| "MANTIS" 第12話 文:えいじー ――性交は精神のみを傷つける有効な尋問手段である。 それは男にとっても例外ではない。 モロク、PM11:46。 儚く妖しげな光の灯る娼館内に、威厳高き男性の声が響く。 「生きていたか。探した甲斐があったぞ」 館内の雰囲気に動じぬ皇太子の声に、商人はひきつった笑顔で応対する。 「お…王子様が夜遊びをするとなると、こんな所まで出向く必要があるんですね」 「いや、娼館の客としてではなくそなたに用があって来た。 そなたが経営する娼館を全て回れば、もしかしたらそなたに会えるかもしれないと思ってな」 「そ、そうなんですか〜。光栄です、あはは〜……」 乾いた笑いを浮かべつつ、既に逃げ腰の商人。 その様子を察し、皇太子は表情を変えずに詰め寄る。 「言っておくが、既に全ての出入り口は近衛兵に封鎖させてあるからな?」 「ぇ…マジですか」 「マジだ」 「むぅー……」 早々に諦め、涙目で両手を上げる商人。 そこまで見届け、皇太子は表情を緩めた。 「――すまない、冗談だ。私はそなたを捕まえに来たわけではないよ、安心してくれ」 「へ?」 ・ 「なるほど、確認出来ているMANTISの生存者はそなたとウィザード殿、それにアサシンクロス殿か」 空き部屋に案内された皇太子は、隣室から漏れる嬌声を気にせず商人の話に耳を傾ける。 「現在はこの娼館がアジトに何かあった場合の第一集合地点になっているのですが、 2週間近く経っても現れない以上、他のメンバーは捕えられたか殺された可能性が高いと思われます」 「しかし王国が逮捕したのはマスターであるプリースト殿だけだ。 そなたを含め、他のメンバーについては手がかりすら掴めていないらしい」 「確かに、わたしがこの娼館のグループを経営してるなんて事、 カマキリと従業員以外では王子様くらいしか知らないですよね」 「うむ。……そうか、皇騎士殿の安否はわからないか」 「…安否がわからないなら、まだ希望はあります。でも、マスターは……」 「彼女の処遇については私の力不足だった。本当にすまない……」 「いえ、王子様の責任なんかじゃ……」 皇太子に返す言葉はなく、しばらく会話が止まる。 事が終わったのか、隣室からの物音も聞こえなくなり、二人を沈黙が包み続ける。 沈痛な面持ちでテーブルを見つめる商人に対し、皇太子は間を取って再び口を開いた。 「…商人殿。他のメンバーの消息を掴み、プリースト殿の無念を晴らして欲しい。 私に協力できる事ならなんでも――」 「言われなくても協力してもらうわ」 第三者の声。 振り向けば、腕組みをしたウィザードが開かれたドアに背を預け直立していた。 その瞳は皇太子を射殺しそうな程鋭く研ぎ澄まされている。 「他のメンバーは心配するまでもなく無事だろうし、あなたのロナ子への想いとかもどうでもいいわ。 マスターをあんな目にあわせた今回の黒幕をぶっ潰す、あたしの目的はそれだけよ」 「ウィズっち……」 「黒幕…グワイツ伯爵と関連があると言っていた組織の事か。 やはりその組織が今回の事件やメンバーの行方不明の原因なのか?」 「十中八九ね」 言いながらウィザードはソファに座る皇太子の元へと歩み寄る。 「黒幕を潰す為に、伯爵に奴らの居場所を吐かせる必要があるわ。 拷問はアサ子に任せられるから、伯爵を捕える手筈を整えて頂戴」 皇太子を見下ろし言い放つ彼女からは、皇太子の威厳を凌駕する程の気迫が放たれていた。 ・ 人気の途絶えた真夜中のプロンテラ城に、ひとつの影が飛躍する。 皇太子が娼館を訪れた日から数日後、アサシンクロスは商人の依頼を受け城内に忍び込んだ。 『王子様の話では、伯爵はMANTIS残党…つまりわたし達の報復を警戒して、 外出はほとんどせずに3階の自分の部屋に閉じ篭ってるらしいの』 橋を見張る兵をクローキングで欺きながら、商人から聞いた情報を復習する彼女。 『部屋の入口には常に見張りがいて、恐らく施錠もされている。 だけど1日に数回、食事や夜食の時に給仕の女の子が部屋に入るんだって』 閉ざされた門を避け、裏の壁面から2階バルコニーへと跳び移る。 『部屋に入った女の子はしばらく出て来ないみたい…奉仕でもさせられてるのかな? ともかくその子の代わりに部屋に入れれば、拷問の時間は確保できると思う』 『まずは給仕を捕え、そいつに成り済ます必要があるな』 『伯爵の部屋は通路の突き当たりだから、給仕の子が通るルートはある程度推測できると思うよ。 城内の見取り図ももらったから、頭に入れておいてね』 脳内のスクリーンに、商人から見せられた見取り図が鮮明に映し出される。 その図に自分が指し示した地点――3階備品庫に辿り付いたアサシンクロスは、 目的の人物が目の前の廊下を通過するのをじっと待ち続ける。 十数分後、食事を乗せた台車を押していた女性がその罠にかかった。 「騒ぐな。騒ぐと殺す」 突如室内に引きずり込まれた給仕の女性は、暗闇で刃を突きつけられて わけもわからぬまま身体を硬直させる。 「お前の役割を借りる。お前は私が給仕を終えて戻るまで、ここで大人しくしているだけでいい。 そうすれば無事に帰らせる。伯爵の相手も私が受け持とう」 最後の言葉に表情を緩め、素直に頷く女性。 その反応を見て刃を納めると、アサシンクロスは女性を動けない程度に拘束した。 「部屋に入る時の合言葉はあるか」 「ありません…制服を着ていれば大丈夫だと思います」 「成程、それではしばらく制服を借りていく」 手甲と脚甲を外し、女性から脱がせた制服とスカートを着けた姿で、 台車を押して伯爵の部屋へと向かうアサシンクロス。 部屋の入口を見張っていた兵は、特に警戒する様子もなくドアを開き、彼女を招いた。 「失礼します」 声色を変え、ゆっくりと台車を室内へと進めて行く。 ベッドに横たわっていた男は、彼女に気付くと中太りの身体を持ち上げた。 「ん、見ない顔だな。新入りか?」 男は紛れもなく、2週間前処刑場で見たグワイツ伯爵その者であった。 今回の任務の標的を前に、アサシンクロスは一瞬も動じる事なく思考を巡らせていく。 男は油断しきっており、拘束する事は造作もない。 しかし問題は拷問の内容だ。 騒がれると外の見張りが異変に気付き、拷問どころではなくなる。 だからと言って男を連れて城を脱出するのは不可能だ。 幸い、室内に長時間滞在しても外の見張りには怪しまれない。 この室内で、騒がれないように、拷問を遂行する必要がある。 「…まあ良い。食事は後だ、とりあえずこっちに来い」 思考の終了と同時に届く伯爵の声。 彼女は不安げな表情を演じつつゆっくりと歩み寄った。 ・ 「他の給仕には話は聞いているか?」 ぎしりとベッドを軋ませ、伯爵はベッドの上で両足を開く。 これから行わせる事を想像してか、ガウンに覆われた下腹部は既に緩い突起を作り出していた。 「……はい」 突起を凝視し、顔を紅潮させながら頷く彼女。 そのままベッドに上がると、上半身をはだけさせながら両足の間に正座した。 「…失礼します」 ガウンを捲り、露わになった肉棒に舌を這わせる彼女。 躊躇のない行為に反応し、肉棒はむくむくと固くなっていく。 「はぁ…ぁ……んむ……」 完全に固くなった肉棒を口に含み、数度往復させて口から離す。 そして豊かな乳房を露わにし、唾液にまみれた肉棒を包み込んで圧迫するように擦り上げる。 「く、ぉ……なかなか、積極的だな……」 小さく呻く伯爵に構わず、更に激しく胸を動かす彼女。 陰茎を挟む乳首は不自然に形を変え、先端の突起が往復の度に腹をかすめる。 その滑稽で非日常的な情景が、伯爵の感情を嫌が応にも高めていく。 「……っ、よし、このまま…出すぞっ!」 しばらく抽挿が続いた後、柔らかな感触に包まれた陰茎をビクリと震わせる伯爵。 その先端から放出された白濁が彼女の胸や顔に撒き散らされる――はずだった。 しかし伯爵が絶頂を迎えたにも関らず、痙攣する陰茎からは一滴の白濁も放出されない。 「ぁ――?」 解放感を得られぬ絶頂を味わい、呆けた声を上げる伯爵。 そして自分の陰茎の状態を確かめようと頭を持ち上げた時、その異変に気付く。 ひくつく陰茎の根元が、黒く太目の紐できつく縛り上げられていたのだ。 「……っ!?」 その異変の意味を把握する前に、奉仕をさせていた女に組み敷かれる伯爵。 瞬く間に両腕をベッドの端に縛り付けられ、刃が首筋に突きつけられる。 「――まず、外の兵が不審に思うような叫び声は出すな。 外の兵に気付かれた場合、お前は私に殺され、私は窓から逃げる事になる。 これは私にとってもお前にとってもいい結末とは言えない」 彼女の要求に、伯爵は顔を蒼白させながら頷く。 「よろしい。それではこれから尋問をさせてもらう。 質問内容はひとつ…お前と手を組んでMANTISマスターを捕えた組織の居場所だ」 「な……何のことだ?私は王国の指示に従いあのプリーストを逮捕しただけだ。 誰と組んだ覚えもないし、お前のような奴に狙われる覚えも……」 「――まあいい」 無機質な声と共に首筋の刃は退けられ、代わりに下腹部に鋭い快感が走る。 彼女が萎えかけた肉棒を優しく掴み、口いっぱいに頬張ったのだ。 「く、ぉっ!」 暖かな口内の感触と這い回る舌の感触に、肉棒はすぐに固さを取り戻す。 固くなった肉棒から口を離すと、彼女はしなやかな五指で陰茎を握り、素早く擦り上げた。 達したばかりで敏感になっていた伯爵は、数度の往復であっさりと2度目の絶頂を迎える。 しかし根元で尿道をきつく押さえられた陰茎は精液を吐き出す事ができず、 ビクリビクリとその身を震わせる事しか叶わない。 「射精したければ組織の居場所を吐く事だ。それまでは気を失うまで感じてもらうぞ」 息を荒げ断続的に襲う快感に耐えていた伯爵を嘲笑うかのように、 彼女は再びその淫らな双丘でひくつく陰茎を包み込む。 その感触によって1回、その後数度の抽挿と舌先による刺激によって2回。 伯爵の全身がビクリと震え、彼女の胸の中で哀れな捕縛者が暴れまわった。 「……強情だな」 5度の絶頂、それも射精を伴わず性欲が解放されぬ絶頂に達し続け、苦しそうに息を切らす伯爵。 しかし断固として情報を吐こうとしない彼に対し、アサシンクロスは一度離れる。 そしてスカートを脱ぎ装束を裂くと、露わになった蜜壷を張り詰めた陰茎に押し付けながら覆い被さった。 「居場所を吐けば、膣内に挿し込ませて射精させてやる」 とろとろと溢れる愛液を陰茎に擦り付けるように腰を動かしながら、耳元で囁く彼女。 伯爵の返事はないが、代わりに秘部と密着した陰茎が一際大きく痙攣する。 「…何もお前と奴等の関係を自白しろと言っているわけではない、『奴等の居場所』を吐くだけだ。 お前と奴等の関係など興味はないし、お前を陥れるつもりもない…安心しろ」 再び耳元で、僅かに口調を緩めて囁く。 そして胸や秘部を押し付けるように抱き締めながら優しく口付ける。 そこで、伯爵は折れた。 「――ジュノー南東、キルハイルの別荘……だ」 伯爵の言葉を聞き、彼女は再び顔を険しくしながら確認する。 「間違いないな」 「間違いない、さ、さぁ、早く、はやくしてくれ!」 「…わかった」 妖しく微笑みながら陰茎を膣口へと導き、一息に根元まで納める彼女。 その感触にもう一度伯爵が絶頂を迎えたのを確かめてから、 彼女は陰茎の根元に巻きつく戒めを解放し、同時に激しく腰を揺り動かす。 「ぉ、おぉ――っ!!」 瞬間、伯爵の咆哮と共にその下腹部が激しく痙攣する。 堰の切られた奔流は凝縮された粘性のまま勢い良く尿道口へ駆け抜け、 抑圧され続けていた欲望を、抑圧し続けていた彼女の膣内に撒き散らしていく。 「――っく、あぁぁ……っ!!」 膣内で陰茎が暴れ、子宮内が熱い粘液で満たされる感覚に僅かに身を震わせる彼女。 伯爵は下腹部を襲うかつてない快楽に打ち震え、その切なげな表情を眺めながら精液を吐き出し続けた。 ・ 「キルハイルの別荘、ねぇ」 馴染みの薄い地名に、ウィザードは首を傾げる。 「伯爵と奴等は互いに不干渉でいるのが基本だったが、一度私兵に奴等の尾行をさせた事があるそうだ。 だが、奴等がその別荘の裏庭に回ったところで見失ったらしい」 「裏庭の調査はできなかったのかな?」 「信頼関係に傷がつくのを恐れ、深追いはさせなかったそうだ」 「なるほどね…。お疲れ様、クロス」 商人への報告を終え、アサシンクロスは一歩下がる。 代わりにウィザードが商人に二歩詰め寄った。 「後はそこに殴り込むだけね。マー子、準備はいい?」 「国境検問所がもう閉鎖されている事以外は、ね」 「じゃあ、検問所が開く9時に丁度アルデバランに到着するように出発すればいいんじゃない?」 「そうだね。それじゃ……明朝6時、モロク南カプラ前で」 向き合い、頷く二人。 二人から離れた距離で次の命令を待つアサシンクロス。 頭をもがれたカマキリが、復讐の為の第一歩を踏み出そうとしていた。 |