつ十代を睨みつける。
「十代…また砂糖と塩間違えたのか」
「…悪い」
言うのを忘れていた、と十代はのん気に言っておもむろに口付けた。
いきなりキスをされて目をみはるヨハンに十代は笑いかけた。
「口直し。まだ足りないか?」
「そうだな…。先に片付けてから、な」
そう言ってヨハンが立ち上がる。
「約束だぞ」
だったらとっとと片付けよう、といつになくテキパキと片付ける十代を見て、これは今後手伝わせるのに使えるとヨハンは思った。
コンセプトは「ネグリジェ(フリル過多)」でした。そしたら何か増えました。完。詳しくは恥ずかしくて言えません。