「・・・・私は何故、あんなに憎しみに駆られていたのだろう・・・・」の活用
皆様こんにちは。身も心も寒さの染みいる季節ですね。
世の中の状況も相まって何とも凍えるばかりの日々ですが、何ともホットな大ニュース!
なんとこの講義、今回で10回を数えるのですよ。
……随分遅かったね、と?
そのツッコミ一言で凍り付きそうな教室ですが、えー、はい、さて。
本日の講義はこちら!

「・・・・私は何故、あんなに憎しみに駆られていたのだろう・・・・」

聞くからに言い訳のようで、その実言い訳で、しかも長いこの台詞。素敵に活用するのは困難では?とお感じになられるでしょう。
しかし、こういった台詞を活用してこそ、当講座も箔が付くというもの。

それでは早速、この台詞の活用例をお見せしましょう!



草木も眠る丑三つ時……一人の男が屋敷の玄関に立つ。
男の手に握られた大鉈。
刃はすっかり錆にまみれ、ところどころに残った銀色部分が、外灯を反射し輝く。
乱暴に扉を蹴り開けた男は、まず、二階へとその足を向けた。
先ほどの玄関扉とは違い、今度は慎重に扉を押し開ける。

キィィー……――

寝室の扉はきしみながらも、易々と男の進入を許した。
薄闇の帳が降りた室内に、規則正しい寝息が響く。
部屋の中央に置かれたベッド。
その傍らまで静かに歩み寄った男は、手にした凶器を振り上げた。

ドズンッ!――

鈍く忌まわしい音が、安らかな夜を引き裂く。
男は、何度も何度も鉈を振り下ろした。
これでもか。
これでもか!
男の目に宿る色を、人は狂気と呼ぶのだろうか。
男の口元は醜く歪み、今しもけたたましい笑い声が漏れだしそうだ。
思い知れ。
思い知るがいい。
私を馬鹿にした報いだ――
 

全てが終わり、部屋に静寂が戻ってきた。

ゴトッ……――

手から離れた鉈が、汚れた床に転がる。
男は、逃れられない過ちの前に立ち竦んだ。
枕から飛び散った羽毛が肩先に触れたのでさえ、火かき棒で突かれたほどに感じて飛び退く。
私は。
私はなんてことを。
生暖かい液体がべっとりと付着した手のひらで顔を覆い、男は天を仰いだ。
ああ、神様!
私はなんてことを!

警察に連行されながら、男は呟いた。

・・・・私は何故、あんなに憎しみに駆られていたのだろう・・・・




どうですか? 皆さん。
ふと我に返ったら、足下にエキゾチックな凶器とエキセントリックな××が落ちていた時。
この台詞はこんなにもドラマチックにあなたを演出・・・
してくれるわけがあるかぁ!!
誰ですかビデオを差し替えたのは! そこ、警察に事情聴取を受けた際有効などとメモを取らない!
良いですか皆さん、この台詞のこういう形での活用は決してしないでくださいね。
当講座の意義を自ら粉砕したところで、今日はこれまでとします。トホホ……