| "MANTIS" 第3話 文:えいじー ――最強の矛で最強の盾を突けば、より強い方が残るだろう。 矛盾は起こらない。「同等の価値のモノ」など存在しないから。 プロンテラ王城、PM5:25。 夕陽と照明とが多重の影を作り出す演舞場に、床を踏み込む足音が大きく響く。 続いて男の掛け声と木刀が打ち合う音が連続して響き、数刻後にぴたりと止まる。 「ま…まいった!」 喉元に木刀を突きつけられ、男は降参する。 女は突きつけた木刀を手元に戻し一礼した。 「…お疲れ様です」 「くそっ、今のは自分でもいい線行っていたつもりなんだが」 「はい…最初にお手合わせした頃に比べて格段に上達しています、皇太子様」 「そ、そうか!よし、もう1回だ!」 「…残念ですが、もうお時間です。続きはまた来週ですね」 言いながら男の木刀を受け取り、女は小さく微笑む。 「……うむ、それではまた来週、この時間に」 皇太子と呼ばれた男は一瞬名残惜しさを見せるが、 衣服と共に表情を正し、執事の立つ正面入口へと去って行った。 「……」 男を静かな瞳で見送った後、女は演舞場隅にある倉庫に木刀を片付け、 側に置いてあった肩当てとマントをゆっくりと羽織る。 ――皇騎士にのみ着用を認められる、真紅のマントを。 ・ 「ロードナイト、只今戻りました」 アルデバラン・特別アジト。 王国直属のプリーストにワープポータルを出してもらった皇騎士は、 時計塔前からこのアジトまで迷う事なく辿り付いた。 新参の彼女にとっても、既にこのアジトが住居として定着しているのである。 「ローちゃんお帰り〜!王子様のサインもらってきた?」 「…申し訳ありません、筆記用具を準備する前に指南が始まってしまって……」 「むー、そっかぁ」 「ねね、ロナ子。次はヘッドクラッシュで出血させて血文字でサインしてもらうのはどうかな?」 「え…そ、それは……」 「ウィーちゃんごめん、さすがに皇族を敵に回してまでサイン欲しくないよ…」 「だけど王子の血液なら貴重なホムの材料になるわよ?ハイオークと王子の細胞混ぜてハイオージとか」 「いやウィーちゃん、あたしが欲しいのはダジャレホムじゃなくてサインだから」 帰宅早々始まるクリエイターとウィザードの寸劇。 いつもの事ながら、皇騎士は戸惑いながら二人を交互に見る事しかできない。 そんな彼女に助け舟が出されるのも、またいつもの事であった。 「あら、ロナ。お帰りなさい」 エントランスホールから伸びる階段を降りて来たプリーストが、皇騎士に気付き声をかける。 その声を聞き、皇騎士は気をつけの姿勢でプリーストの方向へ向き直った。 「はい、只今戻りました」 「マスター、王子の血液サインと精液サイン、どっちが欲しい?」 「……ウィズ、いきなり何の話?」 「あーごめんマスター、こっちの話だから。ほらウィーちゃん、テストの続き行くよー」 際限なく続く寸劇にオチをつけぬまま、クリエイターとウィザードは実験室の方向へと向かって行った。 そしてホールには皇騎士とプリーストの二人だけが残される。 「王城出張、ご苦労様。そろそろ慣れた?」 「はい…ですが、私などが皇太子の剣術指南という大任を任されてよろしいのでしょうか……」 「あら、皇騎士という地位を考えれば割と適任だと思うわよ?」 「…そうなのですか……マスター、そのような地位を私に与えてくれて感謝致します」 カマキリの一部となる前、彼女はごく平凡な一騎士だった。 ルーンミッドガッツ王国の騎士は職位上では兵士と同じ立場に過ぎず、 試験に合格できるだけの実力と意志があれば誰でもなる事ができる。 それに対し職位や称号としての意味合いも含まれる騎士がいわゆる皇騎士、ロードナイトであり、 どんなに優れた実力があっても、それだけでは到底皇騎士になる事はできない。 戦果・家系・上納など、目に見える決め手がどうしても必要であった。 申し分ない実力を持っていながら、決め手に欠ける彼女は騎士の立場に甘んじていた。 そんな彼女に手を差し伸べたのがカマキリであり、プリーストである。 既にカマキリはホムンクルスの提供や「個人接待」により王国上層部との強力なコネクションを保持しており、 そのコネクションは彼女にとって充分過ぎる決め手となった。 プリーストの手腕により、彼女は皇騎士となる事ができたのである。 「ロナ、感謝してくれるのは嬉しいけど…貴方にもともと皇騎士として相応しい実力があったのは確かなんだから、 もっと自分に自信を持たなきゃ駄目よ」 「…はい」 「貴方は私が見初めたギルドの楯。その使命と責任は理解しているわね?」 「はい」 「プロンテラ騎士団に忠誠を誓うと同時に、カマキリの一部として私に忠誠を誓えるわね?」 「はい」 「自分の実力と私の思想を信じ、それを貫けるわね?」 「はい」 「ふふ…よろしい」 微笑みながら、プリーストは皇騎士の頭を撫でる。 「夕食後、落ち着いたら入浴を済ませて私の部屋に来なさい。待ってるわ」 「……はい」 皇騎士の返答に頷き、食堂の方向へと消えるプリースト。 一人残された皇騎士は、頬をわずかに紅潮させながらその後ろ姿を見つめていた。 ・ アジトでの食事において、家族の団欒のように皆が集まると言う事はあまりない。 各々が自分の作りたい食事を作り、独りかあるいは居合わせた人と食べるというのが普通である。 そして夕食後も各自自由行動、用事のある者は用事に赴き、用事のない者は寝間着に着替えて就寝する。 皇騎士は独りで夕食を済ませ、プリーストの言いつけ通り入浴も済ませた。 そしてマントや鎧を片付け、下着の上から黄色いレースのネグリジェを羽織る。 その恰好のまま、プリーストの部屋の前までやって来た。 皇騎士という立場上深夜に急用が出来る事もしばしばあったが、 今日はもう外出する事はない、そう彼女は確信していた。 ――入浴を済ませて部屋に来なさい。 いつもの「誘いの言葉」を、プリーストに言われたから。 「ロードナイト、只今参りました」 「どうぞ、開いてるわよ」 扉の向こうから遠く響くプリーストの声を確認し、皇騎士は扉を開ける。 オレンジ色の照明がわずかに絞られた部屋の奥、彼女は幅広のベッドに座り妖しく微笑んでいた。 服はプリーストの服のままであったが、真っ直ぐに降ろされた長髪やラベンダー基調のフレグランスの香りが 透過色のネグリジェを羽織った皇騎士よりも妖艶な雰囲気を醸し出している。 「…お美しいです」 自然と、言葉が漏れた。 「ふふ、ありがと」 プリーストは立ち上がり、ゆっくりと近づく皇騎士を抱き止める。 そして、そのまま深く唇に吸い付く。 「…ん……ぅむ……」 閉じられた皇騎士の歯を舌でノックし、開かせる。 露わになった舌に舌を絡ませ、そのまま唇の端を、歯の裏を、舌の奥を味わう。 「ふ…はぅ……」 執拗な責めを大人しく受け入れる皇騎士に満足した彼女は、 皇騎士の口内を味わいながらネグリジェのスカートをたくし上げていく。 そして下着の上から押さえつけるように秘所を撫で上げた。 「……ひぅ!」 「可愛らしい下着ね…でも、もう汚れちゃってるわよ?」 「は…ぁ……申し訳、ありません……」 微笑みながら、皇騎士を優しくベッドに寝かせる。 そしてその上に覆い被さり、秘所をさすりながらネグリジェを脱がしていく。 掌と下着とが擦れ合う摩擦音に、わずかに水音が混じっていた。 「…ぁ……ま、マスターは…お脱ぎにならないのですか……?」 「いいから私に任せなさい…まずは貴方を脱がしたいの」 「…わ、わかりまし……ふぁあ……っ!」 プリーストの指先からクチュクチュといやらしい音が響き始め、 白地にワンポイントの下着が愛液に染まっていく。 それを確認したプリーストは手早く下着を降ろし、 程よく濡れた皇騎士の秘部を露わにした。 「…っ……」 「相変わらず、初々しい色ね」 「い、言わないでください……」 人見知りがちで異性への関心も薄かった皇騎士は男性経験が薄く、 男の味を充分に知らない花弁はわずかな刺激にも敏感に反応した。 その反応を楽しむ為、プリーストは両脚を大きく開かせて秘所に吸い付く。 「…ぅうう……っ!!」 下着越しに撫でられた時とは違う感覚に大きく身体を仰け反らせる皇騎士。 そんな彼女の上体を抑え、プリーストは愛液を吸い出しながら手探りで両胸をまさぐる。 「我慢しないで、気持ちいいときはもっと声を出していいのよ?」 「……っ、は…はぃ……っ」 プリーストよりは小さいがバランス良い大きさとも言える皇騎士の胸が、 彼女の両手に揺られ妖しく形を変えていく。 ツンと張った頂点の突起を指で刺激しながら、唇で下腹部に見え隠れする突起を啄む。 「は、あぁ、っ――!ます…た……ぁあ…っ!!」 シーツにしがみつきながら必死に快楽に耐えようとする皇騎士だが、 プリーストはそれを上回る速さで快楽を注ぎ込む。 胸への愛撫を強め、膣内に舌を滑り込ませ、鼻先で擦るように淫核に刺激を与え、 彼女が瓦解を防ごうとするのを許さない。 「はぁ、はぁ……ま、マスター、…もう…も…ぅ……っ!」 嬌声に混じって紡がれた、彼女の最後の通告。 恐らく、プリーストがもう一度淫核を弾くだけで彼女は達していただろう。 ――だが、プリーストはそこでぴたりと愛撫を止めた。 「…ぇ……ぁ、マスター……?」 絶頂の直前で引き戻され、僅かに不満混じりの声を上げる皇騎士。 そんな彼女に悪びれる様子もなく、プリーストはベッドから立ち上がった。 「ごめんね。今日の本当の相手は私じゃないの」 言いながら部屋の隅にあるクローゼットまで行き、ゆっくりと扉を開ける。 クローゼットの奥から現れたのはオペラマスクを着けた全裸の男だった。 ・ 「ぇ……」 皇騎士の戸惑いを気にせず、男は彼女の横たわるベッドへと近づく。 絡み合う二人の様子をクローゼット越しに聞いていたのだろう、 男の下腹部は既に高々とそそり立っていた。 「ロナ、この方が今日のお相手よ。 この方は王城の上層部の方で、前々から貴方に興味があったそうなの」 ――プリーストは知っていた。 そして、皇騎士も気付いていた。 無言で近づく仮面の男が、夕刻に演舞場で指南した相手……皇太子である事に。 「この方は城内でも発言力のあるお方で、私達のギルドへの援助に関して 便宜を図って下さるそうよ。だから……わかるわね?」 プリーストの言葉に、皇騎士は静かに頷く。 これから自分がするべき事はわかっている。 そしてそれを拒む理由は存在しない。 その行為がカマキリを、そして彼女を助ける行為になるのだから。 「…お客様…どうぞ……」 小さく声を上げながら、皇騎士はベッドに上がった男に向けて控えめに股を開く。 男はそのしなやかな太股を持ってさらに大きく開かせ、充分に濡れている秘唇に肉棒をあてがう。 「は、あっ…」 先程の行為で高まっていた彼女の秘部は、先端が触れただけでびくりと反応する。 つられて震える膝裏を支えながら、男は一気に腰を前に進めた。 「ひぁ――っぅう……っ!!」 指よりも舌よりも太い男根が、一気に最奥まで侵入する感覚。 その感覚に収まりかけていた快楽を呼び戻され――あっけなく、皇騎士は達した。 「…はぁ……ぁ…っ」 シーツにしがみついたまま息を荒げる彼女に対し、男は休む事なく全身を愛撫する。 最初は両肩を押さえて唇や首筋に口付け、 次に仰向けの状態でも形を保つ美しい乳房に吸い付き、 そして腰を前後させながら太股やふくらはぎまで頭を戻し、口付ける。 日頃の鍛錬によって鍛え上げられ、しかし女性特有のしなやかさを失っていない彼女の身体は、 男に触れられるたび、口付けられるたびにやわらかな跡を残していく。 そんな肌の感触を確かめながら、男は腰を動かし続ける。 「…あ、く、…ぅ……ん」 両胸に手を当て、撫で回しながら腰を動かすたび、 皇騎士の口からリズミカルに吐息が漏れる。 そんな反応を楽しむうちに、男も次第に高まっていった。 「く…そろそろ……。やはり、出すのは外の方がいいのか?」 無抵抗の皇騎士を犯しながら、男はプリーストに尋ねる。 プリーストは微笑みながら首を横に振った。 「いいえ…胸でも口内でも膣内でも、お客様の望む場所に出していただいて構いませんわ」 更に彼女は犯されている皇騎士に問う。 「ロナ、モンスターでもホムンクルスでもない、人間の男性に膣内で射精されたら 妊娠する可能性もあるけれど……構わないわね?」 「…はい。もちろんです」 皇騎士は、即答した。 その言葉を聞き、男は感極まったように腰のペースを速める。 一度達して敏感になった膣内を急激に責められながら、 皇騎士は顔を背けて必死に快楽に耐え、やがて訪れるであろう膣内への射精を待ち続ける。 日頃気丈な姿を見せていた女性を裸にして犯し、 下半身が引き締まり、それでいて挿入経験も少ない理想的な膣内に肉棒を挿し込み、 自分の腰の動きによって絶頂を迎えさせ、 そして憂いを負う事なく最奥まで突き挿し、射精する。 ――男という生き物にとって、これ以上至福な行為があるだろうか。 「――っく!」 男が絶頂を迎えて呻き、太股を抱き寄せるように根元まで彼女と密着させる。 そして腰を止めたままビクビクと身体を震わせた。 「…ぅ……っう……っ!」 顔を背けたまま、皇騎士は精液が注ぎ込まれる感触にじっと耐え続ける。 最奥に当たって逆流し、膣外に溢れた精液が股を伝い始めても、 男が余韻を味わい終えるまで耐え続ける。 「……ふぅ」 射精が終わり一段落した男は、肉棒を引き抜かずに彼女に覆い被さる。 そして胸や唇にキスを繰り返しながら問い掛けた。 「――できれば、もう一度愛したいのだが」 問われた皇騎士はちらりとプリーストの方を見る。 プリーストは妖しく微笑みながら頷く。 「…はい……お好きなだけ…どうぞ」 言いながら、皇騎士は男の肉棒が自分の膣内で更に大きくなるのを感じる。 次の瞬間、彼女は男に唇を塞がれ、先程以上の勢いで犯され始めた。 ・ その後男は皇騎士の膣内に2度放ち、引き抜いた後プリーストに咥えられて1度射精した。 接待に満足し帰路につく男を見送った後、プリーストは皇騎士の横たわるベッドに上がる。 「たくさん、出してもらったわね」 白濁にまみれひくつく彼女の秘唇を開き、中に溜まった精液を掻き出すように愛撫する。 「…ひぁ……ぁ」 膣内に指を入れられた瞬間びくりと身体を震わせるが、特に抵抗は見せない。 短く息を吐きながら、プリーストの指の動きに身を任せ続ける。 「――ねぇ、ロナ」 「…ぁ……は、はい」 「中に出されるのは、やっぱり嫌だった…?」 精液を掻き出しながら、プリーストは申し訳なさそうにつぶやく。 そんな彼女の様子を見て、皇騎士は慌てて答える。 「そ、そんな事はありません!」 「接待としてはあの対応がベストだったけど、貴方の身体を考慮したら、本当は…」 彼女の想いが杞憂である事を示すように、皇騎士ははっきりと返答する。 「マスターが抱く理想を貫くのが私の使命です。私の身体の事など…関係ありません」 「ロナ……」 「私を拾ってくださった日から、私の身体はマスターの物です。 マスターの幸せの為にこの身を尽くせる事こそ…私の最高の幸せです」 皇騎士の返答に愛撫の指を止めるプリースト。 そして身体を乗り出し、横たわる彼女と向き合う。 「私の幸せの為なら、貴方はどんな事でもできると言うの?」 「はい」 「……死んでしまっても?」 「それでマスターが幸せになれるなら」 「私が非情な悪に染まっても、同じ事が言える?」 「その時は、私も悪に染まります」 「…もしも、プロンテラ騎士団と私が対立したら?」 「――皇騎士の座と騎士団への忠誠を捨て、貴方に着いて行きます」 微笑みながら、皇騎士は答えた。 …少しの間、プリーストは言葉を失う。 想像以上の、狂信とも言える彼女の忠義に僅かに気圧されて。 しかし同時に、プリーストは例えようもない幸福感に包まれていた。 騎士団への忠誠も皇騎士自身の命をも打ち砕く、不変不動の価値観。 そんな「最強の楯」の中心に、自分の姿が刻み込まれているという事実に。 「……。」 綻ぶ表情を悟られぬよう、プリーストは無言で皇騎士から離れベッドから降りる。 彼女の忠誠に、愛に応える為に。 「…あ、あの…マスター……?」 ――何か気に障る事でも言ってしまっただろうか。 そう問おうとした皇騎士の言葉が止まる。 彼女がするりと服を脱ぎ、美しい裸体を、愛液の溢れる秘所を皇騎士の前に晒したから。 「貴方が犯されているのを見てたら我慢できなくなっちゃった。 疲れてると思うけど…私も貴方を抱いていいかしら」 その言葉を聞いた瞬間、皇騎士の瞳が喜びの光に満ちる。 「――はい……っ!」 ベッドの上に上がり、飛び込むように皇騎士に覆い被さるプリースト。 そんな彼女を受け入れ、抱き締め、ぴったりと密着させる。 「あぁ……マスター…マスター……っ!」 二人の舌が絡み合い、潰れた両胸の先端が擦れ合い、 そして密着した秘所が皇騎士の中に出された精液を求め合う。 夜が明けるまで二人の交わりは続く。 夜が明けても二人の関係は続く。 いつの日か、二人がひとつになるまで。 |