光 あの頃オレは光の中にいた。 あの日、光が消えるまでそのことに気がつくことはなかった。 一度失った光は再び手に入れようとしても難しく、 光を掴みかけては、失った。 そして最後に掴んだ光も、また――――― 猫は気まぐれ。誰の指図も受けない。 そう心に誓ったものの、気ままな猫生活は初めから前途多難だった。 何をするにも組織というものからは無縁になれず、時には上からの意思に支配されそうになる。 そんなもの望んじゃいないのに。 そういう組織にうんざりしては、町をさ迷い歩く。 けれど固定の職を持っていなければ当然諍いに巻き込まれるわけで、俺はいまいち猫らしさをつかめないでいた。 ―――――スヴェンと出会ったのは、そんな頃だ。 奴は奇特だった。 『しんしどう』とやらを掲げ、自己を貫く存在。 そんな奴に会うのはそれが初めてだった。 「多勢に無勢とは、紳士的じゃないな」 いつもの、些細な喧嘩。 オレも相手も意味なんかなくて。 負けたっていい、そんな殴り合いの最中だった。 スヴェンはいきなり現れ、1人殴り倒してからそう言ったのだ。 「あんた・・・何者だ?どうしてオレを助けた?」 「俺は紳士だ」 「は?」 「お前を助けたのは、今の喧嘩が俺の紳士道に反していたから、それだけだ」 何だコイツ・・・ それが率直な感想。 俺はあっけにとられながらも、気付いたら、笑っていた。 |