「・・・おはよ」
そう言って、ぎこちなく笑うナルト。


理由は、分かる。


分かるから、こそ。


「久しぶりだってばよ・・・」
今はまだ、なるべくなら関わりたくなかった―――――






Pieces




シカマルとナルトが人知れず付き合っていたのは、そう昔の話じゃない。
そして、彼らが別れたのもまた、そう昔の話じゃない。


――――めんど、くせぇよ・・・




シカマルは気付かれないようにため息をついた。
そんなシカマルの思いを知ってか知らないでかナルトは話を続ける。


「元気だったか?・・・シカマルってば、中忍になっちまってから全然会えなかったから心配したってばよ」


・・・会えない?“会わない”の間違いだろ?


そう思いながら話を合わせる。


ぎこちない笑顔で。
ぎこちない会話を。


「お前は、どうなんだよ?」


「え・・・?」
いきなり話題を振られて躊躇するナルト。
「げ、元気だってばよ?」


その躊躇の裏に見え隠れする




――――分かっている。アイツが悪いわけじゃない。


頭ではそう理解しているのに、気持ちが追い付いていかない。




悔しい――・・・




ナルトの笑顔を、その全てを独占しているアイツが。
アイツが―――


・・・だから、つい言ってしまった。


「アイツは?」
「へ・・・?」
「アイツはどうなんだ?」


自分でも呆れる質問だ。


オレはまた馬鹿になったんじゃないか?
そんなことを自問しながら薄笑いを浮かべる。目の端に、あからさまに困惑しているナルトが映る。


「アイツって・・・サ・・・・・・」


息を呑むナルト。そして言い直す。
「サクラちゃんなら元気だってばよ?」
「っそ。で?」
意地悪く聞き返す。ナルトの緊張がよく伝わってくる。


「イ、イノとチョウジには会ったってばよ?アイツら全然変わってな・・・」
「違うだろ」
「せ、せんせー達も・・・」
「先生方にはお前らより会ってるよ」


――――取りつく島もないとはこういうことか。


ナルトは怖ず怖ずとシカマルの顔色を伺う。シカマルは真っすぐにナルトを見ていた。
その視線に耐えられなくて、自然と顔を俯かせる。


・・・緊張がピークに達したところで、ナルトはその震える口を開いた。


「サスケは・・・元気だってばよ・・・」


必死でそれだけ言って、ギュッと目を瞑る。
怖い。
シカマルの目が、シカマルの周りの空気が―――痛い。


ふと、シカマルが足を踏み出す。同時に、ナルトの足はシカマルから逃げるようにじりじりと後退していく。


もう限界だ―――――


そう思ったとき、ナルトの背が壁に触れた。
もう、逃げられない。


追い詰められたような形になって、ナルトはもうシカマルを見上げるしか出来なかった。


「なんで逃げんだよ」
少し怒気を含んだ声。
「シ、シカマルがこっち来るから・・・」
「なんだよ、恋人じゃなくなったらもうお前に触っちゃいけねぇのか?」


その表情は真剣だ。


ナルトが好きだった、めんどくさがりで、でも優しいシカマルはここにはいない。
そこにいるのは―――嫉妬に狂ったただの一人の男だった。


「今の、恋人にしか触って欲しくないって・・・?大層なこった」


言いながらナルトの顔をなぜるように滑らせて顎を掴む。
「嫌だ・・・」
震えるナルトの右手を押さえ付け、その唇を奪う。
ナルトは空いた手で抵抗を試みるが、シカマルの力に適うはずも無かった。


勝てないと悟ったのか諦めたのか、ナルトの抵抗は段々弱まっていった。
代わりに、ナルトの頬を涙が伝う。


「ナルト・・・?」


涙を拭うこともせずにただ泣きじゃくる。
ナルトはそのままその場に踞ってしまった。


「ごめん・・・ごめんってばよシカマル・・・」


時折聞こえてくる謝罪。
「泣くなよ・・・」


泣かせたいわけじゃない・・・


シカマルの表情も徐々に悲痛なそれへと変わっていく。
「泣くなって・・・」
シカマルはナルトを包むように優しく抱き寄せた。


「ごめん、な・・・」




せめて今だけは。




せめてナルトが泣きやむまでは。
それまでは恋人のようにいさせてください。
シカマルは誰に願うでもなく祈った。


せめて、せめてその短い時間だけは昔のように、昔のままのオレ達で。
この幼子の涙が枯れるまで。
どうか、どうか―――――・・・









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えー、シカナルです。
だだだだって私サスナル好きなんですよぅ;;シカナルも好きだけどサスケ差し置いて二人がラブラブしてる作品なんて書けなかったんですよぅ;;(ちなみにこの作品はシカナルを書こう!という決意の元に書かれたものです。)
そんなシカナル。ってゆかシカマル壊れててすみません;;


哀沢君に見せたところえらく気に入ってくれたようなのでお嫁入りしました。まーた彼女は演出が巧くてうらやましい限りです。(私 行間の使い方下手くそぃからなぁ;;)


で。
この作品、ホントは別の題名が付いていたんです。
が、これを携帯に打ち終えた後にたまたま聴いたL'Arcの「Pieces」という曲がすごくこの作品に合っていて・・・。自分でもすごく・・・ものすっごく驚いたんですけど、合ってるんですよ。
気付いたら題名差し替えてました。
というわけでこの作品は読んだ後にEDとして「Pieces」を聴くと結構きます。(自分で言ってりゃ世話ない;)
ってか「Pieces」聴いてみんな!!(布教してどうする)



2004/3/8


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