※『電話』のノンカット裏要素有りバージョンです。自分で自分に責任を持てる方だけご観覧くださいますようお願いいたします。



















「なぁ」
『はい?』
「前から気になってんけどな」
『何でしょう?』
「これ、どうやって繋がっとるん?」







電話




佐野の言う“これ”とは、いつもどこからか掛かってくる犬丸からの電話のことで、しか し佐野はその仕組みを知らない。
『あぁ、あはは、僕にも分かりません』
言葉調子から犬丸の表情が想像できる。
きっといつものように少し困ったような顔で苦笑しているのだろう。
「お前神さんやないんかい」
『神だって分からないことぐらいありますよ』
「さよか」
犬丸の返答に冗談まじりで言葉を返しながらも、佐野は軽くため息をついた。
隠したつもりでも、犬丸にはそれが分かってしまったのだが。
『どうしました?佐野くん。何か不安なことでも?』
犬丸の心配は全く的外れなものではあったのだが、間違っているわけでもなかった。
犬丸の言葉を受けて佐野が独り言を聞かせるように呟く。
「不安っちゅーか・・・なんや、いっつも一方的やんか、この電話」
確かに、犬丸が天界にいる以上、こちらから連絡を取る術はない。だから電話も、佐野は いつも犬丸から来るのを待つだけだった。
「お前がずっとそっちにおるからオレから会いたいて思うても会われへんし、電話かて、オレ からは掛けられへん」
犬丸が神である以上それは仕方のないことでもあり、それはひどく悲しいものでもある。
「正直寂しなるで」
佐野の心細そうな声に今すぐにでも会いに行きたい気持ちに駆られたが、仕事はまだまだ 山積みでとても抜け出せそうにない。
『ごめんなさい。僕ももっと会いたいんですよ、本当は。でも・・・中々うまくいきませ んね』
語尾がどうしても暗くなるのを、余計な心配は掛けまいと無理に明るくする。 それは佐野にも痛いほど伝わった。
「ワンコ・・・」
その空気に何も言えなくなる。
我が儘を言って困らせたくなんかないし、でも、やはりどうしても会いたいのだ。
だからせめてこちらから電話できるようになればこの寂しさも少しは安らぐのではないか と思ったのだが。
『佐野くんを寂しがらせるくらいなら、やめちゃいましょうか、神様』
唐突に、本気とも冗談ともつかない声で犬丸が呟く。
本気、だとしたら、そんなことでやめられてはそれこそ立つ瀬がなくなる。
「アホなこと言いなや!オレは、大丈夫や」
頼りない声で告げる。
『本当に?』
「ホンマや。これくらい我慢出来んで、神さんと付き合うたりできひんわ」
それはもっともだ。世界で一番遠い遠距離恋愛をしようというのに、数カ月会えないくら いで落ち込んでいてはこの先耐えきれなくなるまでそう時間はかからないだろう。
失うよりマシ。
そう思いながら、佐野は電話の向こうの相手を想った。
「お前、マメに電話くれとるしな。寂しい寂しい思っとるだけと違うから」
精一杯の強がりで自分は大丈夫だと伝える。
犬丸にもその強がりは分かったが、今は佐野を信じることにした。
『本当に、ごめんなさい。今は仕事が立て込んでて会いに行けそうにもないんです』
「分かっとるて」
無理の覗く声に、なんとか寂しさを紛らわせることはできないかと思案する。
そうして思いついたことにはどこかの親父趣味の兄貴分の影響が拭い知れなかったが、今 はそれでもいいかと思えた。
『じゃあ、電話でしかできないこと、しましょうか』
年端のいかない佐野にできるのかどうか疑問はあったが、何もしないよりは気を紛らわせ られる気がした。
「電話でしか・・・?」
『そう。まぁ所謂テレクラみたいなものですね』
「テレクラ・・・?!」
言葉だけは聞いたことがあったが、それが何をするものなのかは知らない。
そして犬丸もきちんと知っているわけではなかった。
『今から僕の言うように動いてくださいね』
「な、何するん?」
『まぁいいからいいから』
よく知らない言葉を出されて、知らないことからくる恐怖が隠しきれない。
そんな佐野にはお構いなしに、犬丸は次々と指示を与えた。
『まず電話をスピーカーフォンにしてください。それで僕の声の届く位置に置いてくださ い』
「こうか?」
言われた通りに動く佐野。
この先何を言われるのかなんて全く想像がついていなかった。
『で、目をつぶって・・・』
「こ、こうか?」
『少し上を向いて』
「なぁ、何するん?」
『いいから。そのままゆっくりと、手の甲を口唇に近づけてください』
言われるままに、不安を残しながらも甲を近づける。
手と口が触れ合うかと思った瞬間、タイミングよく犬丸は自分の受話器に軽くキスをし た。
ちゅっと音を立てて手の甲が離れる。
不思議な感覚だった。
「今のん・・・なんや、お前がしてくれたみたいやった」
『そうですよ。今のが僕のキス。それから・・・』
犬丸の言葉が佐野を暗示にかける。
『キミの手は僕の手、僕の指』
佐野が手を見つめる。
これが、犬丸の、手。
『さぁ佐野くん、どこに触って欲しいですか?』
いつもと同じ優しい声が、いつものように問い掛ける。
「頬・・・」
無意識に呟く。
だって犬丸はいつも最初に頬を撫でてくれるから。
『じゃあ僕の右手を出して。そう、そのまま左の頬に触れてください。優しく』
実は見えているのではないかというぐらい的確なタイミングで出される指示に無抵抗に従 う。
目をつぶれば、本当にそこに犬丸がいるような気がした。
『その手をそのまま首筋に滑らせて』
言われるがままに手を動かす。
『今着ているのはいつもの浴衣ですか?』
「浴衣・・・」
ぼんやりと、視線を下にずらして確認する。
間違いなく、普段から愛用している浴衣だ。
『ではそれを少し脱がしましょうか』
言われたままに、いつも犬丸がそうしているように、肩に手を滑らせて前を開ける。
そして、開かれた胸に軽く触れた。
「っ・・・」
吐息が漏れる。
快感を覚えた体は、少しの刺激でも容易に犬丸を思い出せた。
『もっと強く触って。ほら、そのまま指でつまんで、転がして』
「ふ・・・ぁ」
軽く下肢が頭をもたげてきたが、佐野は気付かない。
いつの間にか犬丸の与える愛撫に夢中になっていた。
『左手が空いてますよ。今度は爪を立ててみましょうか』
「っく・・・」
左右で違う刺激を与えられて、腰がじんと疼くのが分かる。
もっと触って欲しい。
先走りの露はすでに床を濡らしていた。
「っ・・・あ、ワンコ・・・」
『はい』
「もっと、触ってぇ・・・っ」
佐野の声に、自身も煽られているのを感じる。
けれどこれは佐野を喜ばせるための行為だから、と自分を戒める。
『いいですよ。右手をそのまま下に・・・そう、そこに高ぶりがあるのが分かりますよ ね?』
「ん、っ」
『思い切り、握り締めちゃってください』
言われた瞬間、手がそこに触れる。
自分で触るのとも、犬丸が触るのとも違う感覚がそこにあった。
「あっ、・・・っんん、っ・・・はぁ」
自身が落ち着くのを待って、手を上下に動かす。
「ふ、ぁ・・・っあ、んっ」
段々と快感に集中して我を忘れそうになる。
『左手がお留守になっていませんか』
犬丸の指摘通り、快感を追い始めた体は他のことに意識を飛ばせないでいる。
「や、けどっ、無理・・・やぁっ」
無理だと言いながら、それでも必死に左手を動かそうとする。
たまに重なる刺激が否応なく佐野を昇らせた。
「あ、わ、ワンコぉっ!も、っぃく、ぁっ」
『ごめんなさい、僕ももう限界です・・・っ一緒にイきましょうか』
電話とはいえ、佐野の姿を想像しながら声を聞いて、犬丸の理性も限界を迎えようとして いた。
「ん、あっ・・・ふ、あっんん」
『イきますよ』
「あぁぁっん・・・っあぁ!!」
達すると同時にその場に倒れ込む佐野。
受話器の向こうで、犬丸も荒い息を聞かせていた。
『っ・・・佐野くん』
呼吸を落ち着けながら犬丸が問う。
「ん・・・ぁんや?」
まだ舌の回らない口で佐野が問い返す。
『どうでした?』
そのあまりにもあまりな質問に佐野は言葉を失った。
『佐野くん?』
「あ、や、まぁ・・・・・・新しいプレイを開発させられた気分や」
『それは良かった』
何が良かったのかは全く分からないが、犬丸はその答えに満足したようである。
『また寂しくなったらやりましょうね』
まだ荒い息を落ち着ける意味も含め、大きなため息を落とす佐野。
「・・・しばらく寂しいて言わんことにするわ、オレ」
そんな悪態をつきながらも、佐野はすっきりとした顔をしていた。
さっきまでの寂しさなんてどこかに消えてしまった。
良くも悪くも、この電話のおかげで。









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ノンカット裏要素有りバージョンです。
こっちを先に書いたのでこっちを読まないことには内容が理解できないかも?と思いつつ。
でも書いててめっちゃ恥ずかしかったです。恥ずかしいくせに何故やるのか。人間って不思議ですね。


ところで純粋なお嬢さん方へ。騙されるな。これはテレクラと違うぞ。(や、騙されないから安心しろ。)



2005/10/30


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