たぶんきっと
 戦うことで
 庇うことで
 仕えた人たちの
 手をとって歩きたかったんだと思う。












 戦って。










 鉄と鉄のこすれる音。かすれる音、斬撃。
 悲鳴、断末魔、叫び声。
 傍らには、震える姿。

 「大丈夫です、此処に隠れててください」

 潜めた声で、片手の件を確かめるようにちゃきり、と音を鳴らして告げる。
 御車も戦闘できるものを選んでおいたが、やはり治安の悪い地方では多勢に無勢、意味を成さなかったようで。
 やはり、自分が出るしかないか・・・。
 シンクレア家騎士のケビン=レグナードは必死に怯えたような表情でうなずく少女と、青ざめた表情の主人に微笑んで見せた。
 少女の頭を撫でるように剣を持っていない左手でその頭に触れる。ふんわりと擽る様な手触りに、これから血で汚れようとしている自分のことを一瞬考える。
 いや、守ることが自分のすべきことではないか――・・・。

 「まだ乗ってやがる!」

 お世辞にも綺麗とはいえない声と口調にケビンは容姿端麗といっていい表情をゆがめて、眉を寄せる。ぶすっとしたような、いじけたような表情。
 乱雑に生えた無精ひげの男は、どうやら鉈で御車2名を惨殺したようだった。その服は派手に血色で汚れていて、あきれるような、そんな感じがする。
 ばさり、とコートで中にいる主人らが見えないようにしながら扉を閉じた。
 振り返ることも無く、これから剣を振り下ろす自分の姿を見えないように、世界を、区切って。

 無精ひげの男の傍ら、軽く20はいるだろうか。
 いかにも貧相な身なりをした男性達。おそらく、金のありそうな馬車を狙って殺人を行い、金目の物を奪う気なのだろう。
 ・・・・・・させる気は無い。

 適当に剣を抜いた。

 「やるきか?にーちゃんよ。この人数じゃ、確実に・・・」
 「させないさ。私には、・・・・・・守るべき物がある」

 地面を蹴った。
 ばさばさとコートが風に羽ばたくような音がして、間合いが一瞬で詰まる。まずは、無精ひげの男から一番遠く、太目の頑丈そうな木の棒を持った男。
 キスでもするか、というほどの接近状態に、周りの空気が固まった。

 ばしゅっ・・・!

 血がとんだ。すばやく、首筋に引いた剣からは血は落ちない。切ったばかりの傷からは、出血に少々のタイムラグがある。
 どさり、と男は真後ろに倒れた。返り血が、長い白髪に朱くかかった。
 頬に一滴の飛び血。ケビンは緩く口元に弧を描いた。

 「これでもまだ、私が負けると思うか?」

 一瞬で怯えたように息を呑む男たち。
 そこで無精ひげの男が声を荒げた。

 「こっちはあと19人もいるんだぞ!まとめてかかれば勝てる!やれえっ」

 わあああっ!と恐怖を拭い去るように一斉に飛び掛る男たち。隙間を見つければ、そこに駆け込むように身をしゃがめて走りこむ。
 そのすきに、横腹を2名、足の筋を2名斬る。血が再び飛んで、次はワイシャツが汚れた。
 あと、15人。

 「手ごたえも無いな」

 短く感想を述べて、敵全員の背後で足先で地面に穴を掘るかのように回転。その勢いで剣を横なぎに振る。その背中に5人。大きな切り傷を作り上げた。確実に筋肉を断ち切っており、動ける状態ではない。
 もう、10人。

 「っく・・・!まとめてかかれえっ!」
 「まとめてかかっても同じだろうに」

 剣を音を立てて構えなおす。それでも剣先は地面に向いたまま。綺麗に構える必要は無いと判断したからだ。
 5人まとめてかかってくる。
 真正面の男の腹部に真っ直ぐと剣を突き刺し、真右に振り去る。横の男の腹部にも大きなダメージ。どろり、と派手に血が飛びかかってきた。
 気に留めることも無く、バックステップで残りの攻撃を避ける。

 「かは・・・っ!」

 背後から思い切り何かで殴られた。思わず息が詰まる。よろり、とよろけながらもそのダメージの大半を受け流し、逆方向に避ける。だが、

 「痛っ・・・!!!!」

 すぐに剣を逆手に持ち直し、自分の頭を殴った張本人の腹部にそれを突き刺した。背中に派手に生暖かい血液がかかったのを感じたが、また左にステップを取り避ける。
 どうやら頭を殴ったのは最初に殺した男の太い木の枝だったようだ。恐ろしいほどの硬度。鉄でなくてよかった、とどこか安心しながら丁度左目の位置にたれてきた血液に眼を閉じてしまう。乱雑に服の袖でそれをぬぐい、飛び掛ってきた残りを突き刺すようにして斬る。
 ボスのようにしている無精ひげの男に目線を向けた。
 血みどろに成りながらも戦う姿に、無精ひげの男は一瞬で青ざめる。

 「にっ・・・・・・・!逃げろおおおっ!!!」

 ばたばたともう10人に満たない男たちは亡骸をそのままに逃げ出した。
 その姿を睨む様に見据え、後姿が見えなくなればため息を一つ。すぐに頭部から痛みがしたが、馬車の方に歩み寄る。
 がちゃ、と扉を開けて。

 「終わりましたよ」
 「ケビン!血!」
 「私のは頭だけです。・・・・・・帰りましょう」

 飛びつくように血液を指摘する少女に少々弱弱しく微笑んでは、また外に出た。御者がいないのだから、自分がするしかない。
 適当に放り出した剣の鞘を拾ってそれに収めては、馬をはしらせるために御車台に乗るのだった。














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ついったーはネタの宝庫第二弾!
ゆーたんことユウさんのリクエストです!
グロ抑えました笑。
よろしければもらっていってください!よければ挿絵でも落書きしてください!(((((

それでは、リクエストありがとうございましたー!












091029