だいじょうぶ

空はどこまでも晴れ渡り、私をどこまでも不安にさせる。こうもまぁ快晴続きだと逆に憂鬱になる。それに、晴れの日ってどうしても元気でいなきゃいけないみたいなトコあるし。それがどんどん私の精神を削っていく。風化してしまうかもしれない。その時はいつかの日差しを抱いてさらさらと飛んでいきたい。
部屋の中で毛布にくるまってそうしていたら、窓の向こうからふわふわといいにおいがしてきた。なんの匂いだろう。じわじわと私と染み込んでくるみたい。

さわさわと降る音に気がついて目を覚ますと、雨が街中を満たしていた。
晴れてるばかりじゃ枯れてしまうの。時々そうして水をあげて。じゃないときっと咲かないままだから。

2007年05月21日(月)20:37

そこにあるのにそこにない

冷蔵庫からラムネを一瓶取り出して、服も着ないままにビー玉を落とした。咽喉に弾ける泡に一瞬むせ返る。
繋は向こうで熱いショコラを呑んでいる。横になって、雑誌をぺらりぺらりと捲っている。肩から背中へかけてのラインがやけに細い。
「熱くないの」
思わずそう声をかけると、繋はチラリと目だけでこちらを見て
「寒くないの」
と言った。
冬でも夏でもない季節はこれだから厭なんだ。僕らが益々別の生き物に思えるじゃないか。

2007年05月20日(日)21:21
フタゴ。相容れない関係がすき。

and so on

「好きよ」
突然未月が発した言葉に僕は驚いて、え?と呟いた。未月の髪の毛を梳く、僕の手が止まる。
「でもね、これは愛とか恋とかそういうものじゃない」
ふふん、と笑って僕を見上げる。
「変わりゆくものではないってこと?」
「うーん、まぁ、そんなもんかな」
それから未月はまた、好きよと呟いて目を閉じた。
夜はしんと静まり返り、遠くで鳩の鳴き声がしている。未月の白い肌が月明かりに照らされ、未月の黒い髪の毛が闇に同化した。
「僕も好きだよ、未月」
「私たち、相思相愛みたいね」
「本当に」
髪を梳く、僕の手は再び動き出す。

2007年05月19日(土)22:40
未月さんと夕咲

happy happy

白い便箋を買った。青いインクの万年筆を貰ったから、あなたに手紙を書こうって思った。
机の上に広げた白い便箋は、どこまでも広がるフィールドみたいで、どこから始めようか非常に悩む。風が飛ばしていってしまったら困るから窓は開けない。陽が焼いてしまったら困るからカーテンも開けない。締め切った部屋で一人あなたを思うの。
どうしようか。30分くらい思案した所で万年筆のキャップを開ける。試し書きを充分にした所で、さあ何書こう。またしばらく思案してみようか。
『お誕生日おめでとう』
好きよ。
願いひとつ込めた手紙は今日あなたには届かない。

2007年05月17日(木)21:46
タイムラグに恋して

eASy feELiNG

きっと全部大好き。でもそれってきっと全部大嫌いってこと。だから時々自分を嫌いになるの。だってそうすれば、きっとずっとキミのこと好きでいられるもの。
満たされないのはいつか満たされる証拠だと言い聞かせて日中をやりすごす。愛は常にそこに存在するものではなく、まばらにばらまかれているからひとつひとつ丁寧に拾う。その行為がとても愛しくて、だから独りの夜も耐えられるのかも。
私は不幸せを知っているから幸福だと思える。
キミが私のこと好きだと思ってるかもってほんの少しでも感じられたらそれだけで幸せ。だけど私がキミに嫌われたかもってほんの少しでも思ってしまったらそれだけで不幸せ。ほんの少しで満たされる精神は、ほんの少しで満たされなくなってしまう。過剰な感情。バカみたいだと哂う。

きっと単純なことなのにね。それでも複雑に思えてしまうのはなんでだろうね。
(たぶんその中で大切なことはキミが好きってことぐらいしかない)

2007年05月16日(水)22:54

不幸になればいいって思ったんだ

いつからか僕は、誰にも頼らない繋が大嫌いになった。
いつだってなに考えてるかわからないし、いつだってひとりでいる。昔はあれだけ吐いていた愚痴や弱音もいつしか吐かなくなった。どんどん遠くなっていくみたいで恐い。
教室の片隅でぼうっと窓の向こうを見ている繋を横目に僕は友人達と昼食を摂る。高校に入ってからは弁当を持っていってる気配すらない。そもそも繋は昼メシ食べたんだろうか。それすらもよくわからない。そんな毎日。

「……バカ! 走れ! 捕まる!」
走っても走っても店員は追ってくるし、もう限界だった。膝ががくがくする。酸欠で気持ち悪い。目眩がする。繋はそんな僕の腕をひっぱって商店街をひた走る。後ろと右から怒鳴る声が聞こえる。
スーパーで万引きしているところを見つかった。誰にって繋に。繋は僕の顔を見て、それからやんわりと僕の手から消しゴムを取り上げた。それから手を取って走り出した。

繋。ねぇ、繋。いつからそんなに強くなっちゃったの。僕を置いて一人でどっかに行こうとしないでよ。ねぇ。繋ったら。
繋は僕の手を握ったまま振り返らずに走る。長い髪をうざったそうに振り乱しながら。繋はなにひとつ悪くないというのに。
そんなだから、僕は繋の不幸を願ってしまう。もっと不幸になればいい。それで僕にすがればいい。せっかくの双子なのに。
ねぇ、繋。あの日みたいに僕に頼ってよ。そんなに一人でどこかへ行こうとしないでよ。
繋がもっと不幸になればいいのに。

2007年05月15日(火)21:07
もはや短文じゃねぇ!!

おなじでいい・おなじじゃない

「暑い」
繋はそう呟くと扇風機の首振りを固定に変えた。もちろん自分が当たる為だ。
「我慢しなよ」
「ヤダ」
僕はため息をついて目の前の宿題へと視線を戻す。まだだいぶある。しかしこのペースで行けばあと一週間もすれば終る。一方の繋はというと、さっきから一ページも進んでいない。愚痴ばかりでなんにもやらないからだ。
「奏、アイス食べていい?」
「ダメ」
同じ形をして産まれてきたというのに、どうして僕らはこんなにも違うのだろう。

2007年05月14日(月)21:46
フタゴちゃんin summer。この場合、柏木的には繋の方が好み。

STAY

すがるなにかすら持たず、私はなにをやっているんだろう。
笑顔ひとつ綺麗に作れない。涙ひとつ零せない。溢れ返る感情の捌け口なんてない。言葉は喉をつかない。
いつからこんなに不器用になってしまったのだろうなんて思うけど、きっとそんなの最初からだろう。
孤独だけがここにあるみたいで痛い。胃の奥のほうできゅっと握りこぶしひとつ作って握りつぶした。なかったことにした。
いらなくなったら捨てていく、大量消費型の社会で私の感情だけが棄てられていく。本当はもっと大切にされたかっただろうに。まるで風に舞うレジ袋みたいにどこかへと飛ばされていく。

切れないで切れないでってずっと願ってた。なだめたりすかしたりしながらずっと握ってた。あの時の糸はいつプツンって切れてしまったのかな。まだ君に会いたいよ。
そうしたらきっと今度はうまく泣けるのに。

2007年05月12日(土)23:43
つよがり。

みえないみえない みてなんかいない

彼女はこの狭い病室の窓を開けた。その向こうにはすきとおる様な青。白い雲がたなびく。風が吹いて彼女の細い髪の毛とカーテンを揺らした。
白いベッドにピンクのカーディガン。長い髪の毛は真っ黒。茶色の瞳で小さな世界を見つめて今日もため息。
「また圏外だよ」
窓から身を乗り出して世界を掴まえる。腕を伸ばして飛び交う電波を掴まえる。全ては彼の為に。彼の言葉の為に。
まわりの大人は彼女に次の夏がないことを知っているから、なにしてるのだなんて言えない。彼女はそれを知っているからなにも言わない。ただ心を通わすのは飛び交う電波のその向こう。見たこともない知らない誰か。
でも彼女は信じている。きっと彼が彼女に会いにきてくれるって。きっとここから連れ出してくれるって。
僕はそれを知ってるから言うんだ。
『こんにちは。今日はとても晴れていて気持ちがいいよ。病気が治ったら一緒にでかけようね』

2007年05月09日(水)22:21
恋愛圏外。

いつの日かまたあえるかな

キラキラと細い糸みたいに春雨が降りしきる。霧は一層濃くなって、髪に触れた瞬間水滴に変わった。呼吸する度肺を埋め尽くす空気はなんだか密度が高い。
ここは、へんだ。どこまでも白い。壁も、空も、地面も、私も。
唇に触れる嘘はその影をより一層濃くして、どこかへと消えた。
本当は誰かにしがみつきたいのに、ここには誰も居ない。しかしながらここに私を閉じ込めたのは私だ。ひとりぼっち。それを選んだのは私だ。
全てを塞いで、深い白の中、もうここにいないあなたを思ったら悲しくて寂しくて涙が出る。それも雨に混じって流れて消えた。

2007年05月07日(月)21:38