| "MANTIS" 文:えいじー ――「いい女」の条件。 それは、男にとって「扱いやすい」女を演じられる事。 プロンテラ、AM2:13。 眠りに落ちた街の一角に、数人の男の話し声が小さく響く。 そこに重なるように複数の軽い足音が響いて止まり、折り重なる衣擦れの音と共に男女の話し声が共鳴する。 「お疲れ様です」 「封鎖は完了した?」 「はい……指示通り、この周辺で枝テロの予告ありと住民に通告して城内に避難させました。 逃走経路も封鎖、ホシは現在、プロンテラ街内に隔離されているはずです」 「御苦労様。後は私達が処理するから、引き続き警備をお願い」 「はっ」 タン、という踵の音を響かせ、軍帽を被った兵士が敬礼する。 敬礼を受けた女性は踵を返し、他の女性達と共に広場へと歩き出した。 ・ 静寂に包まれていた広場に響く足音が、少しずつ大きくなっていく。 ――やがて、広場の街灯が彼女達の姿を照らし出した。 「さって、これからどうしようかねー?」 先程の声の主であるウィザードを先頭に、 「…マスターの指示通り、定刻が来るまで待機しているのが懸命でしょう」 右側には希少な上位2次職であるロードナイト。 「ん、それはウィズっちもわかってるでしょ。どうやって暇を潰すか、って事でしょ?」 そして、左には鉄製のカートを引いたごく普通のマーチャント。 一見アンバランスにも思われる3名が、しかし互いに対等な関係を前提として会話を続けている。 「そそ。せっかくだからここで大魔法でも撃ってみる?街中で大魔法なんて、住民が避難してる今くらいしかできないし」 「い…いけません。犯人が物音に惑わされて予定外の行動をしたら作戦に支障が……」 「大丈夫よ〜。マスターならどんな事があっても大丈夫だろうし、むしろアクシデントを歓迎するんじゃない?」 「ん、わたしもそう思うな。ロナさんの考えももちろんわかるけどね」 「マーチャントさんまで…。仮にマスターなら大丈夫だとしても、万一家屋に被害が及んだら一大事ですよ……?」 「はいはい、わかったわよ。ロナ子ちゃんに免じて中魔法で我慢しといてあげるわ」 ・ 兵士達が女性達を見送ってから、程なくして小さな爆音や雷鳴が遠方に響いた。 「お、始まったな」 「ああ。彼女達の話通りなら、先週から続いた連続強姦事件もこれで一件落着ってわけだ」 「…しっかし、レイプ魔一人相手にこんな大々的な捜査をやらせるなんて、あの女達何者なんだ?」 「なんだ、お前知らなかったのか?」 「へ?」 「……『カマキリ』だよ」 兵士の単語を聞いた途端、もう一方の兵士の顔が凍りつく。 「…それであいつら、職業名で呼び合ってたのか……」 「ああ、噂じゃ彼女達の個人情報は全て秘密事項らしいからな。職業名がコードネームみたいなもんなんだろ。 彼女達が関ってるって事は、そのレイプ魔も俺達の手に負えないものなんじゃないか?」 「かもな。……あーあ、あの皇騎士様結構タイプだったんだけどなぁ」 「ばっか、どの道皇騎士って時点でお前にゃ不釣合いだよ」 ――談笑する兵士達の視界の陰を、一陣の風がよぎる。 眠る街を潜り抜け、兵士達の間をすり抜けて。 毎夜街を揺り起こしていた災いの飛躍は、風に舞う落葉だけがその存在を捉えていた。 プロンテラ大聖堂。 普段から厳粛な雰囲気が漂うこの空間は、この時間・この状況を迎えて更なる静寂に包まれている。 その静寂の中、ひとり教壇に向かい祈りを捧げる聖女の姿があった。 静寂を壊さぬよう、言葉にならぬ言葉で祈りの言葉を紡ぎ、 彫像のように姿勢を崩さぬまま、祈りを続ける彼女。 ――突如姿を浮かべ、その静寂に土足で踏み込む存在。 「熱心なモンだな」 祈りを止め、プリーストは振り返る。 彼女が暗闇の中に認めたのは、ぼろ切れを羽織った大男の姿。 「どなたですか?現在街中はプロンテラ騎士団によって封鎖されているはずですが……」 「ああ、そうみたいだな。なんであんたはここにいるんだ」 「大聖堂は天と地上を繋ぐ場所。神や御霊が迷う事のないよう、どんな状況でも完全に留守にするわけにはいけないのです」 「……へぇ」 口の端を歪め、男はいやらしく笑う。 「なぁ司祭様、見ての通り俺は哀れな迷い子だ。ちょいとポータルで道案内してくれねぇか?」 「…構いませんが、もう時間も時間です。とりあえずここにお泊りになってから――」 「ここじゃマズいんだよ」 彼女の言葉を遮るように、男は大股でにじり寄りながらまくしたてる。 「そうだな、なるべく遠くがいい。ジュノーやウンバラ、崑崙あたりはねぇか」 「……ありません。もしあったとしても、貴方のような態度の人に施す慈悲はありません」 その台詞を引き金に、男の顔色が変わった。 「――なんだと、この偽善者がぁっ!!」 男の激昂が、ガタンという大きな音と共に響き渡る。 次いで、建物の外から響く小さな爆音。 「……聞こえるか、あの音。騎士団がしつこく俺を追い詰めてんだよ。 俺はあいつらから逃げ切らなくちゃならねぇ。だが門が封鎖されてて逃げられねぇ。 しかも街にはあんたしかいねぇ、ポタ出せる奴もあんたしかいねぇ。……わかるか?」 「わか…りません……いえ、そうとわかれば尚更協力するわけには参りません……!」 「チッ、強情な奴め……だったらこうするまでよ!」 プリーストの胸元を掴む男の手が、そのまま大きく動いた。 「――きゃあぁっ!!」 ビリィ、という今までとは違う異質な音。 直後、建物内の薄暗い灯りが露わになった彼女の白い肌を映し出す。 「やっ、やめなさい……神の御前で、こんな、無体な……!」 「へ、生憎神サマなんて信じないんでね!」 聖女の制止を、悲鳴を無視し、男は下着を乱暴に引き剥がす。 そして両肩を床に押し付けたまま、かぶりつくように彼女の両胸に、突起に舌を這わせた。 「いやぁっ、やめ…助けてぇ……っ!」 「今更気が変わっても無駄だぜ。俺はもう、てめぇを人質にとって警備隊にでもポタを要求する事に決めた。 人質となりゃ人権なんかねぇ、とりあえずは味見させてもらうぜ?」 「や、嫌っ、や……ぁぐっ!?」 激しく抵抗する彼女に、男は容赦なく平手を数発浴びせる。 「…うるせぇよ。あんまり騒いでっと手足斬り落とすぞ?」 「……ひ、ひぐっ…うぅ……っ」 涙を流し彼女が抵抗を弱めた事を契機に、男は豊かな乳房にしゃぶりつきながら右手でスリットを捲り上げる。 そしてスパッツと下着とに隔てられた彼女の秘所をゆっくりと撫でまわした。 「…っ……ぁあ」 「この程度で喘ぎやがって……このエロプリが、よ!」 「――っ!?」 秘所を弄ぶ手を止め、スパッツを下着ごと勢い良くずり降ろす。 胸から顔を離した男が見たのは、うっすらと湿った彼女の秘所だった。 「は、は!おい、なんだこれは!何で濡れてるんだ、この淫売が!」 あざけるように笑う男に対し、聖女は乱れた肢体を晒したまま顔を覆う事しかできない。 その反応に嗜虐心を一層くすぶられたのか、男は息を荒げながら自分自身を曝け出した。 「はぁ、はぁ……待ってろ、今欲しいものを挿れてやるからな……?」 「ゃ…だめ……だめぇ……」 言葉で否定するものの、男の報復を恐れて満足な抵抗を見せられない。 そんな彼女を満足げに見下しながら、男は先端を膣口にあてがい、そして――一気に腰を突き出す。 「あああぁぁ――っ!!」 ずちゅり、という鈍い水音は聖堂内に響く事なく、彼女の絶叫にかき消された。 「あ、あぁっ!っく……んぅっ!」 「何だ、神に操を捧げた聖女様の癖に非処女か、あぁ?」 教壇に彼女の身体を押し付けながら、男は挿し込んだ剛直を強く深く揺り動かす。 「それどころか挿れた途端愛液噴き出して感じやがって……淫売でもねぇ、とんだ変態女だな!」 「…ん!…ゃ……ちが…うぅ……っ!」 言葉とは裏腹に彼女の股からは愛液がとめどなく溢れ、男に突かれるたびに水しぶきをあげている。 更にその蜜壷は処女のように緊張で固まっておらず、それでいて隙間なく男の肉棒を締め続けていた。 「く……っ」 彼女自身の余りの反応の良さ、具合の良さに急激に高められた男は、 ごまかすように彼女の唇を深く淫らに味わう。 「…んむ……ぅ…!……ゅ…ゃあ……」 深く貫かれ胸を弄ばれ、更に口内をも舌で蹂躙されながら、 彼女はもはや頬を紅潮させたまま、男の成すがままにされ続けるしかない。 胸の柔らかな感触、そして口内の暖かな感触を一通り味わい終えた男は、 窮屈に締め続ける蜜壷の感触を最後まで味わう為、腰に手を添えて激しく腰を動かす。 ――数回の抽挿の後、男は警告もせずに彼女の胎内で果てた。 「――っ!!」 ぴくり、という短い痙攣をしながら、彼女は声にならぬ声をあげる。 深々と挿し込まれた肉棒は、激しく痙攣しながら彼女の最奥に向けて精液を放ち続ける。 「いや…中……なか……っ」 絶望に涙を流す彼女の姿は、男の嗜虐心を再び掻き立てるのに充分だった。 萎えかけた男の怒張は再度膨張し、彼女の中を押し広げていく。 「……ぁ……いや…ぁ……」 「へ、へへ……随分な名器を持ってるじゃねぇか。このままもう1回イけそうだぜ」 「…ゃ……もう、ゆるし……っぅ――っ!」 彼女の懇願を無視し、男は再び激しく腰を動かし始めた。 ――陵辱は、男が3度目の絶頂を迎えた今もなお続いていた。 男の剛直が膣内を前後するたび、行き場を失った精液が結合部から溢れ、股を伝い床上へ滴り落ちる。 プリーストの瞳からは既に光が失われ、糸の切れた人形のように何の反応も見せない。 男はそんな彼女の様子など意に介さぬかのように、身体中を唾液で汚し蜜壷を激しく責め続けた。 「……っく、これで…最後だっ!」 振り絞る様に声を出しながら最後の一突きを叩き込み、そして果てる。 びくりとした彼女の反応を最後に、陵辱はようやく終わりを迎えた。 「はぁ、はぁ…お前の中、最高だったぜ……」 息も絶え絶えに男はつぶやく。 そんな男のつぶやきにも反応を見せず、プリーストは汗と白濁にまみれた身体を投げ出していた。 はずだった。 「――それは光栄ね」 「!?」 突然聞こえる声。 それも新たな第三者の声ではなく、男が先刻から聞いていた声。 (何故 さっきまで こいつは) 思考が頭を循環する前に、男は両手両足で挟み込むように身体を押さえつけられる。 ……己が犯し抜いたはずの、身動きひとつしていなかったはずのプリーストに。 「は、はな…せ……!」 「ふふ、ダメよ。さっき私がお願いしてもやめてくれなかったでしょ?貴方だけ我侭を通すなんてずるいわ」 彼女は男と繋がったまま、長時間陵辱されたとは思えない力で男を抱き締め続ける。 「性器特徴・性癖・最大性交回数。全て実験時のデータと一致したわ、合成ホムンクルス『Hu-62Ma』さん。 ……知ってる?カマキリは人間のあそこの部分にある器官で外敵の音を聞き分けるのよ」 彼女の言葉――『カマキリ』という単語に、男は明らかな動揺と恐怖を示した。 「…ま、まさか……」 「the MANageable Talents for Immoral Slave……通称Mantis。 貴方の生みの親として、貴方を始末しに来たわ」 「――ひ、ひぃっ!」 一層激しい抵抗を見せる男。しかし首から上がわずかに動くだけで、彼女の拘束は解ける気配すら見せない。 男は懸命にもがきながら、苦し紛れかハイディングを使い姿をくらませた。 「……そう、そのハイドが私達にとって想定外だった。 あの日貴方が脱走した時も、ハイドを使い素早くサイトの範囲外に逃れたらしいわね。 そしてハイドで警備の目をかいくぐりながら強姦を繰り返し、今に至る……と。 でも、こうして捕まえてしまえば居場所はまるわかりね」 姿の見えぬ実体を抱きかかえながら、彼女は独り言のようにつぶやく。 「隠れて出て来ない敵を捕まえるには罠を張るのが一番良い。 性欲処理の為に造られた貴方を捕まえる罠には、性欲の果実を仕掛けるのが一番良い。 『扱いやすい女』の味、貴方のお気に召したみたいで良かったわ」 彼女の話に耳を傾けず、見えぬ姿で叶わぬ抵抗を続ける男。 その様子に溜息をつきつつ、プリーストは聖堂内に入って来る3つの影を確認した。 「さて、どうやら定刻のようね。残念だけどここでお別れだわ。 ――カマキリの交尾は、オスの死によって幕が降ろされるの」 くすりと笑い、トン、と姿の見えぬ男の身体を突き放す。 刹那、空を裂く一筋の線。 空間から血飛沫があがり、真下にいるプリーストに降りかかる。 精液の白と血液の朱が、彼女の身体に美しい斑点模様を描き出した。 「…お疲れ様です、マスター」 サーベルを鞘に収め、皇騎士は半裸で横たわるプリーストにマントをかける。 プリーストの上に乗ったままの男の下半身が、かけられたマントに不自然な盛り上がりを作った。 「ありがと。もう少しこじれるかと思ったけど、結果的にロナだけいれば充分だったみたいね」 「うわ、そう言う言い方ってなくない?魔法陽動作戦やってたあたしが馬鹿みたいじゃないの」 「わたしだって騎士団との交渉とか住民への避難用具支給とか、いろいろやったよー?」 「あら…ごめんなさい、そうだったわね。ウィズもまーちゃんも有難う、助かったわ」 「ふふり、お安い御用よっ」 「どういたしましてー」 2人の返事に頷き、血液で汚れた身体もそのままに立ち上がるプリースト。 ずるりと男の下半身が抜け落ち、切り離された上半身の側に落ちる。 「ウィズ、一応確認して。脱走したのはこのホムンクルスで間違いない?」 「ええ。実験室でこいつの拘束を解いた後、あたしが服を脱いでいた隙にハイドで隠れられて……。 刃向かってきてもねじ伏せる自信はあったんだけど、合成前の素材がハイドを習得してたとは思わなかったわ」 「ウィズっちがケミさんに確認せずに速攻でホムを連れ込むから〜」 「出口の施錠もしてなかったそうですし……ウィザードさん、そんなに我慢できなかったのですか?」 「ばっ、ロナ子まであたしをそんな風に見てるわけ!?」 「ふふ、否定できないのが辛いところね」 いつものやり取りに微笑みながら、プリーストはマントを羽織り、肩口で結んで固定する。 そんな彼女に、皇騎士がブルージェムストーンを手渡す。 「マスター、お身体は平気ですか…?」 「ええ、大丈夫。あの程度じゃ――」 「『私の性欲は満たされない』、と」 「……ウィズ?」 「あー、ごめん。ごめんなさい。お願いだから真顔で笑うのやめて」 「よろしい。…それじゃ、騒動も一段落した事だしアジトに戻って――」 「『別のホム相手に続きをしましょう』?」 「……。」 「うん、ごめん。いや、今のは悪気はないの、ほら、条件反射ってあるでしょ?普段から」 「ワープポータル!」 禁断の足元置きをされたウィズを先頭に、4人はポータルの光に包まれる。 ポータルが導く先は、彼女達のアジトであり楽園。 蛇も原罪も存在しない、獣としての欲望を満たす為だけに造られたエデンの園。 聖書の伝説とは無縁だったカマキリは、この楽園において神に代わって神となった。 ――詳しい話は、また別の機会に。 |