今だから言うけど…本当は。始めて会ったその時から、心を奪われていたのかもしれない。
「あ、さん」
「……えと」
「俺、ね」
初めて会ったのは中学一年生の時。あたしは会ったことも話したこともなかったのに。ただ選択教科が一緒で、たまたまそのって人の後ろに座っただけだったのに。こっちはあなたの名前すら知らなかったのに、あなたは私の名前を知っていた。
「あ、さん」
しかも隣にあたしの友達のがいたのに。くんが呼んだのはあたしだけで。これがあたしたちの出会いだと、あたしは勝手に思ってる。それから何度となく、くんはあたしに話しかけて来た。
「あ、いた」
「いた、とは何よ!」
「さあな」
「意味分かんない」
「そうか?」
「そうだよ」
話の内容なんてない。ただ目が合って話して、それの繰り返し。
あなたの笑い声、決して大声で笑ったりなんかしなくて。いつも押さえ殺したように、だけどとても楽しそうに笑うの。その笑顔を作っているのは私で、「私が笑顔にさせているんだ」と、心成しか嬉しくもなったりする。あなたはとてもクールで、でも熱くて、そしてとても意地悪。
「ほら、お前の好きな奴ってあいつだろ?」
「違うって!」
「ふーん」
「何よ」
「何でもない」
そしてまた意地悪な声で笑う。その声が頭から離れなくて、その笑顔がずっと脳裏に焼きついてしまって。
「」
私を呼ぶ声が、ずっと頭の中に響いてる。くんによれば、女の子の中では私が一番親しいらしい。ああ…、あなたに、感染されてしまいそうだよ。