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◇◆ Maikka?  3 ◇◆
「美也、気持ちいい?」
 中心から身体を伝って、ビリビリとした痺れとともに、亮の声が響いてくる。
 ちゅくちゅくと淫やらしい音を立てて、亮の唇が私の肉芽を啜っては離す。
「くぅ…ぁん、あっ、き、気持ちっ…ぁんっ」
 もっともっとと懇願するように、亮の頭を押さえつけ、仰け反り善がる私の声は、女を超えて盛りのついた雌っぽい。
 足は自らマットを離れて宙に浮き、溢れた蜜が唾液と混ざり、肌をつつっと垂れていく。

「はぁっ…んぁっ、らめっ…きもちよすぎ…あぁんっ!」
 亮の指が、つるんと中へ滑り込む。根元までつっぷりと差し込まれたその指は、抜くことなく私の中で折り曲げられて、絡みつく襞を執拗に擦る。
 唇が肉芽を吸い上げ、舌が転がし、指は襞をかき混ぜ擦り上げる。
「あんっ、イっちゃうぅ…らめ、イっちゃう、イっちゃ…あぁぁぁっ!」
 腿で亮の頭を挟み込み、びくんびくん身体を震わせ、本日最初の絶頂完了。
 けれど亮は、私が果てたことを知っているにも関わらず、蕾を強く吸い上げ追い討ちをかける。
 絶頂直後のそれは、刺激が強烈過ぎる。だからそれから逃れるために腰を捻ったところで、そのままうつ伏せに転がされた。

 亮の片腕がお腹に回され、私を軽々持ち上げる。力の入らない腕では踏ん張ることなどできず、誰も居ない場所へ向かって土下座を始めた私の身体。
 そんな背中に熱い息が掛かり、舌が背骨に沿ってつつっと這い上がる。それと同時に、差し込まれたままの指が、猛烈な勢いで抜き差しを始めた。
「あぁぁぁっ! くぅ……あぁっ!」
 お腹に回されていたはずの手は、私の胸を鷲づかみ、指が頂を挟んで弾く。
 くちゅくちゅと卑猥な音を放って、襞の中へ打ち込まれる長い指。
 指を打ち込まれる度に拳が秘裂に当たり、見えないだけに身体が錯覚を起こす。
 こんなんじゃ足りない。こんなんじゃ満たされない……
 だから知らず知らずのうちに、恥ずかしげもなく腰が激しく前後に揺れた。
「美也、すっごいエロ。やらし……」

 言葉で嬲られ、さらに身体が熱く火照る。
 満たされたい。満たして欲しい。もっと激しく、すごいやつが欲しい……
「亮ちゃん、欲しい…欲しいよぉっ!」
 完全白旗宣言が口から飛び出し、その直後に、本日二回目の絶頂達成。
 膝からも力が抜けて、枕に顔を埋めたところで、またまた仰向けに反転させられた。
「俺も美也が欲しい。すごく欲しい……」
 耳朶を舐めながら、掠れた声で亮が囁く。熱いものが秘裂に宛がわれる。
 ――くる。待ち焦がれたものが訪れる興奮に、身体がひくひく揺れた。

「んあぁぁぁっ!」
 襞を押し広げ、熱くて硬い亮の昂ぶりが、一気に減り込んでくる。
 産毛が逆立ち、肌が粟立ち、胸の頂がキュっと縮むこの快感。身体の内側から突き抜けるこの刺激。
「亮ちゃん…亮ちゃんっ!」
 必死で亮にしがみつき、首に顔を埋めて、亮の放つ甘い香りを吸い込んだ。
「美也ん中、熱っ…」
 大好きだよと言いたげに、私の身体をギュっと抱きしめて、亮がゆっくりと動き出す。

 まるで、私を味わうように動く亮の腰。襞の一本一本を括れで弾くように、艶かしく揺れる。
 足が勝手に亮の腰へ絡みつき、もっと犯して、もっと狂わせて欲しいと、首を何度も振って懇願した。
「美也、そんなんじゃ、俺が狂っちゃうよ……」
 微苦笑を浮かべる亮が、ねっとりと唇を覆う。はふはふしながらそれを貪り、離した唇が糸を引く。
 押し広げられた襞が、じんと熱く滾り、今にも爆ぜそうだった。
「らめっ! 亮ちゃん、もっと愛してっ!」
 泣きそうなくせに、偉そうに文句を垂れる。
 そんな私を優しく微笑みながら見下ろす亮は、表情とは真逆な言葉を投げる。
「じゃ、美也を壊す」

「いやぁぁっ! ああぁっ! んああぁっ!」
 亮の身体が撓り、私の中に熱き塊を叩き込む。私の腰を掴んで引き寄せ、より強く、深く叩き込む。
 一撃必殺なその攻撃を、秒針の速度で打ち込まれ、身体は呆気なく、本日三回目の絶頂悶え。
 咥え込んだ襞が、爆発とともにぎゅっと締まり、亮の顔が苦悶に満ちる。
 自分が亮にこんな顔をさせているのかと思うと、悦びのアドレナリンが烈々と漲り始めた。
 勢いついた身体は、隙をついて亮を押し倒し、驚く亮を余所に、唇を奪い、反り立つ高まりも奪う。
「み、美也……っ」

 屹立する亮の塊を、下の口が、上からごくごく呑み込んでいく。
「くぅぅ……亮ちゃん、ユサユサより美也がいいって言ってっ! 言ってっ!」
 優勢に立った身体と心は、亮を犯しながら無理強いを要求する。
 キスを強請るように顎を持ち上げる亮は、肩から毀れる私の髪を指で梳きながら、そっと口元で囁く。
「美也がいい。美也だけがいい。美也じゃなきゃやだ……」
 亮が吐き出す言葉に満足を覚え、顔を綻ばせながら態と音を立ててキスをする。
 そのまま、胸に唇を這わせてきつく吸い上げ、肌に生まれた赤痣を愛しげにぺろっと舐めた。
「じゃ、亮ちゃんは私のもろれ! もう、ユサユサはらめよ?」

 私の下で、亮がクスクスと笑っていた。
 それでもそんなことはお構いなしに、亮の胸に手をついて痺れ続ける身体を起こし、顎を上げながら感嘆の熱い溜息を吐く。
 羞恥心どころか、理性すら一粒も残っていない。本能に支配された身体は、赴くままに腰を揺らし、胸を揺らして快楽を追求し始める。
「亮ちゃん、きもちぃ…んあっ、気持ちいいよぉ!」
 亮の掌が揺れる二つの胸を包み、腰が下から突き上げる。
 高まりが、襞の要処を責めてくれるように自ら仰け反り、本日四回目の絶頂吠え。
「ふあぁん! イクイクっ…イっちゃ、らめらめぇ…んぁっ、イクぅぅぅっ!」

 小刻みにふるふると震えながら、亮の胸に縋りつく。
 けれど亮の身体は横に滑り退き、無情にも私の身体をマットに落とす。
 満たされていた場所から高まりを引き抜かれ、寂しさと侘しさで、いやだいやだを叫ぶけれど、離れていたのは本の一瞬で、熱く太く硬いそれは、今度こそ私を壊そうと、後ろからやってきた。
「ひやぁっっ!」
 ずんっと奥まで私を犯す。その一突きで、悲鳴に近い吸気が漏れる。
 それでもその余韻には浸れない。私の腰を掴む亮は、速度を速め、強さを増し、抉り突き上げながら、腰ごと私を嬲り打つ。
「らめぇっ! 壊れちゃ…こわれちゃ…んあぁぁっ!」
「壊すって言ったじゃん」

 律動する凶器は、躊躇うことなく私の襞を刺し続け、痛みよりも破壊的な苦痛を齎す。
 身体が芯から蕩け始め、どうしようもない感情がそこから生まれ弾ける。
 愛されたい、満たされたい。満たしたい、愛したい……
 不意に、小さな痛みが鎖骨下に走る。朦朧としながら見下げれば、亮の唇がそこに吸い付いていた。
 私の肌に咲く赤い花。亮はそれをぺろっと舐めると、おどけた顔で私を見上げる。
「じゃ、美也は俺のものね。もう、俺以外はらめよ?」
 胸がきゅんきゅんして堪らない。亮の頭を掻き抱き、強く胸に押し付ける。
「亮ちゃんっ、もっと! もっと、亮ちゃんっ!」

 最早、本日何度目かも解らなくなった絶頂後の狂気な懇願。
「もうらめっ、もうらめっ…亮ちゃんも美也でイってっ!」
 これ以上は無理だ。身体が完全に壊れ、バラバラと解体されちゃうに違いない。
 それでも、私がこんななのに、亮が果てないのは許せない。
 私に感じて、私に爆ぜ、熱く白濁した婬を、注いでくれなければ終わらせない。
「んあぁぁっ!」
 果てようとする男の、限度を超えた酷烈な腰の動きがくる。
 だめだ。壊れる。意識が飛ぶ。痛くも痒くも悔しくもないのに、なぜか涙が零れ出た。

「美也っ、美也…っ!」
 私の中で、どくどくと脈打つ高まりを、震える襞が感じ取っていた。
 荒く繰り返される亮の呼吸に、嫋々としながらも興を増す、訳のわからぬ勝利の余韻。
 亮を掻き抱き、全てに満たされながらも、霞んでいく意識の中で、ごにょごにょと囁いた。
「ユサユサより美也の勝ち…ね?」
「うん。美也の勝ちだよ」
「うふふ。亮ちゃんは、私のもろよ」

 す、すっごい夢だ。なんて夢を見たんだ。こんな夢を見るほど、私の身体は欲求不満だったのか……
 確かに、初めて弟に抱かれた日から、身体は疼き続けていた。
 言うほど酷使もしていないけれど、恥らうほど慎ましく生きていたわけではない。
 それでも、あんなにも熱く、激しい快楽を、これまで味わったことがなかった。
 テクニック云々ではなくて、弟の抱き方は他の男と何かが違う。その違う何かが、私を興奮させ、満たし、悦ばせるんだ。

 なんだか拙い展開になってきた。本間じゃないけれど兄弟とヤルなんて狂気の沙汰だし、それは妄想の範疇だから許されることだ。
 一刻も早く新しい彼氏を見つけて、この身体を満たしてもらわねば、欲求不満の身体が、あの夢のように可笑しなことを、弟へ口走りそうで怖い。
「ほ、本間、誰か男を紹介してくれ……」
 拳を握り締めながら、項垂れ加減で呟いたところで、背中から響く不吉な声。
「ぶっ飛ばすよ、美也?」

 今此処に、背筋が凍るというものは、こういうことを指すのだと断言する。
 考えてみれば、此処は自分の部屋ではなく、あの、忌まわしき秘密基地じゃないか。
 しかも、首の下から回された自分のものではない腕を、しっかり握り締めているじゃないか。
 道理で背中が暖かいと思ったよ。否、そういう問題じゃなく、こういう問題でもなく……ま、いっか?
 いえ嘘です。断じてよくありません。あれが夢でないとすれば、私は昨日……

 モソモソと動いて腕枕を解き、今更ながら、裸の身体に毛布を巻きつけ言い訳開始。
「あ、あの…実は私、酔っ払っていたようでですね?」
「そうだね。それはもう、すごい変貌ぶり?」
 とても厭な言い方だ。克っちゃんの青筋を、何度も見ちゃった記憶が蘇る。が、覚えはない。
「ど、どんなこと言ってた?」
 そこで弟は、私を真似た態とらしい口調で、昨日の再現口述を始める。
「亮ちゃん、ユサユサより美也がいいって証拠みせてっ! そして、服を自らポイポイと」
「う、うそだっ!」
「嘘ぉ? あ〜ん亮ちゃん、もう、ユサユサはらめよぉ? って、証拠がここに」

 弟の胸に、くっきり付いたハート型のような赤い痣。
 夢の中では確かにそれを、そのような言葉を吐き出しながら付けました。しかもぺろんと舐めて。
 けれどそれは妄想であり、もし現実ならば、私の胸にも弟がつけたそれが……ありました。

「ほ、ほんっとすいません。穴があったら入りたい気分と申しますか、その、姉の権限を行使し、このようなことを強いてしまったりなどして、いや、確かにユサユサは気になっておりましたが、何せ身体が疼いてですね?」
「俺に抱かれたかった?」
「あ、はい。ですが、もうこのようなことを二度と繰り返さないよう……」
「本間さんに男を紹介してもらって、身体を満たす?」
「あぁ、もう、まったくその通りでございます。ですので、今暫くお時間をいただき……」
「だから美也、ぶっ飛ばすよ?」

 力ずくで抱き寄せられ、巻きつけた毛布が剥れて裸の身体が重なり合う。
 弟の熱い身体が、昨日の情事を思い起こさせ、何をどう詫びていいのかすら解らない。
「亮ちゃん、ほんとごめん。いいよぶっ飛ばして! ほんとごめんね!」
 弟が拒めないのを知っている。
 私が弟のお願いを断れないことと同様に、弟は今まで、私の頼みを断った例がなかった。
 いくら酔っていたとはいえ、それを逆手にとり、こんなことを無理強いした自分が許せない。
 けれど弟は、大きな溜息を吐いた後、こんな私に優免の言葉をかけてくれた。
「もういいよ。この間は俺が強引だったし、これでおあいこ」

 そんなわけにはいかない。何か罪滅ぼしをしなければ。何か私に罰を与えてくれなければ。
 またやってしまいそうで、怖いんです……
「いや、そんなわけには! それとこれとは別ですから!」
「じゃ、俺がいいって言うまで、当分の間、美也は彼氏を作っちゃだめ」
「え、そんなんでいいの? すっごい楽勝だよそれ?」
 なんて簡単な罰を与えてくれるのだろう。
 御年二十六歳。歴代彼氏を合計しても、彼氏がいない期間二十年以上の女を捕まえて、それは余りにも軽過ぎる罰ではないかと思うわけで。

 それでも弟は、それが最高の条件だとばかりに強く肯き、一歩も譲らない。
 ならば、せめて罪滅ぼしをさせてくれと懇願すれば、この通り。
「当分の週末、俺に酒を奢るってのは?」
「あぁ、もう、是非是非、奢らせていただきます!」
 しかし、当分という言葉は、なにかこう漠然としている気が……ま、いっか?
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