「スザク―――――お前が俺の言う通りに動いてくれるなら、お前に俺を殺させてやる」 ああ、ルルーシュ・・・君はわかってない。 「ユフィの汚名も晴れる・・・晴らせないまでも、薄れさせてみせる・・・どうだ?悪くないだろう?」 何も、わかってないよ、ルルーシュ――――― 空白の約束 殺してやろうかと何度思ったことか。 いつだって、このルルーシュという男は、上から目線で物事を話す。 誤解なんだ、聞いてくれとでも言えば可愛げもあるというものを。 「ユフィを殺したのは、俺だ」 そう、のうのうと言ってのける。 今ならわかるから・・・それがまた憎たらしい。 わかるんだ・・・ユフィを殺したのは―――――ルルーシュ、君の本意ではないじゃないか。 素直に、君を許せはしないのに。 本当は、許してしまっている。 「スザク、俺は皇帝になる」 「君が?」 「ああ・・・皇帝という地位は、良くも悪くも人の目を引くからな」 最初は、何が何だかわからなかった。 「君っていう人は・・・っこの期に及んで皇帝になる?ふざけるなっ!!」 「ふざけてなどいないさ・・・俺は皇帝になり・・・そして、全ての憎しみを、ここに集める」 トンッと自分の胸を指差す。 その仕草を見て、ふいに、思い出した。 『スザク、僕は父親が・・・ブリタニア皇帝が憎い・・・ブリタニアが憎いっ・・・いつか、必ず、僕の手で・・・ブリタニアをぶっ壊してやる!!』 ぐっと胸元で拳を握り、そう叫んだ。 あの日の君が、何故か重なって見えたんだ。 「ブリタニアの悪逆皇帝は・・・憎しみと共に葬り去られる」 何で、そんなに誇らしげなんだ。 「あとに残されるものは・・・自由だ!」 君に未練はないのか!? いや・・・ある。あるはずだ。 「ナナリー・・・君のそんな姿を、君はナナリーに見せる気か?」 「っ・・・」 ルルーシュの愛情は、いつだってナナリーに向けられている。 それは、ナナリーが死んだとしても、同じはずだ。 「ナナリーは・・・死んだっ」 「僕はユフィに誓った!必ず君を殺すと!ユフィは僕を見ていてくれるはずだ!」 「精神論に過ぎない!そんなものはっ!」 「でもっ・・・」 「ナナリーは死んだんだ!!」 ルルーシュのあまりの剣幕に、何も言えなくなってしまう。 「もう・・・いないんだ・・・っ」 泣くと、思ったんだ。 痛々しいほどに顔を歪め、一番受け入れたくないであろう現実を受け入れている。 ルルーシュは・・・一度も、泣かなかった。 「君は・・・それで、いいのか・・・っ?」 その決意に、何も言えない。 悲痛な叫びが聞こえるのに。 「ユフィを・・・」 やがてルルーシュは小さな声で言った。 「ユフィは・・・俺のせいであんな・・・っ、ユフィの汚名を晴らしたい・・・俺は・・・嫌なんだっ、ユフィの名がこんな風に後世に残るなんてことは・・・っ」 俯き、震える姿からは、とても、ユフィを裏切った男だとは感じられない。 「頼む・・・っスザク・・・頼む・・・」 何も、言えなかった。 嫌だなんて、言えなかった。 今更、君を殺したくないなどと。 「何故、僕に・・・?」 ふと、ルルーシュの震えが止まる。 考えているのか? 「・・・ふ、ふはっ・・・ふはははっ」 急に、ルルーシュは笑いだした。 「言えるものか・・・今の今まで、俺も気付かなかった」 自嘲ぎみに笑う。 「言わないなら、やらない・・・僕は別に、今ここで君を殺したって構わないんだ」 剣を向け、見据える。 殺す気なんて、もう、ないのに。 「・・・から」 「え・・・?」 友達、だから――――― 「今更、信じてほしいなんて言わないさ・・・」 自嘲ぎみに、笑うんだ。 「それも・・・君の、策略?」 ああ、どこまで演技なのだろう。 けれど俺は・・・ 信じたいと、思ってしまったんだ。 「俺の騎士になれ、スザク・・・ゼロレクイエムのその時まで」 そうして結局俺は 「・・・イエス、ユア・マジェスティ」 世界で一番憎いこの男を、世界で一番愛していると気付かされるだけなのだ。 |
ルルーシュとスザクの間にはいつだってユフィがいる。 けれど、それだけではない確かな絆もあったと、思う。 |