月の光に晒されてキラキラと銀色に光る髪をぼんやりと遠くから眺めるのが好きだった。 その白い肌に真っ赤な返り血を浴びて、それでも尚 必死に顔を上げる姿が―――――堪らなく好きだった。 白い夜叉 「何してんだ、白夜叉」 「高杉・・・お前も飲むか?」 月の光を浴びて儚げに微笑うその顔に、酒の効力かほんのりと赤みが差す。 それが、人を斬ったあとの笑顔と重なる。 ―――――――気付いているか? 「お前、それで何盃目だ」 「今日はまだ5盃目」 ひょうひょうと見せかけて、その実あの笑顔の下に爆弾を抱えている。 そう評したのは桂だったか・・・ 爆弾はすんでのところで爆発するのを堪えている。 いつ暴発するかしれない。 「・・・俺が言えた義理じゃねーが、あんま酒にばっか頼るな てめぇは」 少しは俺たちを頼ればいい。 同じ師から同じ時 同じ場所で同じ言葉を学んできた。 俺たちにこそ、できる何かがあると信じて。 「酒は・・・嘘をつかねぇからな」 「・・・?」 ポツリと呟かれた言葉が何を指しているのか その時はわからなかった。 が、後にそれを知った時にはひどく後悔に襲われた。 何故気付かなかったのか。何故見逃していたのか。 銀時は、きっとただ独りそれに気付き、ずっと耐えていたのだろう。 仲間を疑いたくなくて。仲間を最後まで信じたくて。 ―――――きっかけは些細なことだった。 けれど、一度踏み外したらもう取り返しのつかないところまできてしまっていた。 誰もがわかっていた。もう、きっかけなんて口実にしかならないと。 そして銀時は、白夜叉をやめた。 「銀時ィ・・・覚えてるか?」 「あァ?何をだ」 不機嫌そうなその顔に昔の面影はない。あの頃の、今にも潰れてしまいそうな白い夜叉はもうどこにもいない。 それがどこか嬉しくて、どこか悔しい。 「お前はいつだって俺たちの先頭を行った・・・斬り込み隊長っつーわけでもねーのに我先に敵陣へ飛び込んで、白い装束を真っ赤に染め上げてたなぁ・・・」 ククッと忍び笑いをすると銀時が眉を顰めるのがわかる。 敵も味方もなく斬り刻んでいったかつての自分でも思い出しているのだろうか。 「お前はいつだって先陣切っていったな・・・あの時も」 あの時も。 そう、簡単にいえば“内輪揉め”。攘夷軍は方向性を違え本格的な内部分裂を起こした。 その時も、全身を赤く染め上げた白夜叉は顔を上げて前だけを睨んでいた ―――――その透き通る銀色の髪すらも真っ赤に染め上げて。 「今でも覚えてるぜ?そのまま狂っちまいそうなお前の声、お前の顔・・・」 「やなこと思いださせんじゃねぇよ」 今のその不機嫌そうな顔とは対象的な笑顔。 仲間の血に濡れ、その中心でこいつは笑っていた。今にも泣きそうな顔で。 「あの日の酒は・・・さぞかしうまかったんじゃねぇか?」 血に染められて尚、白い肌にその赤い血を塗り込める。 血の温かさを確認するように。罪の重さを量るように。 「味なんて、しねぇ」 銀時は必ず酒を飲んだ。いつからだったかは記憶にない。気付いたら酒を飲むようになっていた。 人を一人殺すたびに。 赤い血を全身に浴びるたびに。 笑う、たびに。 月の下で、その光を浴びながら―――――涙を流すように酒を飲んだ。 「覚えてるか?銀時・・・」 俺があの時何て言ったか。 忘れたなんて言わせねぇ・・・いつだって近くにいた俺の言葉を。 俺の言葉が聞こえていなかったとは言わせねぇ。 ―――――けれどお前はまた酒を飲むのか。 |
高銀です。高→銀なのかもしれません。でも私の中の高銀てそんな感じ。いつだって高杉の方が愛情が深い感じ。 白夜叉時代の銀さんは今より陰ってるほうが好みです。(好みて) 酒でも飲んでないとやってられないのよってくらいでいいんじゃないかと思うのですが・・・どうでしょう?(誰に聞いているのか。) 今気付きましたが銀さん誕生日にUPですねこの話。あ、じゃあ記念ということで。(え) |