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 つい口をついてしまった言葉にに、ザックは驚いていた。悠夜は慌てて口を手で押さえるも、時既に遅し。
「俺?お前が、悠夜なのか?」
「まあ、一応」
 手に持っていた資料を、ザックは握り潰した。眼鏡から漏れる光は、少しよどんでいる。
「それより、なぜそんなに俺のことを知ってる?」
「いえ、大したことではありません」
「理由になってねーじゃん、お前も、国王も。何がちょっとだよ、俺にとっては重大問題なんだよ」
「重大問題?」
 葛城堅都のことですかと、ザックが聞く。悠夜の表情が一変した。
「何だ、その資料はイーストの新聞か何かか?何ノースで俺のことを調べてる?」
「それは言えません」
「へえ、これは世界問題にでも発展しそうだな」
「世界問題?ザック、どういうことだ?」
 国王なのに、こんなことも知らなかったのかと、悠夜は溜息をついた。
「おい、執事」
「はい」
家のこと、知ってるか?」
「いえ、どの資料にも載っておらず…誰も知りませんでしたので」
 ふーんと悠夜は呆れたように言った。これ位は知ってくれないとなと。
「ま、いいや。俺どうせ人殺したから絞首刑だろうし」
「なっ、悠夜くん!」
家のこと教えてやるよ」
 近くにあった椅子に悠夜は座る。もう顔つきは「女の子」でもなく、れっきとした「男の子」だった。
「俺さ、家の跡取でさ。このままいけば、将来はイーストの国王だったんだよね」
「それじゃ、お前」
「イーストの憲法では人を殺せば自分も同じような目に遭うからな。俺も殺されるよ、その内ね。跡取りってことでもしかしたら終身刑になるかもだけど。揉み消すなんて面倒なことはしないだろうしな、あの腐れ親父の性格上」
 ずっとを見ていた目線が、ふっと横へずれる。王を継げなくなった王、死が間近に迫っていると言うのはどんな気持ちなのだろうか。は悠夜の瞳の奥を探るようにして、思った。
「悠夜くん」
「メイ、泣くなって。そのために俺はここに来たんだから。サツから逃げて、逃げてね」
 泣き出したメイの頭を優しく撫でる悠夜。悠夜がどれほどメイを愛しているか、メイがどれほど悠夜を愛しているか。どんなものでも、量れない。
「もう、この世ともさよならだよ」
 何とも言えない響を含んでいる言葉に、耐え切れなくなった。そして、一番聞きたかったことを、が口にする。
「お前に一つ聞きたい」
「何?ノース王」
「十年前のオータムパーティー覚えてるか?」
 うーん、と考え込む悠夜。どうか、首を縦に振って欲しい。
「ああm覚えてるよ」
「じゃあ、そこで友達になった少年のことは?」
「知らね。だって俺ずっとパーティテーブルの下で泣いてたから」
「は?」
 下で泣いていた、知らない、会っていない?じゃあ、と会った女の子は、一体誰だったのだろう?ザックも首を傾げるばかりだった。
「そのパーティってさ、俺にとってはお別れのパーティだったから」
「お別れ?一体誰と別れたんですか?」
「姉さん」
 資料には「悠夜」しかなかった。姉のことなんて、書いていなかったのに。
「何だ、知らない?。姉さんが、何だっけな、理由は忘れたけど何かの理由で別れたんだよね。俺ら双子なの」
「誰かと友達になったって、言ってなかったか?」
「さあ?でもずっとずーっと、小言みたいに、えっと、何だったけな」
 あの時会ったのは、悠夜の姉だったのか?でも、確かに「あたしね、ゆうやっていうの」とそう言った。
「忘れた」
「少しでも、覚えてないか?」
 謎が謎を呼んで、深まるばかり、何一つ解決なんてしない。目に焼きついているのは、悠夜の哀しげな瞳、だけ。