重なる道

 外といってもサテライトの中である事に変わりはないが、締め切った作業部屋の中よりは開放感がある。一人で気楽にいたい時は愛機で外を走るのが遊星の常だった。
 ただその日はいつもと違っていて、自分の排気音に他のそれが交じって聞こえてきた。しばらくすると銀色に輝くDホイールが現れる。中に乗っている人物共々彼には見覚えがないものだった。
 その人物は遊星の隣にバイクを並べデッキを掲げるので、頷きを返した。互いにフィールドを展開してデュエルを開始する。
 相手の持ち札はD-HEROというシリーズらしい。融合で出されたエースカードはスターダストのおかげで破壊効果は防ぐ事が出来るが、攻撃力では明らかに劣る。為す術もなく、決着はあっさりついた。
 デュエルの後、なんとはなく互いにバイクを止めた。遊星の前に降り立った人物は見た目は華奢だがそれなりに上背がある。同じ年のはずなのに最近成長の著しい友人を遊星は思い浮かべた。彼ほどの背はないが、背中に流れている銀髪もあって、人混みの中でも十分目立つだろうと思う。
「こんな所でDホイーラーに出会うとはな」
 そう言って銀髪の青年―エドは髪をかき上げる。気障な仕草が違和感なく似合っていた。
「アンタ、強いんだな。スピードスペルを使わないのに、そこまで出来るなんて」
「ボクの時にはまだそんなものはなかったんでね」
「なかった時があるのか?」
「随分と昔の話だがな」
 質問に肩をすくめて返事をすると、エドは唐突に話題を変えた。
「ところで、エンジンの中を見せて貰って構わないか?」
 途端に遊星の表情が硬くなる。デッキの中身を見せるようなものだ。
「気のせいかもしれないが、少しぎこちない所がある気がするんだ」
 重ねて言われて、少し考える。相手の様子から信用出来そうだと判断して、場所を譲った。
 エドは軽く断るとカバーを開け中を見て、眉を顰めた。配線自体は無駄がないが、使っている部品が古すぎる。壊れてしまえば確実に手に入らない類の物ばかりだ。思わず指を差して持ち主に問いかける。
「この部品はどうやって手に入れた」
「その辺りで拾った」
「拾った?ジャンク屋でももっとマシな物が買えるぞ」
「…ジャンク屋とは何だ?」
 本気で不思議がっている遊星の様子に何となく事情を察したエドが頭を抑える。幸い、似たような部品ならスペアとして常備してある。いくつか手早く選ぶと工具を取り出し、許可をとらずにさっさといじりだす。遊星が少し慌てたように声を出した。
「何をするつもりなんだ」
「部品を交換する。自慢じゃないが、工学の博士号はとってある」
「しかし、そんな事をして貰う理由はない」
「お前の為じゃない、こいつの為だ」
「…そうか」
 それからしばらくして、部品の交換を終えたエドがエンジンをかけ直す。先程より軽やかな音を響かせるバイクに満足したように軽く頷く。
「これでマシになっただろう」
「…ありがとう」
「お前の為じゃないと言ったはずだ」
「こいつの代わりに礼を言わせて貰う」
 愛機を示す遊星に、少しだけ表情が緩む。
「…それなら、受け取っておこう」
「また、会えるのか」
「さあな」
「…。…そういえば、アンタの名前を聞いていなかった」
 今更な質問に虚をつかれたように声を立てて笑い出す。
「…そうだな、ボクに勝ったら教えてやってもいい」
「次は、必ず」
「期待しておくよ」
 彼が去った後に、自分の名前すら伝えていない事に遊星は気付いた。まあ、次の時でいいだろう。近いうちに会える気がするから。その思いに賛同するようにバイクが軽く音を立てた。






書いてて訳が分からなくなってきた感が見え隠れします。とりあえず、YOUSAYの走りの師匠がエドだったら楽しいんじゃないかと思って。なんかもう自分でも何が何やらですが、とりあえずエドっ子YOUSAUが萌えるんではないかという思いが伝わってれば幸いです。
一応エドっ子は数代前のキングで伝説のDホイーラー。身長はヘル以上ジャック未満。デュエリストは引退して、他のデュエリストの育成や孤児院などボランティアに従事設定。エド組(勝手に命名)の方々から設定をお借りしています。
博士号持ちは格好いいから付けてみました。論文出せば取れたはずなので、趣味で出したと。イヤッホウなせいか、エドっ子は機械好きなイメージです。そして、工学って幅広すぎるし、別に機械いじらなくたって博士は取れるなんてつっこみは工学部としてやっておきます。

powered by HTML DWARF