対極 「あの2人って、ホント正反対だよな〜」 「・・・なのに何であんなに仲良いんだろうね」 ガヤガヤと煩い、休み時間のとある教室。 その中に、ひときわ騒がしい緑髪の少年がいた。 「な、な、歩、これ見たか?これ!!」 興奮した様子で歩の机上に校内新聞を広げて見せる。 彼の名は、ミズシロ火澄。 つい先日月臣学園に転入してきて以来、その人柄の良さと持って生まれた才能とで学園中の人気を集めた有名人である。 「・・・何だ?新聞?」 そんな彼に胡散臭そうな表情を返しながら応じるのは、鳴海歩。 火澄と行動を共にするおかげでその突出した才能が周りの目に触れるようになり、一躍有名人へと変貌した元・不人気者である。 「・・・嫌な予感がする・・・」 「そないな顔せんと、とりあえず見てみい!」 校内新聞、と言えば新聞部。新聞部と言えば・・・・・・ 歩の脳裏を、言わずと知れたおさげ髪の少女の笑顔が過ぎる。 火澄の様子からして、きっと恐ろしくくだらない内容であろう。 『スクープ!!衝撃の事実!!今学園中の注目を浴びているミズシロ火澄アーンド鳴海歩!!ななな何と!!2人はデキていた!!』 ・・・まさに、予想的中、といったところである。 「何を考えているんだあれは・・・」 より一層胡散臭そうな表情になった歩が、誰に言うでもなく呟く。 そんな歩をよそに、火澄が記事を読みながら説明を加える。 「おさげさん芸が細かいで〜。ほら、『毎朝一緒に登校する彼ら』なんて写真もついとる」 言いながら火澄が指差した写真は、確かに登校時の2人の写真であった。おそらく登校中に隠し撮りしたものだろう。 だが・・・ 「一緒にも何も、自分だって毎朝一緒に登校してるだろうが・・・」 そう、彼らは毎朝“3人で”共に登校している。今更このことについて触れるほどバカな生徒はこの学園にはいない。(何しろ噂の新聞部部長が一緒に登校しているのだからして、触らぬ神に祟りなし、である。) 「ええんか?このままおさげさんの好きにさせとったら次は何書かれるか分からんで?」 あまり心配していないような声色で、しかし気遣うような顔で歩を覗き込む火澄。 歩も、少し顔を上げて火澄に目線を置いた。 しばし見つめあう2人。 このとき教室内にどよめきが起こっていたことを2人は知らない。 「・・・ま、歩がええんやったらええけどな」 「今更だ。何を言ったところで結局自分の好きなようにする奴だからな、あれは」 「せやな」 諦めた様子で言う歩に、火澄も苦笑する。 「それに、100%嘘とも言えへんし・・・な?」 「・・・バカなこと言ってないでその新聞片付けて来い」 「はーいはい。全く、冗談の通じんやっちゃなー」 ぶつぶつと文句を言いながらも歩の言うとおり新聞を返しに行く火澄。(どうやら人様が読んでいた新聞を「ちょっとの間貸したってー」とかっぱらってきたらしい。) そんな火澄を横目に、歩は何事も無かったように読書を再開した。 「・・・あいつら、正反対だけど気は合ってるんだな」 「・・・だね」 神と悪魔―――対極のポジションを与えられたからこそ出逢った2人。 しかし、そんな制約さえなければ互いに気の置けない存在になりえたのかもしれない―――――― |
火歩。・・・火歩? お題的にシリアスの方が作りやすい気もしたのですが、ほのぼのとした日常的な2人が書きたかったのでこんな感じになりました。 とりあえず、お題からずれている気もしますが、火歩万歳!!ということで。 |