海を渡ってきた風が急勾配を駆け上がり、日に灼けた花崗岩に潮の色を吹き付ける。ミシディア領のほぼ中央に位置する聖峰”試練の山”は、緑と青の境を貫くように、何百年と変わらぬ姿で聳えている。 
 草木貧しい不毛の岩山。そのよりにもよって山頂に、三月程前、一人の男が小屋を建てた。風雨に洗われ色褪せた扉の脇には、不釣り合いに立派なミスリル製の看板が張り付けられている。そこに書かれている文字は、強烈な直射日光に削られ殆ど形を失っているが、かろうじてこう読める――バロンミシディア親善大使館。 
 強い日差しが降り注ぐ昼下がり。野晒し大使館の扉が開き、中から男が二人出てきた。前を行くのは、白金のような硬質の輝きを持つ長い髪をきつく結わえた長身の男だ。浅黄の長衣に細い鎖を編み付けた軽鎧を重ねた体は、装着物の嵩を引いても逞しいと形容するに十分だろう。甲部分に箔鉄を打ち付けた頑強な靴が、所々苔帯びた大地を踏む。恐らくは無意識に一定の調子を保つその歩き方からして、兵役経験者であることは想像に難くない。事実、その背に負った背嚢の上蓋中央には、一カ所だけ凧状に布色の違う部分がある。そこには以前、彼の所属を明らかにする徽章の類が縫い付けられていたのだろう。 
 一方、前を行く連れとは対照的に背を丸めがちにして歩くのは、滅紫の髪を頭蓋に沿って短く刈り、うなじの一房のみ綾を巻き付け長く背に垂らすという、何とも奇妙な髪型をした痩身の男だ。首元と左肩のみを覆う型の肩当てを付け、濃紺の袖無し衣から露出した二の腕に楔形の金具を皮帯で固定している。外臑から足の側面を保護するように金属板を貼り付けた靴は水面に落ちた木の葉のように流れ、その上に乗る重さをまるで感じさせない。足運びに合わせ、太股あたりにまで垂れた一条の髪が尾のように揺れる。 
 白金髪の男は小屋のある補峰と主峰を結ぶ吊り橋を渡り、古代遺跡のある脇峰へと連絡する岩棚に向かった。岩棚といってもその表面はほぼ平らで、件の大使館小屋を二軒ばかり優に立てられる程の面積がある。バロン戦役当時は、この岩棚へ登るための粗末な階段があったのだが、ミシディア沿岸に沈んでいた月連絡船浮上の際に起きた局地地震により、現在は崩れてしまっている。 
 男は瓦礫の積もった階段跡の手前で、やにわ跳躍した。その体は優に背丈の三倍はあろう切り立った岩壁を何の苦もなく越え、岩棚の上に降り立つ。 
 男にやや遅れて、その連れも岩棚に到着した。 
「お前よー、登るの手伝おうとか考えねぇわけ?」 
 少ない凹凸を手がかりにようよう岩を登り切った後続は、友情を振り返りもせず先を行った男に文句を投げる。 
「勝手に付いて来てその言いぐさは何だ。」 
 白金髪の男は涼しい顔で連れの非難を一蹴した。だが、それで沈黙する連れではない。 
「可愛くねえぇえ! 普段世話になってる礼に夕飯の調達付き合ってやろうってこの優しい気遣いが分かんねぇのかよ?」 
「だったら連日世話になりに来るな! 全く、国の再建はどうしたんだ! 遊んでいる場合じゃないだろうが!」 
「なぁーに言ってんの。再建は大工の仕事だ、俺様はこうして他国との交流を深めるために日々努力してるんじゃねぇか。」 
「何が交流だ、人の家の裏にデビルロード開けやがって!」 
「そりゃちょっとした手違いってやつよ。本当はバロンに繋がるはずだったんだけどなあ、ひゃっはっはっは!」 
「……不毛だ……」 
 頭痛を痛めた男はファブール海溝よりも深いため息を付いた。みすみす相手の掌中に乗ってしまった己の愚かさに腹が立つ。 
「ま、俺がこうして毎日遊びに来てやりゃ楽しかろ? お前一人でいるとどこまでも鬱屈すっからよ。」 
「はいはいはいはい身に余る光栄ですよ若様。」 
 投げやりに返し、男は背嚢に差していた前腕長の鉄棒を抜いた。滑り止めの布が巻かれた握りを持ち、円を描くようにして風を切る。と、棒の先端が三段に伸び、小型の槍に姿を変えた。 
 山の周囲に溜まる湿った空気が、飢えた敵意を真綿のように吸い寄せる。携帯性を重視した簡素な武器を手に、男は風に耳を立てた。獲物の気配を嗅ぎ付けた猛禽たちの蠢動を感じる。みるみる数を増す羽音は切り立った崖を登り近付いてきた。 
※昨年末から引き続き、巨鳥類は数を増し続けている。森林がちなこの国にあって希少な尾長麦の畑を荒らすに留まらず、果ては漁り小船まで襲われるとあっては、人手による狩りで頭数調整をしなければならない。この山は、散々人里を荒らした鳥たちが塒へ戻る際経由する場所だ。 
「こりゃ食い切れんわ。」 
 およそ十倍は下らぬであろう敵を視界に捉え、剣鼠頭の男は口笛を吹く。 
「しばらく鳥尽くしだな……。」 
 野ざらし大使館料理長は手にした得物で十字に風を切った。 
「また全部町へ持って行ってさばこうぜ。」 
「よしてくれ。”お惣菜屋さん”なんて看板を貰っても困るんだ。」 
 親善大使に愛嬌溢れる通り名が付くきっかけを作った男は、相棒の武器の矛先が己の方を向かぬ内に駆け出した。 
 一人突出した男の頭上を鉤爪が掠める。姿勢を低く構えた男は、袖口に留めた武具帯から金具――苦無を抜き、無防備な巨鳥の腹を喉元から縦に裂いた。焦げ色の血をマントで受け、牙剥く一つ目を苦無で潰す。 
「大当たりぃ! やったね俺様!」 
 外しようのない大きな的だが、満点圏である瞳孔の中心に命中したとなれば話は別だ。 
 四匹の巨鳥が浮かれる男に挟撃をかける。男は胸の前で交差させた両腕を羽ばたくように広げた。飛翔の叶わぬ翼から放たれた鋼鉄の羽根は、過たず巨鳥の眉間に吸い込まれる。急所を割られた鳥は、失速しながらも目標地点まで滑空を続け、折り重なって息絶えた。 
「ヒャッホー! 俺様無敵♪」 
 背後からの突進を跳躍で避け、最後の苦無を首の付け根に打ち込む。手持ちの飛び道具を投げ切った男は、腰に差していた短刀を抜いた。主力とするには心許ない武器であるが、残存している僅かな敵を葬るには十分である。 
 切れ味を確かめるついでに一匹切り払ったところで、男は異変に気付いた。敵が攻撃を止め、次々と飛び立っていく。 
「おンやぁ〜?」 
 巣に戻るのかと思いきや、そうではなさそうだ。皆、森へ降りていくのではなく、さらに上空へと昇っていく。敵の向かう先を見極めるため頭上を降り仰いだ男は、しばし言葉を失った。 
「な……!」 
 太陽を覆う巨大な影。翼で飛翔する生物とは明らかに異なる流線型のシルエットは、バロンを世界最強の軍事国家たらしめた今世紀最高の発明――飛空艇。 
「カイン!」 
「ああ、見えてる……。」 
 名を呼ばれ、専ら相棒の後方援護を務めていた男――カインは、半ば呆然と答えた。空を駆ける巨大な船体の影は立ち尽くすちっぽけな地上の影を飲み込む。 
「ありゃあ……”赤い翼”か?」 
 空き手でひさしを作り空を仰ぐ相棒の言葉に、カインは血相を変えた。 
「バカな! ミシディア上空は不可侵空域――」 
「でも飛んでるぜ実際。」 
 バロン戦役以降飛空艇が飛ぶことを禁じられた空域を侵し、船は悠然とミシディアの町へ向かう。 
「また戦を仕掛けようってか?」 
 今日と同じく良く晴れた日に故郷を焼かれた男は呟く。 
※「いや、侵攻が目的ならば、一機だけというのはおかしい。」 
 ※心ならずも、数多の地を焼く松明の掲げ手となってしまった国を故郷とする男は明確に否定した。 
 バロン王国空挺部隊を兵力として用いる場合、五機の飛空艇を一部隊とし、それ以下での運用はない。これは飛空艇という隠密性皆無の兵器を運用する上で考案された最小の戦闘単位であり、旗艦を先頭に鳥翼隊列を組み波状爆撃を最も効果的に行うための編成でもある。 
※もっと言えば、一機だけでの航行自体相当おかしい。一機だけで飛ぶことがあるとすれば、飛行演習中だけだ。国外領空で飛行演習? ありえない。 
「セシル……一体何を考えている?」 
 この世界で唯一”赤い翼”に命を下す権利を持つ者の名が口を付く。クリスタル戦役の英雄を疑いたくはないが、バロンの戦闘飛空艇が不可侵空域を飛んでいる事実は覆せない。 
「なぁ、」 
 憂いに身を沈めていたカインは、注意を促す呼びかけで我に返る。 
「あの船おかしいぜ。」 
 陽光を反射する飛空艇の軌跡を追っていた男が異常を訴えた。一目瞭然な事実を告げる相棒に、カインは呆れて口を開く。 
「何をそんな分かり切った――」 
「じゃなくてよ、こう、何かふらふらしてねぇ?」 
 予想通りの指摘を遮り、男は見たままを手真似で表した。カインは目を凝らし、上下に波打つ手の動きと飛空艇の動きとを見比べる。 
 観察を始めた直後から、拳大ほどに見えた流線型の鉄塊は輪郭を二回り程も増した。それから三つも数えないうちに今度は鶏卵大まで縮む。 
「どっか調子悪ぃのかねぇ?」 
「不時着しようとしている訳でもなさそうだが……。」 
 機関に故障が生じたのならば、まず着陸を試みるのが定石だ。しかし、巨大な船体を進める数多のプロペラは狂ったように回転しており、減速を掛ける素振りは全く見られない。 
 混乱する二対の瞳の先で、飛空艇の輪郭が再びぶれた。なめらかに拡大された船尾に、鮮やかなバロンの国旗が掲げられている。十字に打ち合った槍と剣の刃先で笑う悪魔の頭蓋は、気流の渦を従え誇らしげに翻った。 
「”赤い翼”……。」 
 カインは苦々しく呟く。※正規航行であることを示すミシディア国旗か、飛行トラブルを示す白旗に掲がっていてほしかった――僅かに残っていた希望が跡形もなく砕けた。 
 地上に渦を巻く複雑な思いをよそに、異常飛行を続ける”赤い翼”は視認出来る限界を超えていく。 
「どうするよ。」 
 短剣を腰に差した男は、寡黙な相棒に今後を問うた。 
「ここで議論していても埒があかん。街へ降りよう。」 
 簡単に言うものの、徒歩では一日もかかる距離だ。男が友人宅に押し掛け始めて間も無い頃、交通の不便を解消するために山頂から町の入り口まで結ぶ長大且つ粗末な滑走式策道を通したことがある。嫌がるカインに無理矢理縄を巻き付け送り出したところ、加速がつきすぎて縄が焼き切れ、丈夫が取り柄の竜騎士が全治一週間の怪我を負うという悲惨な結果に終わった。 
 ”火の玉大使”の異名を頂戴した怪我人の不貞腐れ面を思い出し、男はこみ上げる爆笑を必死に圧し殺す。 
「……非常に不愉快だが今はその件を蒸し返している場合じゃない。頼むぞエッジ。」 
「オッケー! んでは久々の♪」 
 横隔膜の痙攣を何とか治めたエッジは、”火の玉大使”事件以来、在庫を絶やさぬようにしている道具を懐から取り出した。 
※ エブラーナでしか入手できないこの道具は、見た目こそただの黒い小石だが、実際は特殊な配合の火薬を固めたもので、衝撃が加わると大量の煙を発する。当初は敵への目眩ましとして使用されていたのだが、長年の研究の末、拓けた空間ならば、水を越えない限り風の流れる方向へ移動する事が可能となった。 
※ これほど便利な道具が何故流通しないのか。それは、使用出来る者が限られているためだ。エブラーナ王家の人間――バロンの発音で言うとニンジャー――にしかこの道具を扱えない。エブラーナの現君主は、自分専用の便利道具を振りかぶり、勢い良く地面に叩きつける。 
「トンズラの術〜!」 
 爆発音と共に上がった多量の煙が、二人の姿を完全に覆いかき消した。 
 
 ミシディア国主都――創世神話の唯一神と同一視される大魔導師”アブサロム”が建国したとされ、数々の優秀な魔導士を育成、輩出する魔導国家である。悠久の歳月が流れるままに魔法陣の守護を失い、先のバロン戦役では第一の犠牲となった町並は、住民の努力とバロンからの支援により、今ではすっかり美しい佇まいを取り戻した。 
 幅広の薄い緑葉を撫でる風は湿りを含み、灼熱の季節の訪れを暗に伝える。色煉瓦を敷いた歩道でつむじを巻いた風が砂を巻き上げ、商店の木戸に吹き付けた。 
 穏やかな昼下がり。しかし、町は不気味なほど静まり返っている。物売りや、買い出しの婦人や、魔法学院の生徒など、普段ならば何処にでも溢れているはずの姿が、今日は何処にも見あたらない。大通りに軒を連ねる商店は一様に木戸を閉ざしている。 
 生きている町の気配を塗り込めてしまったかのような石壁が並ぶ住宅街に、高く軽い靴音が重なり響いた。元気良く軽快に響く足音を、小刻みでより軽量な足音が追いかけているようだ。先を行く足音は通りを渡り、路地を抜ける。だが、後を追う足音は路地の手前でふつりと止んだ。 
 全力で走っていた幼い少年が、後続の停止に気が付くまでは少し時間がかかった。栗色の髪をうなじで編み結わえた少年は、褐橙の糸で棘草模様を描いたチョッキの裾を翻し、路地の壁に寄りかかって息を整える連れの元まで引き返す。 
「ポーロムっ! 何やってんだよ、先行っちゃうぞ!!」 
 少年にポロム、と呼ばれた幼い少女は額に滲んだ汗を拭った。足に張り付く薄藍のローブの裾を持ち、上下させて風を入れる。差し出されたハンカチを握りしめ、少女は小さな唇を僅かに動かした。聞き取れなかった少年は、男女の差こそあれど瓜二つの顔を突き合わせる。ポロムはもう一度、肺いっぱいの酸素を集めて同じ言葉を口にした。 
「……先に行ってパロム……少し休んだらすぐ追いかけますわ……」 
 片割れの疲労を見たパロムは、やや高い位置にある彼女の頭を拳で軽くこづく。普段ならば五割増の利子を付けてやり返されるのだが、今は手を上げる気力もないようだ。 
「公園で座ってこうぜ。」 
 休憩を提案した少年はぐいと手を突き出す。ポロムは湿気を含んだ掌を重ね、引かれるままに歩き出した。 
 路地を抜け通りを渡ってしばらく歩けば公園がある。僅かな距離だが、疲労の浸みた足には永劫に等しい。公園の入り口に辿り着いた途端、ポロムの膝が崩れた。パロムは、その場にへたりこみかける少女を支え、花壇の囲いまで誘導する。 
 公園中央に据えられた噴水にハンカチを浸して戻ってくる頃には、ポロムの呼吸も幾分かは整っていた。だが、深く呼吸をするとまだ咳き込んでしまう。片割れに湿らせたハンカチを持たせ、パロムはその隣に腰掛けた。 
「……何かヘンですわ。」 
「んん〜?」 
 ハンカチを額に当て、ポロムは呟く。パロムは交互に空を蹴り上げ、見るともなしに噴水に目をやった。 
「パロムが優しいなんて、……絶対何かヘンですわ。」 
「ちぇーっ、何だよせっかく親切にしてやったのに。」 
 無心の奉仕に疑惑の眼差しを返されたパロムは口をとがらせる。 
 斜めに見上げる視線の先で、噴水が一際高く水を噴き上げた。一日を四つに分けた区切りごとに動く時報の仕掛けが動き出したらしい。やや青みがかった水が様々に形を変えて噴き上がる。 
 パロムが大がかりな仕掛けに見入っていると、噴き上がる水の真上に、何の前触れもなく巨大な白い煙が生じた。今まで幾度か同時刻にこの噴水を見たが、こんな仕掛けは無かったはずだ。 
「おいポロっ!」 
 パロムは慌てて、足下を這う小さな羽虫に気を取られているポロムの肩を叩いた。 
「なに?」 
「あれ……」 
 パロムの指先をたどり、ポロムも同じ異変を目にする。青い空を濁して立ち上った煙は風に吹き散らされ、人影を二つ空中に残して拡散した。 
 
 地面からおおよそ三メートルも離れた空間に現れたエッジは、視界が開けた直後、転移の不手際に気付いたがどうにもならない。噴水の尖塔に足を払われ、受け身も取れず鏡石張りの池に墜落した。派手な水しぶきが上がり、付近一帯水浸しにする。 
 一方、エッジにやや遅れて落下運動に入ったカインは、尖塔を蹴って速度を殺し、噴水池の縁に着地した。 
「大丈夫か?」 
 差し出された手を掴んで上体を起こしたエッジは、背筋に走った雷撃に顔をしかめる。 
「くそ、マジ痛ぇ……」 
 間抜けな相棒に肩を貸して地面に降りたカインは、右から左へ視線を回した。普段は昼下がりを憩う市民達で賑やかな公園なのだが、今日は猫の子一匹見あたらない――かと思われたが。 
「ニィちゃん! 隊長ー!」 
 元気溌剌な声に耳を叩かれ振り返る。尖塔の影からお揃いの顔をした子供が二人、カインとエッジの元に駆け寄ってきた。 
「よぉーす! 元気かパロポロ♪」 
 背中を丸めて縁に腰掛けたエッジは、見知った顔に笑顔を向ける。 
「ちょうど良かった。長老と面会願いたいんだが――」 
 挨拶もそこそこで本題を切り出すカインに、少年は人差し指を振ってみせた。 
「バロンの船の事だろ? その事で、オイラたちニィちゃん家に向かってたんだ。」 
「長老がお待ちです。祈りの塔へいらして下さい!」 
 ミシディア市を統べる長老の使いの言葉に、青年二人は二つ返事で応じる。早速、カインは少女を背負い、エッジは少年を肩車し、全力疾走で祈りの塔へ向かった。 
 
 遠く海を渡って現れた鉛色の光。翼を持たない人間の翼たるべくして生まれた夢の結晶は、強い輝きに伴う闇を地上に落とす。 
 初めて闇が訪れたその日、美しい町並と長くそれを守ってきた住民は炎の雨を浴し、世界初の被戦略爆撃国という烙印を押された。輪郭を失いながらも色褪せない悲しみのために、どれだけの涙が流されたことか。 
 試練の山を呑んだ闇は、森を覆い、間もなくミシディア市の境界に差し掛かろうとしていた。 




LastModify : April/14/2015.