フロム・ナナリー 私の世界には、長い間 お兄様しか存在していなかった。 「ナナリーは僕が守るから・・・守る、だから何も心配しなくていいんだよ・・・」 お兄様は私を抱き締めながら震える腕で言う。 私の目が見えなくなったから。 本当はお兄様だって不安で仕方がないのに、それでも。 だから、私は――――― 「ナナリーはいっつもルルーシュが近くにいてうっとおしくないの?」 いつかスザクさんが聞いてきたことがあった。 「私は・・・」 ふと考える。私の本当の気持ちはどれなんだろう。 「お兄様のことが一番好きなので、いつもそばにいてくれることが嬉しいんです」 微笑みさえ浮かべて言うと、スザクさんは信じられないといった風に顔を顰めた。 「スザクさんは違うんですか?」 「・・・俺は、ナナリーほどルルーシュを好きにはなれないよ」 この頃、お兄様とスザクさんは毎日のように口喧嘩をしていた。けれどお互いに段々と心が近付いていくのがわかった。 だから、スザクさんには笑顔を見せることができた。 私の世界には長い間 お兄様しか存在していなかった。 お兄様が内に入れることを許した人にしか会うことができなかった。 お兄様を通してでしか、外の世界と関わることはできなかった。 ―――――お兄様が変わっていったのはいつからだろう。 スザクさんに会うまでは、周りの全てが敵だった。 スザクさんに出会って、初めて他人を内に入れた。 けれど、スザクさんといることができたのはほんの短い間のことでしかなくて・・・。 きっと、きっかけはブリタニアの名を捨てたことだった。 ランペルージ、という名は、お兄様の重荷を少しだけ軽くした。 名を名乗っても、その名によって敵視されることはない。好奇の視線にさらされることもない。 それはとても楽なことだった。 ブリタニアの皇族であることを知らない人と過ごす、ごく普通の時間。 敵が襲ってこない生活。守ってくれる家のある安心感。 それが例えいろいろな思惑の上に成り立つものだとしても、それでも充分救われた。 そうしてお兄様の世界が広がることで、私の世界も広がった。 アッシュフォード家の人達、生徒会の皆さん。 何より、ミレイさんの存在が大きかった。 外の世界と関わろうとしないお兄様を外に引っ張り出して、 私たち兄妹を世界から孤立させないようにと生徒会にまで押し上げた。 ・・・お兄様が責任のある立場から逃げる性格ではないことを見越して、お兄様を副会長という座に据えて。 そうして私たちの世界は広がった。 世界の中には“他人”がいた。 他人と関わることができた。他人を内に入れた。 けれど私の世界は――――― それでもまだ狭い籠の中にある。 |
初コードギアス、ですね。 コードギアスは本編が横入りを許さないくらいできあがっているのであんまりネタが出てこないんですが、小説の1冊目(STAGE.0)を読んだら無性にナナリーの話を書きたくなりました。なんていうか、ナナリーに関しては本編中にあまり出てこないので何とでも書ける気がするんですよね。って別にそれだけが理由じゃないけど。 ナナリーはまだルルーシュの腕の中にいる気がする。ナナリーがそれを望んでいる気がする。 そんな願望、もとい予測のもとに作られたこの作品。・・・どうなんだろう。コードギアスに関してはあんまり人の作品とかも読まないからよくわかんないな。 まぁともかく書いていて楽しかったのは事実です。 |