IndexMainNovelKarenusu フォントサイズ変更   L M D S
◇◆ 彼が盗んだもの 保健室 ◇◆
「倍率ドンッ! 悪魔が二、魔女が四、リアルが八!」
 なんたってウッシッシ状態で、教室に足を踏み入れた途端、ゴエモンが唐突に言い出した。
 そんなゴエモンの背中に隠れているワトソンが、ストーカーの如く顔だけを出して返答する。
「竹下さん……い、いや、篠沢教授に全部で!」
 ワ、ワトソン、それは一体……(しかも無謀)
「あぁ……はらたいらさんのご冥福をお祈りします……」
 だ、だから次元も何なんなのよ? (でも合掌)

 肝心要の男が不在のまま、ワトソンの席に置かれたブツを取り囲み、北に悪魔、東に魔女、 西にリアルフジコが佇む、どこまでも恐ろしい現場。
 確実に、ゴエモンの立てたオッズは正しい。
 どう考えても、三人中ただ一人の『普通人間』だけに、リアルフジコの分が悪い。
 けれど、正直に言おう……

 俺には関係ない。(シレっとね)

 ということで、文子の腹部に手を回し、魔女の言葉尻を真似して囁いた。
「俺は、おいちかったオクダ♪」
 当然、文子の素敵なツッコミが間髪入れずに放たれて、そんなツッコミが欲しいゴエモンは、 恐怖よりも芸の道を突き進む。
「オ、オレも、お、おいちかったオクダ♪」
 ゴエモン、もうお前は立派な芸人だ……(その志に感動中!)

 ところが、悪魔の囁き声を境に、文子の様子が急変する。
「ル、ルパン……なんか熱い」
 一時間ほど前の休み時間には、文子は確実に平熱だった。(えぇ、計ったわ)
 文子の額に手を当てて体温を確認するけれど、これといって変わりはない。(三十六度四分くらい?)
 なのにそこで、フェロモンをバリバリに放つ、文子の一言が追加された。
「脱いでもいい?」
 お、俺のアドレナリンが大・分・泌っ!(アドレナリンはアナドレン!)

「ダメダメダメダメ〜っ!」
 文子を担ぎ上げながら、保健室までの道を爆走中。
 俺の耳に息を吹きかけたり、恐ろしい言葉を放ったり、技術室で見た夢よりも大胆極まりない文子の現状。
 こんなのは、俺の文子じゃない。(色っぽすぎ)
 文子は文子だから文子なんだ。(ごもっとも)
 これじゃまるで、文子の皮を被った悪魔だ。(そうに違いない)
 あれ? でもそれじゃ、中身は福島ってことに……(それはとても嫌だ)

「水戸ちゃん、文子が変!」
 保健室の引き戸を勢いよく開けて、養護教員の水戸に向かって大声で叫ぶ。
 けれどグレーの回転椅子に腰掛けた水戸は、落ち着き払ったままのんきに答えた。
「久島が変なのは、いつものことでしょ?」
 ま、まあね……(反論の余地なし)
 ところが、担いでいた文子を肩から降ろした途端、文子が水戸のそばにツツツと擦り寄って、 うっとりした顔で見上げながら言い出した。
「水戸ちゃん、愛してるわ……」
 そして大口を開けて固まる水戸をよそに、回転椅子に座る水戸の膝の上にチョコンと座る。
 そんな光景を、ただ見つめているだけしかできない俺の自問自答は……

 愛って何ですか……(トヨエツ風)

 声にならない声で、口パクだけを数回繰り返した後、ようやく正気に戻った水戸が雄たけびを上げた。
「ま、また奥田の仕業ねっ! 今日という今日は、ビシッと言ってやる!」
 そう言うが早いか文子を抱いたまま立ち上がり、まるで宅配便のお兄さんの如く、ホイっと文子を俺に手渡した。
「ハンコは、サインでいいですか?」
 渡された荷物を小脇に抱え、ポケットからボールペンを取り出しながらつぶやけば、水戸が真顔で切り返す。
「あ、大丈夫です。えっと、ここに……」
 ここってどこっ!(手のひらです)

「水戸ちゃ〜ん、抱・い・て」
 俺たちの妙な沈黙を、文子の台詞が打ち破る。
 それを聴き、明らかに悪寒に見舞われた水戸が、小刻みに震える腕を摩りながら突っ走り
「ムキィ〜ッ! 待ってろ奥田っ!」
 そう叫んで、出入り口の引き戸に手を伸ばす。

「み、水戸ちゃん、魔女より、ふ、文子を……」
「ルパン、久島を厳重に見張ってて!」
「いや、だから、水戸ちゃん、ふ、文子は……」
「外から鍵をかけて行くから大丈夫!」
「や、やめて、水戸ちゃん、俺を置いて行かないで〜っ!」

 文子をその場に降ろし、ドアに張り付いて叫ぶが時遅し。
「グッジョブ!」
 既に保健室から退室した水戸が、親指を立てながら外から鍵を掛ける。
 グッジョブってあなた……(逃げたわね!)
 こうして、密室に取り残された、哀れな俺と淫乱園児。
 けれど何やら妙な音がするから、おそるおそる振り返れば、床に横たわりながらスカートをチラチラとめくる文子が、 ウインクをしながら言い出した。
「ちょっとだけよぉ?」
 ふ、文子、それは……(カトちゃんペ)

「文子文子、脱がない、脱がない、脱がないで〜っ!」
 既にベストを脱ぎ捨てて、ブラウスのボタンに手を掛け始める文子を制止する。
 それでも脱ぐことをやめない文子を、全ての目から隠すようにベッドへと押し込んだ。
「文子文子、お布団、お布団、お布団入ろうね〜っ!」
 ところが、ベッド周りのカーテンを引こうと文子に背を見せた瞬間、襟元をガシっと掴まれベッドに押し倒された――

 硬直する俺の身体を跨ぎながら、なぜか不敵に笑う文子が囁く。
「ルパン、私のこと好き?」
「え、えぇ、それは確実に」
「だったらさ、奪っちゃえ!」
「何をだよ?」
 半口を開けたアホ面で咄嗟に聞き返せば、妖怪さながらのニタニタ笑いを繰り広げながら、文子がハラッとブラウスを脱いだ。
 タ、タータンチェックっ!(鼻血ブー!)

 甘ったるい吐息を俺の顔に吹きかけて、文子が唇を掠めては離す。
 驚きで目を見張りながらも、抵抗できずに固まれば
「ルパン、愛してるの……」
 文子が耳元でそう囁き、俺の耳たぶをそっと噛んだ。
「ふ、ふ、文子ちゃん?」
 ようやく言葉を声にしたものの、依然として硬直し続ける俺の首筋を、文子の唇がたどり滑る。
「抱いてルパン…お願い……」
 そして、ブラだけ纏った身体を、嫌と言うほど俺に押し付けて、執拗に首筋にキスを続けた。

 俺のワイシャツのボタンに、文子が指を掛ける。
 徐々に肌蹴ていく俺の胸元へ、手の動きを止めないまま、文子がそっと口付けた。
 けれどそこで文子が不意に起き上がり、俺を見つめながら、ブラのストラップをゆっくりと肩から外し始める。
 左のストラップが腕から抜かれ、右のストラップに文子が手を掛けたとき、俺の限界が頂点に達した。

「いい加減にしろよ」
 文子の両腕を握り締め、掠れた声で切り出せば、ビクンと揺れる文子の身体。
「素面のお前がそう言ったら、抱いてやるよ」
 唖然とする文子の腕を少しだけ捻り上げ、その反動で形勢を逆転させる。
 そして、今にも露になりそうな文子の胸を布団で覆い隠し、偉そうに腕を組んで見下げれば
「抱いてやるだぁ?」
 酔っ払いよりも巻き舌な、通常文子のガナリ声が響き渡った――
 え? あ? お? い? う? (順不同)

「ルパン、ちょっとここに座れっ!」
「は、はい」
「ぬおっ! な、なんで私は脱いでるんだ! お前だなっ!」
「い、いえ、滅相もございません」
「じゃ、誰が脱がせたんだよっ!」
「こ、小鳥さんのイタズラかな?」
「嘘をつけっ!」

 え、偉そうなこと言っちゃった手前、逆らえません……(ビバ小心者)
 でも、タータンチェックは最高だ。(ごちそうさま)
 あぁ、首筋に包帯を巻いちゃおうかな?(記念にね)
 やべぇ。やっぱ俺って、いくじなし?(その通り)
 や、やっぱりここは、ビシッと文子に言ってやるっ!(そうだそうだ!)

「明日は、ギンガムチェックにしろっ!」
「ふざけんな?」
「で、ですよね〜♪」



 〜その頃の水戸ちゃん〜

 な、何なんだあいつら……
 あれはもう、人間じゃないし……
 奥田だけならまだしも、福島と松島って……
 く、久島の方がマシだ。保健室に帰ろっと♪
← BACK NEXT →
IndexMainNovelKarenusu
photo by ©かぼんや