飯田橋駅を降りて初めて神楽坂を歩いた。坂になった大通りに並ぶ店や、
神楽坂の名物とも言える路地裏の店は特徴的で、特に熱海湯に至る
通称「熱海湯階段」は、東京にいることを忘れさせる風情があった。
千鳥破風の二段構えの由緒ある東京型銭湯で、熱海階段とあわせて
ロケ地に使われることが多かったとのこと。現在は二人で切り盛り
しているので、基本的に撮影は断っているとのことだ。
暖簾をくぐる入口に数種類の花が生けられ、お客を歓迎している。
継ぎ足した番台式に座るおばちゃんに回数券を渡し、2009年4月は
「風呂屋の富士詣で」の企画も始まっていたので、二つスタンプを
押してもらいイザ中へ。
脱衣所には坪庭が併設され、池には鯉が泳ぎ飛び跳ねる音も
聞こえた。また、坪庭には木彫りの観音様が二躰安置されており、
神楽坂の善国寺毘沙門天と何か関係があるのだろうか?
改装されて綺麗にされているのでボロさは感じられないが、レトロな雰囲気を
醸し出している。朝日新聞の昔のロゴの広告や、主人の趣味なのか軍艦の
模型も置かれていた。レトロと言いましたが、番台や椅子から見えている、
たぶん42型の液晶テレビはあまり突っ込まないという方向で。。
さて浴槽へ。左右に洗い場があり、真ん中の洗い場には鏡やシャワーが無く、
これは現代では珍しい部類に入る。男女境の壁にはモザイクタイル絵があり、
山河が描かれている。石鹸などを置く段差の部分には黒で描かれたタイル絵があり、
これは50の銭湯の経験上では初めてのケースであった。
ペンキ絵は早川氏により描かれた富士山を含んだ海と浴槽を一体にした開放感を
感じさせる一般的な絵で、ペンキ絵の下には錦鯉を描いたタイル絵がある。
このタイル絵はそうそう見れるレベルのものではなく、極めて貴重なタイル絵だ。
個人的にはタイル絵で感動したのは、吉祥寺の鶴の湯以来ではないかと思う。
浴槽は二槽式で、片方が備長炭湯となっていて、炭が剥き出して置いてある。
一般的には網袋などに入れて湯船に浸けているので珍しいと思った。
湯の温度は半端でなく熱い。東京銭湯の特徴と言われるサッと入ってサッと出る
江戸っ子気質も良いが、45度くらいあって全く入れなかったので水で薄めさせてもらった。
風呂から出てテレビを視聴していると地元の人や番台のおばちゃんとの会話になったりと、
銭湯の姿形も然ることながら、昔のいい面を良く残している銭湯だと感じました。
訪問日:2009年04月/東京銭湯巡礼・個人的第50番目札所